心友との別れ
小1のトキのコト。
あの日は、入学式でとても緊張していた私に気軽に声をかけてくれた。
「名前は?私と友達になってくれる?」
その子は、美佳ちゃんと言うらしい。パッと見…じゃなくても、すごくカワイイ。自分から、クラスのみんなに声をかけていって、もうみんなと友達になったと嬉しそうに言っていた。つまり、最後の一人が私だと…。
「なんで、私が一番最後なの?」そう言ったら、笑いながら、でも照れくさそうに、
「だって、佳奈ちゃん、すごくカワイイし、特別な友達になりたかった。」
と言っていた。私はかわいくないし、見た目も地味。そんな私に声をかけてくれて、とても嬉しかった。もう一度、美佳ちゃんが、
「友達になってくれる?」
って、言ったトキ、すぐに、
「うん!美佳ちゃんのコト、ミカって、呼んでいい?」
「じゃあ、私はカナって、呼ぶね!」
そのあとは、ずっと一緒に行動した。お互いのコトも話合った。好きな人、家族。いっぱい話して、ミカが
「もう、心友だね。」って、言ったトキは、すごく嬉しかったよ。
ある日、その日は私の誕生日だった。どうせ、誰もプレゼントをくれないから、つまんない。そう思っていた。だけど、希望をくれたのは、ミカだったね。大きなクマのぬいぐるみを私に渡しながら、「誕生日おめでとう!」
って、言ってくれた。すごく嬉しかった。こんなコトをしてくれるのは、ミカだけ。やっぱ、心友だ。そう思えた。
2年生も同じクラス。やっぱり、ミカは人気者だったケド、私と心友のままでいてくれた。私は、ミカに誕生日プレゼントをあげるコトにした。クマのストラップ。おそろいにした。まだ、ミカの誕生日は、ずっと、先だったケド、売れちゃたら困るから。そんな、幸せの真っ最中、ミカから思いがけないコトを言われた。
「私、転校するの…(泣)」
「えっ…。嘘でしょう?」
嘘だよね?信じられない。ううん。信じたくない。
「ごめんね。ごめんね。」
ミカは泣きながら、謝っていた。わたしは思わず、その場から、逃げ出した。ミカは後ろで
「ごめんねー。ごめんねー。」
って、ずっと叫んでた。
そのあともずっと、気まずいままで、夏休みになった。すごくつまらなかった。去年の夏休みは、ミカと遊んでたのにな。って、思うと胸が痛んだ。そんなトキ、あることを思いついた。そうだ。
私は、ミカにクマの絵と〔8月30日の12時に駅で待ってる〕と文字を添えて、ポストに出した。8月30日は、ミカが出発する日でもあり、ミカの誕生日でも、あった。
そして、予定より10分早く着くと、もうミカがいた。
「ミカ…。」
「カナ…。」
「ミカ?ごめんね。いきなり行っちゃって。怒ってるよね?」
「ううん。怒ってないよ。私こそ、ごめんね。いきなり転校だなんて言って。」
「ううん。いいの。でも、早く言ってくれてよかった。(ガサゴソ…)はい。これ、誕生日プレゼント。」
「ありがとう。わっ。クマのストラップだ。カワイイ…。」
「ほら。おそろいだよ。」
「…ッ。ごめんね。私、カナと離れたくないよ。もっと一緒にいたかった…。」
「ウチももっと一緒にいたかったケド、ミカが決めたコトじゃないから…。しょうがないよ。…ッ。」
そのあと、2人で抱き合って泣いた。とても悲しかった。だけど、ミカも悲しいんだって、思うと、そんなに泣いちゃいけないって、思った。いっぱい泣いたあと、笑顔で別れた。
「ミカのコトは、ずっと、忘れない。」