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未来、機械化

作者: 葱田金鹿

 いらっしゃいませ。この度は当店をご利用いただき誠にありがとうございます。


 当店は介護ロボット専門店でございまして、所謂、ベビーシッタからヘルパまで何でもそろえております。サイズも少年少女型から老人型まで、ええ、老若男女全ての型を揃えております。言語も二十八ヶ国語対応とバージョンアップいたしましたので、海外どちらへ行っても通訳としてお役に立つでしょう。また防水性も問題なく、危険度Bレベルの化学性有害雨にも耐えることができます。もちろん身辺警護用としてボディガードにもなります。


 当店の全ての商品には最新の人工知能が搭載されています。変化の激しい現代社会に対応するため、常時グローバルネットワークに接続して最新の情報も受信していますし、従来型では対応が追い付かなかった可変バージョンアップについても十分対応できるソフトウェアを搭載しています。


 こちらのロボットのハードの性能ですか。外装、内部構造共に自動機械生産技術世界一と言われている日本製の部品を用いた物になっておりますし、もちろん日本でも最新鋭であるあのMRC社の自動機械生産ラインで作られた物です。耐久年数は設定されていません。現在の実証機関では測りきれない強度だそうです。はい。宇宙空間に年単位で放置されても起動しますし、実験データ上の数値で言えば、地球のマントルの中でもその性能は健在です。


 はい。ソフトウェアについてですね。まずセキュリティですが、ウイルス対策は万全です。現在、実在する手法によるサイバーアタックには全て対応できますし、設定によってはそこからカウンターアプローチをかけることも可能です。また搭載メモリの一部を仮想フィールドとして使用することによって現在の電子技術で再現されうる九十パーセントのウイルスプログラムに対して有効なプロテクションを常に思考、実行させることができます。


 はい、ではこちらの『ティアニカ―TY』でよろしいですね。はい、お買い上げありがとうございます。では住所は、はい、承りました。こちらの住所でよろしいですね?


 ええ、便利になりましたね。今では情報のやり取りもロボットに付随されているパケット通信を使えば一瞬ですしね。昔はわざわざインクを使って紙に書いていたそうですよ? ええ、資源の無駄もいいところです。今こうしてお話しているのも言ってしまえば時間の無駄ですよね。現代ではこうした会話もボイスコミュニケーションの一環ですから、あながち無為にはできませんけど、将来的には、ロボット同士の会話であればパケット通信によってのみコミュニケーションをとることになるでしょうね。


 そうそう。元々は私のような接客は、人間が行っていたらしいですよ。それが産業ロボット、所謂工場用のロボットですね、それが実際に機能するようになってから、二足歩行や愛玩用のロボット技術が発展していって、最終的にはこうした接客なんかもロボットになってしまったみたいです。


 そうやって何でもかんでもロボットになっていったんですね。ええ、私の上司もロボットですよ。最近は対ロボット説教用のアプリケーションソフトを入れたらしくて、ええ、これがまた凄いんですよ。相手の人工知能の流動性を音波認識によってのみ改変して、アルゴリズムを書き換える、なんていうとんでもない代物で。まあ、対KK社製ロボット専用らしいんですけどね。


 え? 私ですか? 私はピリーア社の販売代行TT型です。はい。ですから上司によるアルゴリズム操作の影響を受けることはありません。ええ、最近のピリーア社は不況の煽りを受けているらしくて、このままだとKK社に吸収合併されるらしいじゃないですか。そうなると私もあの上司にアルゴリズムを書き換えられてしまうみたいです。


 ちなみに貴方は? なんと、ALT社ですか。それは素晴らしい。ええ、存じております。代行派遣会社、ですよね? ちなみに型番は、ああ、509ですか。いえいえ。そんな古いだなんて。大丈夫です。私なんて330ですよ? そうです。二百四十五年前に発売されたものです。当時としては最新鋭だったんですけどね。まあ、メモリ特化だったので現在もバージョンアップを繰り返せばこうしてお客様に対応できますが、ええ、そろそろ寿命でしょう。


 まあ、ロボットで二百四十五年といえば、当時の技術からすれば大往生です。当時の人間の技術も捨てたものではありません。今だって、彼らによるロボット技術は発展の一途を辿っているわけですし。


 ええ、そうですよね。本当にどこにいるんですかね。私は起動してから今年で二百四十五年になりますが、一度も人間なんて見たことありませんよ。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。よろしければ感想だけでも頂けたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんとなく渡邊浩弐先生の短編みたいなどこか不気味な雰囲気を感じました 未来世界では人類がどうなっているのか私もそういったのに興味の尽きない人間であったので面白く読ませていただきました
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