7.転居 1
修司が帰宅すると、この数日で起きたことを全部話した。
「今回は迅速に警察を頼ったんだね、ありがとう、助かる」と言ってくれた。
修司はしばらく別の場所に一緒に引っ越すことを提案した。
「容子の身の安全が第一だよ。ここは画廊の人間にも知られてしまったし、もう少し会社の近くに部屋を借りないか?」
容子は同意した。
週末に、即入居可能な物件への引っ越しが完了した。
家具付き、家電付きだと本当に楽だ。
車で2度往復して、当面必要なものだけを持ってきた。
引っ越したことは会社の人間にも内緒にしたのは、個人情報を知られないためだった。
「俺も今回は立花沙羅ではないと思う。こんなすぐに自分だとバレるような同じ手は使わないだろうし」
「誰かが模倣したとか?」
「こんな真似をして一体なんのつもりなのか」
「······私を殺して、修司さんと結婚したい人···とか?」
「まさか!」
修司は驚きの声をあげた。
「修司さんは、多分女性社員に人気があると思いますよ」
「は?!」
「見た目も悪く無くて、正義感強くて優しいですからね」
修司は若干照れながら、そんなわけないだろうと否定した。
「お局様の逆恨みとか?でも私の新しい住所も、呪いのカードの現物も知らない筈ですよね···」
あれは私達家族と立花家の人(沙羅の元夫も含む)しか知らない。
あの事件は示談にしたのでメディアにも流出していない。
「容子、これは念のためだけど、あの画廊へ行くのは今は控えて欲しい」
「······なるべく人と接点を増やさないようにですね。海霧さんにも迷惑かけたくないですし」
「この件が解決したら、門扉を設けるとかしないとだな」
家は石垣と生垣で囲われてはいるが、玄関までのスロープの入り口には門扉が無い状態だ。
それは本家本元のみつわ荘も同じ造りだったからだ。
和佳の兄に窓ガラスにへばりつかれたのはかなり怖かったので、容子は「お願いします」と答えた。
容子のみつわ荘巡り案が却下されたのは、それは修司が「そんなの俺も同行したいに決まってるだろ」ということだった。
新婚旅行は、もうそれでいいかもしれないなと容子は思っていた。
「それにしても、世の中まともじゃない人間が結構いるっていうことだよな」
「理由がなんであれ怖いですね」
「早く解決して、無事に式を挙げたいよ」
そうなのだ、私達はまだ入籍しかしていない。
「大丈夫、きっとなんとかなりますよ」
「そうじゃないと困る」
「こんなカトリーヌとかマーガレットに何の用があるんでしょうね?!」
容子は頬を膨らませ腕を組んでおどけて見せた。
修司は、こんな時でも炸裂する容子節にほんの少し心が軽くなるのを感じていた。




