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【閉ざされた世界で香る君】I

息付く暇も無いくらい目まぐるしく過ごす日々

一旦仕事が落ち着いたタイミングでまとまった休みを取り、

久しぶりに帰省をする事にした

正月に帰れなかった分、少々遅い正月休みと言ったところだ

実家はとても山奥の田舎で、昔ながらの風景が広がる小さな地域


忙しいさにかまけタイミングを逃し、実に数年振りの我が家だ


懐かしい風景、匂いを堪能しながら家路を急ぐ


目の前に見える路地

あの角を曲がり少し行けば我が家

手前で曲がると古びた神社


子供の頃には友人と夢中で「鬼ごっこ」や「かくれんぼ」をしたっけな

朧気な記憶が蘇ってポツリと呟く

「あいつら元気かな…?」


男友達や密かに想いを寄せていた可愛い笑顔の女の子

良く頭に白い花を飾ってたっけ


ふと気づく…

…あれ?どんな顔だっけ?

優しい香りのする子だったような…?


幼少期の記憶だから曖昧なのか?


仲良しだった友は

成長と共に疎遠になり、高校に上がる頃には完全に切れた


現代みたいにまだスマホなんてものは発展して居ない時代だ

連絡の取りようもなく自然消滅と言った方が良いだろう

今ならまだ連絡の取りようもあるかもしれないが


神社にお参りをとも思ったが、入口付近でチラ見をしただけにした

疲れも手伝い、早く帰りたかった


「あれ?昔は有ったよな…?」


記憶とは違う風景にポツリと言葉が漏れる


「まぁ、向こうに帰る前に寄ればいいか…」

独り言が空に舞う


家に着くと家族は暖かく?迎えてくれた


「おかえり、外は冷えたじゃろ?

風呂ためとるけんはよぉ入り。

上がったらご飯にするけん」


「お前は昔からギリギリにならにゃぁ連絡をよこさん!

早めに連絡しろと毎回言うとるじゃろ!今回も遅かったがな!!」


ほんわりとした母に比べ、親父の怒り具合

温度差が激しい


「ごめんて、次はちゃんと早めに連絡するけん」


苦笑いしながらも空返事を返す


一通り片づけを終え、風呂へ

ゆっくりと湯舟に浸かるの久しぶりだ

湯気が立ち込める浴室は、何故か特別なものに感じられた


しばらく思考は停止していたが帰り道に見た風景が頭に浮かぶ


「そうか、木が無くなってたんだ」


神社の風景、有から無、それはひっそりと佇む…何かの木だった


「あれ、何の木だったけ?…親父に聞けばわかるかな…いつ無くなったかも」

ブクブクと音を立て湯舟に沈む

なんだかんで今日は疲れたな…あーやばい…


「あんた!大丈夫?」

戸口で母の声が聞こえた

気づかないうちに相当な時間浸かっていたらしい

ザバッ勢い良く立ち上がる


「大丈夫、今上がるけん!どいといて」


少々フラつき転びそうになるのをグッと堪え手首を水に晒す

湯あたりには効くらしい


ササっと着替えを済ませ居間に向かった


居間に入ると両親は席に着き、あとは自分が揃えば食事開始だ


「いただきます」

『いただきます』


食事も大勢で食べると美味しいというが

家族と食べる食事はまさにそれであった


一頻り食べた後、風呂での疑問を父に聞いてみた


「なぁ親父、下にある神社の木って何だけ?あといつ無くなったんだ?ガキの頃にはあった気がするけど」

「あぁあれか?…あれはなぁ…昔から、いや違う、あの木は…」


ピーーーーーーーーー!!

けたたましいケトルの音が父の音を奪う

口は動いているのに声が届かない


一瞬の沈黙


父は少し怪訝な顔をし、言葉を続けていた

「…でな、まぁあれだ…おまえが高校に入ってすぐくらいに切られたんじゃ」


「あら?あの木って確か切られる前に女の子が…」

母も何かを知っている口振りだが

「ううん、なんでもないわ。あらヤダ私ったらお鍋を」

そう言って台所の奥に消えた


結局、肝心な木の話は聞き取れなかった


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