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6/9

6:デート

 



 初顔合わせから一週間。

 二人は王城庭園でまたお茶をしていた。

 ガゼボに並んで座り、二人ともお尻をモゾモゾとさせている。


「ル、ルート殿下も甘いものがお好きなんですか?」

「あぁ」


 ルートがコクンと頷けば、銀に近い水色の髪が肩からするりと滑り落ちる。

 まるで小川の水の流れように美しい。

 人形のように整った白磁の顔を飾るのは水晶のように美しい瞳。見る角度によって銀とも青ともいえない色になる。


 アンドレはもぐもぐと菓子を食べながら、ルートの煌めきに目を見張る。

 今まで見てきたどんな()()()()()美しいのだ。

 表情が変わらないのは残念だが、それはそれでいい! などとよくわからない思考回路に落ちていた。


 稀にしか参加しない夜会でも、『氷柱の王子(アイシクル・プリンス)』の異名は轟いていた。

 ダンスをすると、とてもいい匂いがするのだとか。

 柔らかく抱き止められ、顔が近づいたときには、『負けた』という気分になるのだとか。

 聞いた当初は、男相手に何を……と思っていた。今ならその気持ちが驚くほどにわかる、とアンドレは心の中で独り言ちた。


「最近か……紅茶の茶葉を混ぜたクッキーにはまっているな」

「まぁ! 美味しそうですわね」

「たぶんキッチンにはあるだろう。持ってこさせる」


 侍女にクッキーを持ってこさせると、ルートは一枚手に取りアンドレの口元に差し出した。キョトンとするアンドレに食べてごらんと伝えると、アンドレの顔が見る見るうちに赤くなっていった。

 それを見たルートは、自分が下手を打っていることに気が付く。


 ――――なぜ恋人のようなことを!


 だが今更引っ込めるわけにもいかず、ジッとアンドレを見つめるしかなかった。

 

 アンドレの脳内は大混乱を極めていた。

 全世界を凍らせそうなほどの真顔で、クッキーを口元に差し出されたのだから、仕方がないのかもしれない。


 あーんしていいのか? 男同士だぞ!? キモいだろ! いや、見た目は女だからセーフなのか?? なんでこんなに真顔なんだよ。え、待って待って、これ、食べないと終わらないやつ?


 アンドレは覚悟を決めて口を開いた。ゆっくりと。

 サクリ、軽い咀嚼音。そして鼻腔に広がる芳醇な茶葉の香り。


「ふぁ……おいひい!」


 手に持っていたクッキーが、アンドレの艷やかな唇の奥に三分の一ほど消えていくのを、ルートは凝視していた。

 チェリーのように張りのある唇がもぐもぐと動き、ちらりと舌が覗いた瞬間、ルートの心臓は爆発しそうなほどに鼓動を始めた。


「ん…………美味しいな」


 そして、何を考えたのか、アンドレの食べかけのクッキーをポイと自分の口に放り込んだ。

 そしてまた一枚クッキーを手に取り、アンドレの口元へと運んだのだった。




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