5 詩花
早朝に目が覚めてしまったので、この時間に投稿です。
大分投稿に慣れてきました。
新しく投稿を始めた『豊臣の盾』も更新しました。
5 詩花
剣神の座を継承して幾年が経過した。かくして十五歳の誕生日を迎えた陽炎であったが、
痛ましい惨劇の折、王都の三分の一を破壊の使徒による厄災の等で、それが元服の儀式へと波及。
王都の復興の方が最優先であった。それから暫くして見事に復興を果たす。
それはひとえに権力者たちが心を一つにして援助金を出した賜物であった。
陽炎の生家である陽家もその財力を惜しみなく費やし、復興に当たった。
この国は国民同士の結束が固い。庶民と貴族、分け隔てなく差別など無論なかった。
国民同士の結束が強固であるからこそ、東の大国の国力を維持できていると言うわけだ。
そして元服の儀……陽炎は上級武官としての末席に加えられた。
その地位は王都守護騎士団長。守護騎士団はクナ国の王都の防衛に当たるエリート軍団だ。
守護騎士になるには身分問わず卓越した武力が必要で、実力主義である。
しかし、陽炎にはその資格を有していた。剣神を継承した陽炎には申し分はない。
「剣神陽炎殿……其方を王都守護騎士団長に任命する」
「有り難く……」
玉座に鎮座した精悍な面構えの王者たる風格を兼ね備えた国王が、厳かな声音で陽炎を国の要職に任命する。
そして広間にて数多くの貴人達が注目し、跋扈している中、気後れせず跪いている。
陽炎は儀礼的な洗練された所作で、それを受ける。ここに王都守護騎士団長陽炎が誕生した。
若干十五歳にして超エリートとしての階段を駆け上がる。
誰もが、若さに溢れ前途洋々たる陽炎に羨望の眼差しを向けていた。
当主である父を始め、一族の者達も総じて陽炎を祝福した。
その広間の片隅で陽炎はとある者の熱い視線を感じた。幼馴染の少女、詩花。
珍しい青髪に青い目、その理知的な顔立ちに白い肌を赤らめていた。
その熱を帯びるような視線を感じて陽炎はフーと息を大きく吐いた。転生した陽炎は当然、人気がある。
それもその筈、見目も良いが、その抜群の才覚だ。途方もない才覚を有している。
世界の剣士の頂点に立つ剣神の座を若くして継承したその実力。なれど、決して驕らず知性的。
下の身分の者にも分け隔てなく対等に接し、周囲の者より畏怖と尊敬を集めていた。
儀式を終えた陽炎は王城の片隅にいる詩花へと歩み寄る。詩花は待っていましたとばかりに陽炎に駆け寄る。
「陽炎様……就任祝着至極にございます」
詩花は顔を赤らめて、陽炎に祝辞を述べる。陽炎は努めて優しい笑顔を詩花へと向ける。
この女性の性格はひたむきだ。そしてその身に宿す確かな才覚も確かなもの。
彼女にはあらゆることに稀有な才能がある。いずれ陽炎と肩を並ぶ逸材になるであろう。
「詩花、ありがとう。大したことではないよ」
陽炎がこの世界に転生して初めて心を許した女性である。幼い頃より、陽炎を慕う少女。
憧れの存在である氷巫女よりも付き合いが長い。前世のオタクだった自分では考えられない。
それ程まで、転生した陽炎は周囲から持て囃されていた。悪い気分ではない。
陰キャラだった前世での自分を全否定する程、陽炎は大分変わった。
「陽炎様、お慕いしております」
詩花は骨の髄まで陽炎に心酔している。陽炎とて、鈍感ではない。
その思いはひしひしと伝わってくる。だが、陽炎は詩花をその対象として見ていない。
それは氷巫女の存在……詩花か氷巫女。どちらを選ぶと問われれば当然、氷巫女を選ぶ。
忘れもしない。遠い昔に遡る氷巫女との邂逅は詩花との友情よりも上である。
しかし、目の前で顔を赤くしている詩花も当然、無下にはしないつもりだ。
自分にとってかけがえのない妹のようなものなのだ。そう思うと、途端に愛おしくなる。
また破壊の使徒が王都に襲来する可能性もある。強くなった自分は詩花を守れるだろうか。
「詩花……」
詩花の艶のある青い髪を慈しむように優しく撫でる。詩花は恍惚とした表情で陽炎を見つめている。
二人だけの時間があっと言う間に過ぎていく。異世界に転生し、確かな手ごたえを感じる。
今の自分ならば、大切な存在も守ることが出来る。陽炎は詩花を守ると心に誓った。
冴えない主人公がついに超エリートになりました。