6/6
【閉ざされた世界で香る君】Ⅲ
意識も白に沈みそうになる
ここは現実なのか?それとも
風になり微かに少女の声が届く
「…仕方ないから君は帰してあげる」
声と共に伝わる
誰かに抱き締められる安堵感、温もり
「待ってた…」
「これで本当に『さよなら』」
微笑んだまま白に溶けていく
あぁ…君は…
そこで意識を失った
朝の町内放送の音で目が覚める
先ほどの出来事は夢だったのか…
辺りを見回すと
そこには無惨にも切り倒された
切り口が湿った切株が有った
あぁそう言えば…昔ここに、美しく、ほのかに香る白梅があったな…
あの子は…
懐かしい甘い香りが鼻をかすめる
ふと違和感を覚える
あの子の名前も思い出せなくなっている…
そして香り
漂うはずがない…
かつては存在した…姿なき白梅の香り
誰かに触れられた気がした
家に帰ると両親が不思議そうな顔をし
「お前はどこに行っとたんなら?出掛けたふうはなかったぞ」




