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この世界で真の仲間と出会えたからハッピーエンドを目指します!  作者: タカハシあん


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第134話 聖女教会

「伯爵様。個人的な質問、よろしいでしょうか?」


「ん? 何だ?」


「聖女のウワサを耳にしたことはありますか?」


 無礼かと思ったけど、話を変えるために訊きたかったことを口にした。


「聖女?」


「わたしのところにプランガル王国から来た者がいます。その者は星詠み様と呼ばれる、王国でもかなり特別な方から聖女を捜すよう命令されております。一国上げての捜索。となれば国家の存亡に関わる事象が起きつつあるということです。プランガル王国内で済むならこの国には関係ありませんが、近隣諸国を巻き込むようなら友人のためにもこの国のためにも協力したいと思い、無礼ながら伯爵様にお尋ねしました」


「聖女か。その話は時折耳にするな」


「確か、そんなお伽噺がありましたな」


 やはり聖女伝説は各地にあるようだわ。


「これは友人から話を聞き、わたしが纏めたものです。ご一読いただければ幸いです」


 ちゃんとマリカルと相談して書いたものだ。


 プランガル王国の情報を晒すことになるけど、聖女の情報や他国の動きがわかればプランガル王国側としても不利なことはないはずだ。一国の情報なんてそう簡単に手に入れることなんてないんだからね。


「キャロル。それの写しはないのか?」


「一応、四部作ってあります。他の方からも情報を得られそうな場合を考えて」

 

 伯爵様に出したのはわたしがコンミンド伯爵領の者だから。領主である方に出すのが筋ってものでしょう。


「どうぞ」


 マレイスカ様にも纏めたもの渡した。


 そう長い文章でもなく、マリカルが知っていること、わたしが推測したことを並べたので十五分くらいで読み終わった。


「事実の検証はしておりません。間違っていることや意図的に情報操作されているかもしれませんのでご留意くださいませ」


「お茶をくれ」


「畏まりました」


 二人のカップにお茶を注いだ。


「……聖女か。海の向こうから聞こえて来たな……」


「コルディアム・ライダルス王国ですか?」


 その国名、ローダルさんから聞いたな。


「ああ。聖女教会が設立されたと耳にした」


「ですが、あの国は守護聖獣が治める国でありませんでしたか?」


 守護聖獣? そんなものがいるんだ。さすがファンタジーな世界よね。


「ああ。そうではあるが、新たな教会を立ち上げたというところが深刻さを語っておるなと思ったよ」


「聖女を立てるほどの何かがあった、と」


「であろうな。そうでなければ守護聖獣がいる下に聖女教会など立てたりはしないだろうからな」


 黙り込むお二方。それだけ大変なことがあった、ってことでしょうからね。


「……防げた、ということでしょうか? それとも備えた、ということでしょうか?」


 思わず間に入ってしまった。


「失礼しました」


「いや、よい。確かにそれは重要なことだ」


「そうだな。どちらか次第で我が王国にも関わってくるかもしれん」


「防げた、というなら解決策があること。備えた、というならこれから起こること。少なくともプランガル王国は備えようとしている」


 あまり伯爵様と関わってこなかったからわからなかったけど、伯爵様ってかなり賢い方だったのね。


「我が王国は何も知らない、関わり合えない。蚊帳の外というわけか」


 言い方を変えるなら対岸の火事、かな? 


「王国は何年続いているのですか?」


「……約二百五十年だな。つまり、二百五十年前に何かあったということか」


「問題期間を足せば約三百年周期で起こる局所的災害。聖女なら解決できる災害なんて想像もつきませんね」


 一個人が解決できる災害って何だ? この世界の災害って何よ? どんな定義なのよ? 


「何もわからないことばかりか」


 今はそうとしか言いようがないでしょうね。二百五十年前も関わり合えなかったみたいだからね。


「コルディアム・ライダルス王国に人を送ろうにもあの国とは国交を結んでおらんからな」


「物は流れて来るのですから商人を送らせてはどうでしょうか? 海から物が入って来ると言うならこの国に港はあるということですよね? コルディアム・ライダルス王国から来た船と交渉して商人を送ってはどうでしょう? コルディアム・ライダルス王国側の商人としてもこの国と関係を結べれば得でしょうし」


「そうだな。それしかないか」


 つい差し出がましいことを言ってしまったが、決めるのはこの国の偉い人。国が動いたなら情報も入って来るでしょう。


「プランガル王国にも商人を送ってはどうでしょう。あちらの情報も得ていたほうがよろしいかと思います」


「確かに。帰ったら各所に相談してみよう」


 マレイスカ様が立ち上がり、部屋を出て行った。


「……とんでもないことになったな……」


「ですが、マレイスカ様にコンミンド伯爵家の印象を強く植え付けられました」


 びっくりした顔で見られてしまった。


「それがお望みだったのでは?」


 そのためにマレイスカ様を招待したのでは?


「いや、まあ、確かにそうではあるが、計算ずくだったのか?」


「半分は思い付きです。わたしは、お嬢様を守りたいですから」


「そんなに深い間柄だったのか?」


「深くはないと思います。ただ、お嬢様にはお世話になりました。そのご恩を返したいのです」


 すれ違ったくらいの関係だけど、お嬢様がいてくれたから今のわたしがいる。そのご恩は返さないとね。


「そうか。我が娘といいお前といい、怖い娘が揃ったものだよ」


 わたしは怖くはないですよ。

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