6:デート
初顔合わせから一週間。
二人は王城庭園でまたお茶をしていた。
ガゼボに並んで座り、二人ともお尻をモゾモゾとさせている。
「ル、ルート殿下も甘いものがお好きなんですか?」
「あぁ」
ルートがコクンと頷けば、銀に近い水色の髪が肩からするりと滑り落ちる。
まるで小川の水の流れように美しい。
人形のように整った白磁の顔を飾るのは水晶のように美しい瞳。見る角度によって銀とも青ともいえない色になる。
アンドレはもぐもぐと菓子を食べながら、ルートの煌めきに目を見張る。
今まで見てきたどんな令嬢よりも美しいのだ。
表情が変わらないのは残念だが、それはそれでいい! などとよくわからない思考回路に落ちていた。
稀にしか参加しない夜会でも、『氷柱の王子』の異名は轟いていた。
ダンスをすると、とてもいい匂いがするのだとか。
柔らかく抱き止められ、顔が近づいたときには、『負けた』という気分になるのだとか。
聞いた当初は、男相手に何を……と思っていた。今ならその気持ちが驚くほどにわかる、とアンドレは心の中で独り言ちた。
「最近か……紅茶の茶葉を混ぜたクッキーにはまっているな」
「まぁ! 美味しそうですわね」
「たぶんキッチンにはあるだろう。持ってこさせる」
侍女にクッキーを持ってこさせると、ルートは一枚手に取りアンドレの口元に差し出した。キョトンとするアンドレに食べてごらんと伝えると、アンドレの顔が見る見るうちに赤くなっていった。
それを見たルートは、自分が下手を打っていることに気が付く。
――――なぜ恋人のようなことを!
だが今更引っ込めるわけにもいかず、ジッとアンドレを見つめるしかなかった。
アンドレの脳内は大混乱を極めていた。
全世界を凍らせそうなほどの真顔で、クッキーを口元に差し出されたのだから、仕方がないのかもしれない。
あーんしていいのか? 男同士だぞ!? キモいだろ! いや、見た目は女だからセーフなのか?? なんでこんなに真顔なんだよ。え、待って待って、これ、食べないと終わらないやつ?
アンドレは覚悟を決めて口を開いた。ゆっくりと。
サクリ、軽い咀嚼音。そして鼻腔に広がる芳醇な茶葉の香り。
「ふぁ……おいひい!」
手に持っていたクッキーが、アンドレの艷やかな唇の奥に三分の一ほど消えていくのを、ルートは凝視していた。
チェリーのように張りのある唇がもぐもぐと動き、ちらりと舌が覗いた瞬間、ルートの心臓は爆発しそうなほどに鼓動を始めた。
「ん…………美味しいな」
そして、何を考えたのか、アンドレの食べかけのクッキーをポイと自分の口に放り込んだ。
そしてまた一枚クッキーを手に取り、アンドレの口元へと運んだのだった。




