一章三話:「ずっと見ていて」
宙に浮かぶ、四角い板、神さまが言うステータスには、こう記されていた。
Lv:9/50(921/1078)
名前:
種族:魔素体
体力値:3/5
魔力値:8/10
攻撃力:5
防御力:5
俊敏性:5
ポイント:40
技能
【元】変形Lv1(0/1)
【越】天界送り(4)
レベルアップ。ステータスを確認してください、という、無機質な機械音。あれは恐らく、神さまからのお導きだったのだ。神さまは、僕を見てくれているのだ。
技能の欄にある、天界送りも神さまがくださったスキルだ。この命でさえも、神さまに頂いたもの。しかも、二度も。命を与え、救ってくださった。
神さま。神さま、神さま。
右手を変形させ、記憶の中の神さまの顔を作り出す。が、あの時見た、神々しさも、美しさもない。
少しづつ顔の造形を調整していきながら、首を生やし、胴体を作ってゆく。
どれほど時間が経っただろう。ついに、神さまが完成した。
頭の中で大きな高揚感を覚える。
代わりに、僕自身の大きさも小さくなったし、魔素の色も薄くなったが、関係ない。
まだまだ、美しさも神々しさも足らないが、それでも、良い出来だ。
良い出来だけど、離れて見たい。引きで、引きで見てみたい。
そうだ、切り離してみるのはどうだろう。一度、試してみよう。
神さまがいる。離れてみたら、まんま神さまだ。顔の細かな造形の乱れも、離れてみることでそこまで気にならない。
まだ完璧ではないけど、ああ、なんだか、心地よい。気持ちが、昂る。
"派生技能【分離】を獲得しました"
"技能【変形】レベルアップ"
神さまのお導きだ。派生技能、そうか。神さまが僕のために褒美をくれたのか。
そうだ、もっと、もっとだ。もっと、神さまのために頑張ろう。派生技能をもっと増やして、神さまを喜ばせてあげよう。
そのためには、考えよう。どんなものがあるかな。変形に関連したもの。
パッと思いつくのは、硬さ柔さ鋭さ、重さ軽さ辺りかな。
早速試してみよう。まずは硬さから。
右手に力を込める。しかし、ちっとも硬くならない。
頭の中で硬いものをイメージする。少し硬くなった感じがあるが、それでもまだ足りない。
岩壁に触れ、その硬さを記憶し真似する。するとだんだん、硬くなってゆく。少しずつ、少しずつ。
"派生技能【硬化】を獲得しました"
きた。神さま、見てますか。見てますよね。僕はあなたの為に頑張ってます。
さっき作り出した神さまの像に近づき、正座する。
しかし、神さまは僕を見てくれないし、声も聞かせてくれない。
あ、そうだ、神さまを動かせばいいじゃん。
頭の中で、神さまが動くイメージを働かせるが、像はピクリとも動かない。
右手人差し指を像に向かって伸ばし、繋げる。繋げた瞬間、なぜか体の魔素が少し散った。
よくわからないため気にせず、また、神さまが動くイメージを浮かべると、少し、神さまの像の左腕が動いた。そのまま、歩くイメージを浮かべると、ぎこちなくもその通りに動いた。ジャンプもさせる。僕と握手も。
"派生技能【操作】を獲得しました。"
"技能【変形】レベルアップ"
やった。神さまやりましたよ。
心做しか、神さまの顔が微笑んでいるような気がする。神さまも、喜んでるんですね。
ん、なんだ。
後ろの方から話し声が聞こえてくる。
さっきの人間のような、嫌な感じはない。ただの雑談のように聞こえる。
少しずつ声が近づいてくる。もう、すぐそこだ。あそこの通路の角を曲がってすぐに、いる。
僕を見ると、二人の人間は驚いたような顔をする。
片方は、好青年を思わせる容姿の男一人で、もう片方は清楚な感じの女の子。
二人とも良い人そうだ。コンタクトが取れるかもしれない。
僕は二人にゆっくりと近づく。すると、何故か二人は武器を構える。男は剣で、女の子は杖。
どうしてだ。敵意なんてないのに。
男が女の子に何か伝え、それに女の子が返事をする。
その直後、女の子がなにかを呟いて、火のようななにかが神さまに直撃した。
神さまに、神さまにだ。神さまの顔は跡形もなく、崩れ、次に男が神さまに接近し、神さまを一刀両断にした。
やりやがった。奴ら。良い奴なんかじゃなかった。クズが、クズども。そうだ、ここは悪に支配された世界だ。忘れていた。こいつらも、悪に支配された人間だ。
拳を握りしめ、硬化を使う。
岩のように硬くなった拳で、男を殴る。
少し怯んだようだが、あまりダメージは無さそうだ。すぐに男は反撃に出、僕の伸びた右腕を飛ばした。だが、痛みは無い。
もういい、早く、早く罰を受けろ。学べ、悔いろ、変われ。
天界送りを僕は使用した。
男と女の子の動きが止まった。口をあんぐりと空け、固まっている。
そのまま少しして、彼らの体が端の方から、白い何かに侵食されていき、白い部分が、粒子のようになって崩れ、天に向かって浮かび消えてゆく。
剣、杖、彼らの所持品が地面に落ち、奴らの体は完全に消えゆく。
はは、やった。神さま。悪を送りました。奴らを罰してください。
"レベルアップ。ステータスを確認してください"
無機質な機械音、神さまのお導きだ。ずっと見ていてください、神さま。




