第18話:謎の組織と不思議な人達(5)
長時間車で移動させられて連れて来られたのは人気のない廃墟。
既に空は真っ暗になっていた。どうやら丸一日分僕は気絶させられたらしい。廃墟の周りは高い木ばかりで、ジャングルに放り込まれたようで不気味だ。
そして入れられたのは天井が高い何百人も入れるくらいの広い部屋だ。壁はコンクリートが剥き出しで、床にはボロボロになった赤い絨毯が敷かれていた。木片などのゴミが目立つこの部屋は一目見ただけでここ数年使われていなかったのがはっきりと判る。それでも古めかしいライトが点けてあるため意外にも明るい。
元々は教会だったのか、部屋の置くには綺麗なガラスと十字架が飾られている。
その下に僕をここに強引に招待した者たちがいた。
僕を攫ったオールバックの眼鏡男。それに武器を持った五人の男女。その中にはエドワード・サンフリットと槍女の姿もある――――――十世戒教団。それが彼らの組織の名前だ。
彼らの隣には剣を突きつけられた陽山が頑丈そうな鎖で縛られた状態で横に転がされていた。どうやらまだ気を失ったままのようだ。更に僕のすぐ後ろには五人の内の一人が武器を構えていつでも攻撃出来るように待機している。
「――――――今から五年後にこの世界は滅びる。そう聞かされた時、君はどう思う?」
眼鏡男がきつい目つきで僕にそう問い掛けてくる。挨拶も何もなしにいきなり何を言い出すんだ。
「宗教に興味はありません」
「宗教? 違うよ、永峰春幸。これは紛れもない事実だ」
「どうしてそんなことが解るんですか?」
「五年後の未来。その世界を体験した者たちが過去である現在に伝えたからだ」
全く意味が解らない。
そんなオカルトめいた話を真剣に話すなんて、危ない宗教にハマッている人間の考えることは理解に苦しむ。眼鏡男の言ったことは所謂、教祖様の教えとかいうやつなのかな?
「何故そんな顔をする。この事実は修山学園も把握している筈だが?」
「えっ!?」
僕は本気で驚いた。
こんなふざけた話を学園の生徒会連中は信じているのか? 確かに終末論とかいう考えは存在するけれど。
「未来にこの世界は滅びる。それを回避するために我々十世戒教団は存在している。現在の治安を守るためだけに動く修山とは違う」
「それで、僕に何をしろって言うんです?」
僕は顰めた顔を抑えながら訊ねる。
そんな話をするために陽山を人質にしてまで僕をここに連れて来たとは思えない。
フ、と気障ったらしく眼鏡男は笑う。
「永峰春幸。君の巨兵魔器――――――《月讀》の力を我々に貸してほしい」
「《月讀》を?」
そういえば、教団は漆黒の巨兵魔器を探してたな。
「どうして《月讀》が必要なんですか?」
「君はそもそも、何故巨兵魔器と呼ばれる巨人が存在してると思う?」
この男は普通に会話することが出来ないのか。
苛々した気持ちを抑えながら質問に答える。
「・・・・・・神器を破壊するため?」
操魔師と神器使いは敵。
以前から聞かされていた言葉から僕はそう推測した。神器は使い方次第でどんな被害が出るか解らない。それを阻止するために巨兵魔器が作られたとしてもおかしくはない。
だが、眼鏡男はクククッと気味の悪い笑い声を漏らす。
「永峰春幸。神器とは何だ?」
「・・・・・・神が使ってた武器――――――」
「そうだ。神器とは何千年、何万年と昔に実在した神やそれに匹敵する存在が所持していた武具が現世に現れた姿だ。現代なら少しインターネットで調べればすぐにそれらしい神器も見つかるだろう」
僕の言葉を遮ってまで何を言い出すんだ。
「だが、巨兵魔器は? あれは一体歴史上、いつ登場する?」
言われてみてハッとする。
「巨兵魔器が神器を破壊するために存在する兵器と言うのなら、何らかの形で同じように語り継がれなければおかしい」
眼鏡男の言う通りだ。
今の世の中、神話などで歴史上神々が何をやったかを沢山とは言わなくとも、誰もが少しは知っている筈だ。有名なのは漫画になったり特番でテレビで紹介されたりと、子供でも常識と言っていいものまであるくらいである。
それなのに、それらの武器を破壊するための存在は皆無――――――
人の魂を生贄にして動く鎧を纏った結晶の巨人など、聞いたことない。
それなら――――――
「どうして巨兵魔器は存在しているんですか?」
「様々な考えがあるが――――――我々の見解は世界の滅亡を阻止するためだと思っている。未来の世界から何らかの方法で現在に送られたと考えれば辻褄が合う」
確かにそれなら納得がいく。未来から来たから過去の歴史には登場しない。まあ、教団の言うことを信じたらの話だけど。
でも、
「じゃあ、教団は何で巨兵魔器の存在を否定しているんですか?」
十世戒教団は巨兵魔器の存在を否定し、神器使いだけを集めた組織。
それがどうして今更巨兵魔器の力を求める。レーメルの言う通り考えが変わったのか?
「教祖様は数年前にある実験で二人の親友を亡くされた」
眼鏡男が遠い目で悲しむような顔をする。
ある実験とはおそらく両儀相剋器のことだろう。
「その実験は遠くない未来に起きる災厄に備えてのものだった。実験は無事に成功――――――しかし、世界はそれを認めなかった」
強大な力を持つ者を人は脅威と思う。例えそれがどんな理由であったとしても。
「教団の操魔師は全て死に、保有していた巨兵魔器は破壊もしくは回収された。・・・・・・だから新たな道を選んだ」
「新たな道?」
「神器で世界を救う。巨兵魔器が災厄を回避する鍵ならば、それと対になる神器もまた可能性として有り得なくはない。だが、それでも我々には根本的に欠落している部分がある」
「欠落している部分?」
「それは能力だ。我々十世戒教団は自然を変化させる能力の神器を持っていても、世界を変える能力を持った神器はない」
どれだけ強大な力を持とうが、どれだけ人の恐れる武器を手に入れようが、それが世界にとって脅威になるとは限らない。未来に迎える災厄がどんなものか解らないけど、世界を相手にするのには人の脅威程度の力では駄目だ。詳しい説明を受けていない僕でさえもそれぐらいは解る。
そして、
「どうして《月讀》が必要なんですか?」
やっと最初の質問に戻る。
「そもそも、僕はそこの彼に殺されかけたんですけど」
そういってエドワードを睨みつける。エドワードは気にした素振りを見せないままこちらを眺めている。昨晩の彼の言葉を借りるなら、興味がないのだろう。興味があるのは《月讀》であって僕ではない。
「エドワードは好戦的でね。殺すつもりはなかった。ただ、君の力を試したかっただけだ」
絶対ウソだ。
あの男はレーメルが来なければ僕を殺していた。思い出しただけでもゾッとする。
「《月讀》の機能を君は把握しているか?」
「重力だというくらいは・・・・・・」
「間違ってはいないが、それだけはない」
それは僕も納得だった。
《月讀》の機能は重力と簡単に言えるだけのモノでないことは僕にも解る。
「相対性理論。量子重力理論。重力相互作用――――――他にも様々な理論に当てはまる。そして、そこから出る結論は共通して言えることは解らないだ」
は?
「《月讀》の作り出す闇は世界を終焉へと追い込む要素であるブラックホールだと我々は考えている。そのブラックホールの大半が不明物質で構成されているため理解出来ない部分も多い」
「だから、解らない」
ダークマターは観測出来ない正体不明のモノのことをいう。ブラックホールもまた解らない部分の方が多い現象で、宇宙の終焉の一つとされている。
普通に話を聞いているが、内心ではすごく驚いていた。何も知らずに使っていたけど、人体とか世界に影響は大丈夫なのだろうか。もしかして僕は世界滅亡に加担している?
「つまり《月讀》には世界を破壊する力と創造する力がある。その力を我々に貸してほしい」
「創造? 破壊は解るけど、創造は別じゃないですか?」
「破壊と創造は同じだよ。始まりと終わりが同じなように――――――宇宙が始まれば終わりを迎えることができ、終わった宇宙は再び始まることが出来る。ほら、同じだ」
強引な考え方だな。それだけ切羽詰っているということか。
「協力してほしい。《月讀》には世界を救う可能性がある。共に世界を救おう」
眼鏡男が手を差し出す。
教団の考えは間違っていないと思う。やり方は気に食わないけど、その理由を聞けば許せてしまう気分になってしまう。
――――――僕はどうすればいい?
「ちょっと待ったー!」
廃墟の中で聞き覚えのある声が響いた。
叫び声と共に壁が吹き飛ばされる。更にそれは陽山が転がされた側の壁がである。
その衝撃で陽山が地面を転がる。鎖で縛られた陽山の体は面白いくらいコロコロと転がるため、思わず笑ってしまいそうになったが、状況が状況だったのでそれは抑えた。僕の方にうまく来てくれたお陰で何とか掴まえることが出来た。ちなみに陽山の傍にいた神器使いは壁の残骸と共に吹っ飛んだ。地面に横になっていた陽山と違って立ったままだから衝撃をまともに受けたのだろう。
「うぅ・・・・・・」
陽山の呻き声が聞こえる。どうやら目が覚めたらしい。
「ダメだよ、永峰くん。危ない宗教の言葉を鵜呑みにしちゃ。そんなの承諾したら死ぬまで道具扱いだよ?」
破壊された壁から現れたのはオレンジ色の鎧を纏う巨人を従えた雫だ。その横には手を繋いだレインの姿もある。
「今更出てきて何言ってるんですか!」
助けてやるとか言っておきながらエドワードの時は来てくれなかったくせに。
「囮役だって言ったじゃないか。もう忘れちゃったの? 僕は覚えてる――――――約束を果たそう」
その声に反応して雫の巨兵魔器である《雲霧》の体が淡く発光する。正確には鎧の脇や首などの隙間から光が漏れている。
鎧の中の結晶――――――魔器が輝きを放っているのだ。
同様に隣の瓦礫が最初からそこに潜んでいたように人型の生き物へと姿を変える。雫の守護神獣のゴーレムだ。
見ただけで解る。初めて会った時とは比べ物にならないほど力が膨れ上がっている。
「両儀相剋器か」
眼鏡男が低く呟く。
過去にその力を失った組織の一員としては思うことがあるのかもしれない。
「強大な魔力もその循環を断てば意味はない。行け!」
僕と陽山を襲った三人の名前の知らない神器使いが眼鏡男の指示でそれぞれの武器を構えて雫に飛び掛る。しかし、その時点で雫はその場所にはいなかった。
「遅いよ」
雫が虚空に突然現れる。
自分に向かってくる筈だった神器使いの後ろに立ち、
「バイバイ」
左手で触れる。
触れて、消える。更に一人、もう一人と最初からそこにいなかったようにその場から消される。おそらくはそう簡単にここに辿り着けないような場所へ飛ばしたのだろう。真夜中のうえに似たよう木々で囲まれたここは道にも迷いやすい。
その間、僅か五秒も満たなかった。
「雑魚に用はないよ。僕が会いたかったのは君たち十戒だけだからね」
「十戒?」
思わず聞き返してしまう。
「永峰くん、十世戒教団は十人の神器使いで成り立つ組織だってことは知っているかな? その十人のことを十戒と呼ぶんだ」
そうなのか。
僕はてっきり教団には十人しか神器使いがいないと思っていた。つまり今この場に残っている眼鏡男、エドワード、槍女がその十戒と呼ばれる教団の実力者だということか。
「僕の質問に答えてもらおう。十世戒教団のリーダーである教祖の居場所を教えろ」
明らかに怒りの感情を込めて雫は眼鏡男たちに言った。軽い男だが、怒ると怖い。
「何故君のような者に教祖様の場所を教えなければならない」
「それなら、蛇淵という名前に聞き覚えはあるか? 天地神理道教の信者だった者だ」
蛇淵。
確かレインの苗字だ。
「知らんな」
「そうかい。やっぱり教団にとって信者は金儲けの道具しかないのね。だったら――――――潰す」
《雲霧》とゴーレムが動く。
淡い光を放ちながら攻撃に入る――――――筈だった。
それは突然だった。
バガンッ! と雫が入ってきた壁と反対のところが破壊される。しかも、その壁は雫が斧で叩き砕いた壁と違って綺麗に円を描いた状態で穴が空いていた。まるで何か鋭い刃物で斬ったみたいだ。
「そこまでだ、十世戒教団!」
そこに現れたのは修山学園の中等部の制服を着た男の子だ。すごく気の強そうな顔付きをしている。その後ろには緑青色の巨兵魔器が抜き身の刀を持って立っていた。もしかしてその刀で壁を斬ったのか?
更にその穴から中等部の制服を着た二人の女性生徒が侵入してくる。その内の一人が――――――
「レーメル!」
「春幸、沙月。すまない」
レーメルが申し訳なさそうに呟いてから日本刀を構える。
「修山学園――――――そろそろ潮時か。効果はあまりなかったようだな」
眼鏡男が溜息混じりに呟き、がっかりしたような顔をする。どういう意味だ?
「撤退するぞ」
その言葉と同時に三人の立つ場所が光を放つ。
円を描いた光は魔法陣だ。おそらくそれで逃げるつもりなのだろう。
「逃がすか!」
そういったのは雫だ。
お得意の瞬間移動で魔法陣に飛び込む。
しかし、その直前に三人は光に呑まれるように消える。魔法陣のあった場所には雫だけが残った。魔法陣があった床を睨みつけて動かない。理由は聞いていないが、苦労して見つけた教団の情報を逃したのを悔いているのかもしれない。
「両儀相剋器だな」
いつの間にか巨兵魔器と一緒に中に入ってきた少年が雫に問いかける。
「なんだい、坊ちゃん?」
少しやつれたような顔で雫が振り返る。
「オレは修山学園第一生徒会会長の風間流輔。修山学園まで来てもらおうか」
「僕はそんなところ行きたくないって永峰くんに会う前から言ってるんだけどね」
雫は本当に嫌そうな顔をする。
「では、ここでなら質問に答えてくれるか?」
「構わないよ。答えられる範囲ならだけど」
ドカッと近くに落下したコンクリートに座る。
風間もその反応に意外だと思ったのか、少し驚いた顔をする。それから呆れたように息を吐いて問い掛ける。
「どうして十世戒教団を追っている?」
「いきなり直球だね」
「答えろ」
「大切な人が殺されたんだ」
静かに雫は言った。
今までどこにいたのか解らないが、そう言った雫にレインが歩み寄る。それが当然のようにレインが雫の横に座る。言葉はない。だが、二人にとってそれは普通のことなのだろう。雫はそんなレインの頭を撫でてあげる。
「だから、復讐か?」
「どうだろう。わからないや」
雫は自嘲気味に笑った。
「復讐したい気持ちはあるけど、別に教団の連中を皆殺しにしたところであの人が蘇るわけじゃないからね。ただ、僕は知りたいんだよ」
一瞬、雫の目が昏くなる。
「何を?」
「巨兵魔器に封印された魂を取り出す方法だよ」
魂を取り出す方法? そんなことが出来るのか?
「昔両儀相剋器の存在を見つけた教団は非人道的な実験を何度も繰り返した。有名な話が両儀相剋器ってだけで、他にもいくつか研究テーマがあったんだよ。その一つが巨兵魔器から魂を取り出すこと。教団は好きな時に魂の交換が出来るようにしたかっただけみたいだけどね」
それこそ乾電池みたいに、と雫は続けて言った。
肝心な時に魔力へと変換する魂が少なかった場合のために備えた研究。なんて、残酷な実験だろう。僕には到底想像出来ない。
「理由は解った。では、何故両儀相剋器なんかになったんだ? あれは禁忌なのはお前も知っているだろう?」
「魂の消費を減らすためさ。神獣の力を巨兵魔器へ回せば魂を必要以上に使わなくて済むし、巨兵魔器の魔力も上がって一石二鳥だ」
「そうか。では――――――」
「もういいかな」
風間が新たな質問に入る前に雫がそれを遮った。
「これ以上話すことはないよ。疲れたし、気分悪いから帰らせてもらうよ」
「それは困る。オレたちだって遊びでやっているわけじゃない」
「そんなこと言われてもねー。もしかしてこの後デートの予定でもあるのかい?」
のんびりと雫はそんなことを言う。その態度に風間は気に食わなかったようだ。
「だったら、強引でも話を聞かせてもらう――――――《風斬》!」
風間が怒気を帯びた声と顔で叫ぶ。第一生徒会長、短気過ぎる。なんとなくレーメルと性格が似ているな。
待機していた緑青色の巨兵魔器がいつの間にか鞘に収めていた刀を抜刀する。その攻撃方法はレーメルとほぼ同じだった。
抜刀術によって抜かれた刀から風が生まれる。それを掠ったコンクリートは斬られた後を残して雫へと飛ぶ。鎌鼬が起こす魔風のように。正に飛ぶ斬撃だ。
だが、その風は雫には当たらない。当たる直前に《雲霧》の斧がそれを消したからだ。
強制転移能力。
それは人や巨兵魔器だけでなく、魔力によって作られた攻撃も例外ではない。
「好戦的だね。じゃ、今回は僕もストレス解消に暴れますか」
何だかんだで雫もやる気らしい。
この場合は参戦した方がいいのかもしれないが、陽山を放って置くわけにはいかない。さっき雫が現れた時に目が覚めたと思ったけど起きる様子がない。教団の逃亡に雫や第一生徒会の登場やらで忘れていたが大丈夫だろうか?
「おい、陽山。大丈夫か?」
揺すってみるが反応がない。顔色をよく見ようと体を動かすと、手に濡れた感触が伝わる。何だろう、とその手を見てみると、赤くなっていた。正確には赤い液体で濡れていた。
言うまでもない。陽山の血だ。
「陽山!? おい、しっかりしろ!」
僕は混乱して陽山を揺すり起こそうとする。頼む、起きてくれ!
すると、僕の手を横から細い手が掴んだ。見上げると、レーメルと眼鏡を掛けた女の子が立っていた。
「落ち着け。心配なのは解るが、これでは悪化してしまうぞ」
「レーメル・・・・・・」
レーメルは陽山の傷口を見る。
「コンクリートの破片で切ったんだな。気を失ったままなのは軽い脳震盪だろう。心配いらない。暫く休めば目が覚める」
「でも、こんなにたくさん血が出て・・・・・・!」
「貴様が傷口に触ったからだ」
・・・・・・僕が余計なことをしたからか。
僕が落ち込んでいる横でレーメルが眼鏡を掛けた女の子を呼ぶ。
「泰鼓、沙月を頼む」
「任しとき」
眼鏡をした女の子がレーメルから陽山を預かる。レーメルと変わらないくらい小柄なのによく陽山を持てるよな、とこんな時でも思ってしまう。この子も神器使いなのかな?
「あの、陽山をお願いします」
年下だけどお願いする立場なので自然と敬語になってしまう。
「他人の心配ばかりせんと自分のことも心配したほうがええよ。ウチは釘宮泰鼓いいます。以後お見知り置きを、永峰はん」
「うん、よろしく・・・・・・」
偽者っぽい関西弁で話す釘宮。対応しずらい。
「ここは泰鼓に任せて行くぞ、春幸」
「ああ・・・・・・」
僕は釘宮に陽山を預けて風間と雫を止めるために立ち上がった。