【閉ざされた世界で香る君】Ⅱ
何の木なのかわからぬまま
食事は終わり床に着く
睡魔はすぐに多い被さり、眠りを連れて来る
その晩、珍しく夢をみた
悲しげな笑みを湛えた口元がゆっくりと動く
何かを訴えかけているのか…
どれくらいの時間が経っただろう…
目が覚めるとすっかりお昼前だ
「休みだからって寝すぎじゃ」
開口一番、おはようをすっ飛ばしてそこかよ親父…
「最近ゆっくり寝れてないんじゃ、少しくらいええじゃろ?あ、おはよう」
「ふんっ、おはよう。で、今日はどうするんじゃ?どっか行くか?行くなら連れてっちゃる」
「この辺、田舎過ぎてなんもなかろう」
正直な話、娯楽がないのだ
大き目の商業施設に行くにしても車で1時間はかかる
わざわざ実家に帰ってまで行くのも面倒だ
昨日の事が頭を過る
「あーそうじゃ、久しぶりに下の神社行ってくるわ」
「そうか、まぁ好きにせぇ」
パパっと身支度を済ませ玄関へ
「今日は一段と冷え込む予報じゃけえ、日が落ちる前に帰ってくるんよ」
母が心配そうな顔でこちらを見つめている
「わかっとる、行ってくるわ」
心配を他所に後ろ手に手を振り家を出る
何故だか一刻も早く神社へ向かいたかった
もしかして…誰かに会えるかも?
有り得ない期待も少々胸に、田舎道を歩く
懐かしい鳥居をくぐると、異次元のような世界が広がっていた
今まで人の侵入を拒んで来たかのように、足跡一つない真っ白な風景
ああ…ここにダイブしたら楽しいだろうな
そんな阿呆な事を考えつつ
一つずつ足跡を刻んでいく
神社独特の空気感もあいまって
本当に異次元に足を踏み入れてしまった様だ
古びた賽銭箱に小銭を入れ、一礼をし、散策を始める
ああ、ここは○○とよく『だるまさんが転んだ』をしたな
ここは『かくれんぼ』でよく隠れた場所だ
あそこは…そうだ木が有った場所だ『かごめかごめ』もしたっけな
懐かしい記憶と共に足跡も増えていく
ふいにパキッと音が響く
この辺りは小さな祠が有った場所だ
まさか…祀られていた物を壊したか?
思考より早く、甘い香りとともに突風が吹き荒れ風景が一変した
通ってきた道を振り返るも足跡一つない…
白しかない世界
ずっと見えていた鳥居もお社もお賽銭箱も
すべてが『白』
何が起こったのか?
「やばい…帰り道まで見えない」
「ここは…どこなんだ…」
急激に体温が奪われていく
防寒対策はしっかりしてきた、抜かりはない
寒い…寒くてたまらない
少しでも冷えの進行を遅らせたい
ガタガタと震える体をさする
今、自分の身に起きた事を整理しよう
しかし思考も徐々に鈍っていく
「こんな状況ありか…よ…このまま…し…なのか」




