あと一歩の選択
簡単だ。
一歩、前に踏み出せばいい。
それだけだ。
一歩踏み出せば、全てが終わる。
つらい世界も、嫌な自分も、怯えも、恐れも。
この高い空に向かって飛び出そう。
飛ぶための羽はないけど。
羽ばたくための翼もないけど。
それでもきっと、僕は飛べる。
別れは済ませた。
彼女は泣いていたけれど、それでもいい。
飛んで、終わって、幸せになれる。
そう、あと一歩。
あと、一歩なんだ――――
難しい。あと一歩が踏み出せない。
あと一歩で全て変わるのに。
あと一歩勇気を出せば、幸せになれるのに。
それなのに、なんで、なんで踏み出せないの?
この気持ちに嘘はない。
想いを伝える準備もした。
呼び出しの場所に彼は来た。
それなのに、なんで私はあと一歩、彼の前に姿を見せれない?
弱いから?
臆病だから?
……勇気を振り絞ろう。
失敗すれば泣けばいい。成功すれば泣けばいい。
そう、何事もまず、一歩から。
そう、たった一歩――――
――――一歩、踏み出した。
達成感。
僕は踏み出せた。何もない世界からこれで逃げれる。
なにも考えなくてすむ。
浮遊感。
僕は今空を飛んでいる。
羽ばたくことはできないけれど、浮き上がることはないけれど。
この世界の誰よりも、僕は自由だ。
かすかな恐怖。
彼女は悲しむだろうか。怒るだろうか。
何も感じてくれないのだろうか。
でも。もういいや。
もう、何も考えなくてすむ。
それで、いいんだ。
もう、怖がる必要はない。
もう、怯える必要はない。
僕は、自由だ。
僕は、幸せになれる。
幸せだ。
幸せなはずなんだ。
飛んだんだから。
あと少し。あと少しで世界が。
そう、あと 少しで せ かい
が お わ
る
――――一歩、踏み出した。
彼は驚いていた。
構わず、想いを告げる。
怖くはなかった。怯えもなかった。あるのはただ、自由な、ありのままの私。
ありのままの私を晒す。
ありのままを好きになってもらおう。
だめならありのままを嫌いになってもらおう。
ありのままを、判断してもらう。
今、私はきっと誰よりも行動的だろう。
何よりも自由だろう。
そして、誰よりも幸せだろう。
なぜなら私たちは、同じ想いを共有していたのだから。
いつかまた、同じようなことで悩むだろう。迷うだろう。
そして、また一歩のところで踏みとどまるのだろう。
そして、決断するのだろう。
でも、きっとそれが私なんだ。
それが人生なんだ。
きっとそれが――――
―――――人間、なんだ。
こんにちは、駄文散文読んでいただき誠にありがとうございます、作者です。
この詩の解釈は人それぞれで、読んでいただいた人の数だけ、この詩の『意味』はあります。どれが正しくて、どれが間違っているというのはありません。
絶対的な正しさなんて存在しませんし、同じく絶対的な間違いも存在しないのです。
選択の場面、意味は違えど一歩は一歩。
いったいどちらの方が良かったのか。それは読者の皆様の解釈次第、ということになります。
読んでくださりありがとうございました!