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第12話:海に潜む魔物(2)

 夜になってから電話が掛かってきた。こんなところでも電話って通じるんだなあ、と関心しながら携帯を開く。

 液晶画面には秋名未来と表示されていた。大体何を言われるか分かっていたが渋々電話に出ることにした。

『こんな時間まで何やってるのよ、このバカ――――――!』

 同級生であり、マンションの同居人でもある少女の金切り声を聞いて思わず耳から携帯は放す。第一声がバカってなんだよ。

 ついでに画面を確認すると時刻は丁度午後七時を回ったばかりだ。高校生が出歩いてもおかしくない時間帯なのにバカまで言われる筋合いはない。僕だってこの時間にこんな場所にいるのは不本意なのだ。今の気持ちとしては誰かに八つ当たりしたいくらいである。だから、

「えっと、まだ七時だぞ。それがどうかしたか?」

 うっかりそんなことを言ってしまう。それが火に油を注ぐ行為だと分かっていても。

『なんですって――――――!』

 激昂する声が再び響く。

「何をそんなに怒ってるんだよ!」

『あたしやシオリのメールとか電話無視しといてよく言えるわね!』

 画面を再び確認すると確かにメールと着信があったと表示されている。今まで全然気づかなかった。

『あんた今どこにいんのよ?』

「えっと・・・・・・海」

『は?』

 バカにされたような言い方をされる。それも仕方ないので僕の回答も適当になる。

「太平洋。星が綺麗だぞ」

『ふざけてるの?』

 まあ、そう思うのも仕方ない。僕だって信じたくないし逃げ出したい。

 でも周り一面が海で、今は夜だから何も見えないくらい真っ暗で泳ぐのにしてもかなり勇気が要りそうだ。月のお陰で明るくはあったが、所詮隣の船が確認できる程度である。それ以前に岸が見えないから帰る方角すら分からない。

 ちなみに星が普段より綺麗に見えるのは事実だ。

『わかった。頭がおかしいんだ』

「ちげーよっ!」

『じゃあ、いつ帰ってくるの?』

 それも僕には分からなかった。怪物を撃退してから伝えられた作戦がとんでもないものだったからだ。

「なるべく早く帰るよ」

 これが僕の精一杯の返事だった。

『――――――わかった』

 何か言われると思ったら意外にあっさりとした反応だ。まあ、何をやっているか追求されるよりはマシか。

「それじゃあ、切るぞ」

『うん。帰ってくる前に電話してね』

「わかったよ」

『それじゃあ、待ってるから。あんまり女の子に心配かけさせないでよ』

 そういって電話を切った。思わず苦笑してしまう。やっぱり危ないことをやってるってバレてるようだ。ミライと会ってからそういうことに巻き込まれているからそう思われても仕方ないけど。途中、様子がおかしかったが気になったがミライなら大丈夫だろう。

 丁度僕が携帯電話をポケットにしまうと後ろから声がかけられる。

「――――――彼女ッスか?」

「ね、根岸!? いつからそこにいたんだ?」

 振り返るとそこには根岸が黄色い毛皮で三メートル前後もある獣の上に座って寛いでいた。妙なことに獣の足に炎が灯っていてその周辺だけ明るい。狐火というやつだろうか? お陰でへらへらした顔が薄暗い中でもはっきり見える。

「最初からッスよ。春幸先輩が俺に気づかなかっただけッスから」

「そ、そうなのか・・・・・・」

 だとすれば今の電話の内容も聞かれていたのか。どうでもいい内容だったが他人に聞かれるのはちょっと恥ずかしい。はぐらかすように僕は尋ねた。

「根岸は犬の散歩?」

 そう言うと根岸のペットが怒ったように目を細めて呻く。

「だめッスよ! そんなこと言ったらイグニスが噛み付いちゃうッス!」

 それって犬じゃないか、とツッコミたくなるが敢えてやめておいた。イグニスが本当に僕に今にも襲い掛かってきそうな目で睨んでいるからだ。

「彼女への最後の電話ッスか?」

 唐突に根岸がそう尋ねてきた。勿論冗談だと解っていたが僕は黙って息を呑む。

「駄目ッスよ。この程度のことでそんな弱気になっちゃ」

「――――――ッ!!」

 今回の作戦を根岸は“この程度”と切り捨てた。この船にいる僕以外の人間は皆こういった仕事をやっているからそう思うかもしれない。しかし、怪物退治なんて危険な仕事に不安にならない方がおかしいと僕は思う。

 ふと、僕は数時間前に行われた食事時の会話を思い出す。




 怪物を撃退してから僕らは艦内で夕食をとることになった。

 軍人が使う船だから質素なものが出てくるかと思えば意外にもしっかりとしたものが出てきた。焼き餃子、春巻き、チンジャオロースー、酢豚、エビチリ、麻婆豆腐――――――何故に中華よりの食事?

 文句はないのだが一応訊ねてみた。

「軍隊の食事って中華が多いんですか?」

「んなわけねえだろ。これはオレ様の好みだ」

 その回答に呆れてしまった。こんなオレ様大佐の我が儘に付き合って料理するコックに同情してしまう。

 それは置いておいても並んでいる料理は本当に美味そうだ。まるで中華料理店に来ているようである。このコックの腕前は軍のキッチンに押し込めておくには勿体ないのでは、とつい思ってしまう。

「ちなみにこれを作ったのはオレ様だ」

 お前かよ!

「オレ様がここに来たばかりの頃にコックを張りたお・・・・・・お願いして料理を習ってな。暇潰しのつもりだったんだが思った以上にハマッて暇あればオレ様が直々に部下にメシを作ってるぜ」

 暇潰しのためにコックを張り倒して料理を教わったのか。本当にコックの皆さんに同情する。強く生きてくださいコックさん!

「さあ、野郎共! 有り難くオレ様の料理を味わいやがれ!」

 それが会食の始まりだった。

 並べられた料理を一通り食べてみるとどれも美味い。本人が自慢するだけのことはある。料理を取っていると、向かい側に座っている根岸の背後で何やら黄色い毛並みが上下している。犬?

「根岸、後ろにいるのなんだ?」

「ああ、紹介してなかったッスね。俺の守護神獣フラーテルのイグニスッス」

 主人の声に反応して自分をアピールするようにイグニスと呼ばれた生き物が根岸の肩に乗る。根岸の三倍はある巨体は狐のような顔をしていた。舌を出しながらハアハアと息を吐いている。

 これが普通の犬なら気にすることはないのだが、馬鹿でかい狐が根岸の肩に乗っている姿を見ると襲われているように見えなくもない。その根岸も口にはしないが笑った顔が少し引きっていて辛そうだ。

「後で遊んであげるから・・・・・・今は小さくなってくれ」

 ついには机の上に頭を押さえつけられてしまった根岸はそうイグニスに言う。イグニスは首を上下してからボンッと姿を変える。すると、鉛筆ほどの細さで三〇センチの長さの別の生き物になって根岸の制服の胸ポケットに納まる。それは蛇に毛が生えたような奇妙な姿だった。

「なんだそれ?」

「イグニスは管狐くだぎつねなんッスよ。どっちかというとこっちの方が本当の姿ッスね」

 管狐って確か妖怪じゃなかったか。管に住んでるっていう。

「それは解ったけど・・・・・・フラーテルって?」

「フラーテルは守護神獣しゅごしんじゅうのことッス。神柱利器と使い手の契約の証として生まれる守護神ッスね」

 操魔師でいう巨兵魔器と同じか。あれも守護霊みたいなものだし。

「じゃあ根岸って神器使いなんだ。でも、新幹線で何も力は持ってないって言ってなかったか?」

「俺は元神器使いなんッスよ。だからこそ第二生徒会に拾われたんですけどね」

 元とはどういうことだろう?

「それって――――――」

 それを訊く前に別の声に遮られた。

「よし、腹も膨れたところで今回の作戦を説明するぜ!」

 紅澤が突然声を上げて机から身を乗り出す。相変わらず騒がしい男だ。

「作戦って・・・・・・もしかして昼間の怪物を退治するとか言いませんよね?」

「なんだ、わかってるじゃねえか」

 やっぱりそうなのか。昼間にあの怪物に遭遇した時点でなんとなくそんな予感はしていたが・・・・・・嫌な予感ほどよく当たるものだ。

「何でそんなに余裕なんですか!? 四人も操魔師をここに呼んだってことはそれだけあの怪物が危険ってことなんでしょう?」

「そうでもない」

 答えたのは月島氏だ。

 僕は紅澤から月島氏の方へ顔を向ける。

異変神獣ゼノ・フラーテルは凶暴だが知性に欠ける。討伐だけならこちらの操魔師を一人貸すだけで事足りる」

「ゼノ・フラーテル・・・・・・?」

「異変神獣は契約者に見捨てられた神獣のことだ。他にもなる要因はあるがそちらは今はよしておこう。飼い主のいないペットなど我が第二生徒会にとっては敵ではないが、いい機会だから一度は全員に見ておいてほしくて連れてきた。こういうのはデータより直接自分の目で見たほうが勉強になるからな」

 ペット、という単語に反応してイグニスが小さないながらも獣らしく呻く。それ禁句ッスよ! と根岸が騒ぐが全員で無視した。

「それじゃ、僕を連れてきたのも?」

 僕はおそるおそる尋ねる。

 月島氏は僕を睨みつけ、はっきりと宣言する。

「お前はおまけだ!」

「・・・・・・そうですよね。はい、わかってました」

 なんだか涙が出てきそうだ。いきなりテスト中に呼び出された挙句に逃亡不可能の場所に連れて来られて、お前はおまけだと言われるのは正直辛い。これでも昨日頑張って徹夜したのに!

「それにしても異変神獣って、契約者に見捨てられたぐらいであんなにグレるもんなんですねー」

 ジュースをちびちび飲みながら菊池が呟く。

 確かに菊池の言うことにもなんとなく分かる。人間の不良は精々髪を染めるか耳や鼻にピアスをつけるぐらいだ。しかしあの怪物は原型が何なのかも解らない。原型自体が僕の知らない生き物だったら話は別だが。

 それを置いてもあの凶暴性は異常だ。何かこの船に恨みでもあるのか? 僕たちがここに来る前に紅澤が恨みを買うようなマネをしていないと否定できないところが怖い。それとも僕たちを餌と勘違いしてるのだろうか? さめもダイバーやサーファーをアザラシと間違えて襲うと言うし。

 菊池は言葉を続ける。

「この広い海で四隻もの軍艦があるのにあたしたちの乗ってる船だけが狙われたのも不思議ですよねー。まるで、この船に契約者がいるみたいですー」

「面白いこと言うな、嬢ちゃん。どうしてそう思う?」

 紅澤が菊池の言葉の意味を尋ねる。顔が笑っていても目が鋭い刃のように菊池を見ている。湯淺中尉も表情が硬い。

「異変神獣は契約者に捨てられた場合、その契約者を捜し続けるんですよね? あたしたちが合流した途端に現れたからもしかしたらそうなのかなー、と思っただけですー」

 菊池は半眼の目で紅澤を見る。

 対する紅澤は口元を吊り上げる。

「いい考えだ。だが、それは間違ってるぜ」

「どうしてですかー?」

 紅澤が自信を持った口調で告げる。

「この海域にいる戦艦四隻の乗員をそれなりに調べたがあの怪物の主人はいなかったぜ」

「へえー大変ですねー。こんな大きな戦艦ですから調べるのに苦労したでしょうに」

「船員はそんなに多くないからそんなに時間はかからなかったぜ」

「そうなんですかー?」

「甲板に巨人兵器オートマタがあっただろ。あれを通して海軍基地からこの船を操作してる。だから人は最低限の人数がいればいいんだよ。動作不良を起こさないかぎりこの船は安全に動くようになっているからな。便利になったオートパイロット機能と思ってくれればいいぜ」

 ただ動かすだけだけどな、と後から紅澤が付け加える。つまり戦闘には使えないと言うことだ。元々空母は補給を目的とした戦艦だから当然と言えば当然だがそれでも装備は付いている。だからこの場合は甲板の巨人兵器は使えないという意味で捉えるべきだろう。人型兵器一体で戦艦を動かせるなんて便利な世の中になったものだ。

「それだと遠距離からこの戦艦を自爆させることが出来ますねー。異変神獣ごと」

 サラッとそんなことを言う菊池。バカな喋り方のくせに怖いことを平気で言う。

 それを聞いた紅澤からクックック、と笑い声が漏れる。

「ホント、面白いぜ。嬢ちゃん、卒業したらウチに来ないか?」

「考えときまーす」

「いい返事を待ってるぜ」

 そういって紅澤は席を立ち、目の前の皿を隣の机に積み上げていく。

「今回の作戦は実にシンプルだ」

 何もなくなった机の上に積み上げた皿の内四枚だけ取って置く。そして一枚の大皿を中心に置き、それを囲むように残りの小皿を三角形を描くように並べた。皿はおそらく艦船のことを表しているのだろう。

「小皿にはオレ様、朱莉、鞠絵に巨兵魔器を一体ずつ待機させる。大皿には春幸、修策、栄美子がいてくれ」

「あの、私は?」

 伏見先輩が不安そうに挙手して質問する。

「場所が場所だから今回は不参加。お前の巨兵魔器アニマ・ミーレス機能のうりょくだと自滅の心配があるからな。月島と一緒にいてくれ」

「・・・・・・わかりました」

 伏見先輩は苦々しい表情で返事する。皆に協力できないのが辛いのだろう。できることなら代わってあげたい。そもそも何故おまけの僕が先輩を差し置いて作戦に参加させられている?

「大皿に対象を誘き寄せて小皿に乗ったオレ様たちが一斉放火で殲滅する。春幸が陽動を頼む」

「僕がですか!?」

「近接戦はこの中ではお前の巨兵魔器が一番だからな。すぐに逃げれるように修策の神獣だっている。バックにはオレ様たちがいるんだ。心配することなんてないぜ」

「・・・・・・わかりましたよ」

 ここは大人しく諦めるしかなさそうだ。

「作戦は以上だが、質問があるやつはいるか?」

「あ、あの・・・・・・」

 湯淺中尉がおずおずと声を出す。

「どうして陽動させる場所に私が行かなければならないのでしょうか? 何の力もない私がいても邪魔になるだけですよ」

「あの怪物の動きとか詳しいやつが近くにいた方がいいだろ」

「それなら今すぐ伝えれば済むことなのでは?」

「いいや、それじゃ駄目だ」

「ですが――――――!」

 湯淺中尉が強く反発しようとするが、

「明日の作戦は〇九〇〇時だ。遅刻すんなよ」

 そう一方的に言い残して食堂から紅澤は出て行ってしまった。

 夕食兼作戦会議はそれで解散となった。




 それが一時間前の出来事。

 今はやることがなくてこうして夜風に当たりに甲板に出ている。

「根岸はなんでそんなに余裕なんだよ」

 なんとなく訊ねた。危険なのは根岸も同じなのにどうしてそんなに落ち着いていられるんだ。

「俺は慣れてるッスから」

 そういうものだろうか。慣れているとはいえ危険なのに変わりはない。

「それに、俺にはイグニスがいるッスから、心配することなんてあんまりないッス」

「信頼してるんだな」

「はい」

 にやけ顔に変わりないが、その言葉には自信が溢れていた。イグニスも嬉しそうに尻尾を振る。

「あ、あれって湯淺中尉じゃないッスか?」

 根岸が管理室が見える場所を指す。

「ホントだ」

 真っ暗な管理室の窓から湯淺中尉が見える。月明かりのお陰でやっと見える程度なので表情は分からないがその目は海に向けられている。

「海に何かあるんッスかね?」

「単に暇なんじゃないかな」

 それとも明日のことで不安になっているのだろうか。最後まで反対してたし。あの怪物に関しては僕らより先に調査していた彼女の方が詳しいだろうが、それでも無謀な気がした。僕や根岸のように巨兵魔器も神獣もいないのにあの怪物を相手にするには危険すぎる。紅澤は一体何を考えているのだろうか?

「そろそろ部屋に戻るよ」

 夜の海というのは夏だというのによく冷える。

「わかったッス。イグニスがまだ戻りたくないって言うんで俺はもう少しここにいるッス」

「それじゃ、おやすみ」

「おやすみッス。明日はよろしくッス」

「ああ」

 本当はまだ眠くないのだがそれ以外に今はやることがない。

 それに、明日はきっと忙しくなる。




 翌朝。

 全員作戦の十分前にはそれぞれの指定された位置にいた。既に僕以外のメンバーが巨兵魔器をすぐに動かせるように待機させている。陽動に使う艦船を除いた残り三隻がいつでもこちらを攻撃出来るように武器を構えているせいでまるで僕が狙われている気分だ。

 その一隻に見慣れない巨兵魔器があった。戦国時代の武将が着るような浅葱色の鎧を纏った巨人。その左手には鎧と同色の和弓が握られている――――――菊池の巨兵魔器、《翠閃》だ。

『まだ対象は現れないが気を抜くなよ』

 耳に装着された通信機から紅澤の声が聞こえる。遠く離れているためこういった機械を使わなくてはならないのだ。

 しかし、離れているからといってその姿が全く見えないわけではない。細かい表情は分からないが甲板にいることは判る。紅澤は巨人兵器の足元で何やら座り込んでいた。おそらく船底をレーダーか何かで調べているのだろう。

「暇ッスね」

 そういって根岸が欠伸を漏らす。緊張感のないやつだ。

「いつ来るかも分からないのにそんなにのんびりしてていいのかよ」

「いつ来るかも分からない敵のためにずっと気張ってると、いざって時にバテちゃうッスよ」

 それもそうだな、と内心で納得してしまうが、だからといって根岸のように自分のペットの上で寛げるほどのんびりできない。それこそいざという時に怪物に対処できないからだ。

「お前は寛ぎすぎだ」

「春幸先輩がそういうなら自重するッス」

 そういって根岸はイグニスの背中から降りた。

「でも、それぐらいが丁度良い時もあるんッスよ。人によっては」

 視線を僕から外して横へ向ける。

 その方向には怯えたように下を向いた湯淺中尉の姿があった。今朝会った時から元気がなく、顔色も悪い。ここに来てからはずっと顔を上げようとしない。やはり軍人でもあの怪物は怖いということなのだろうか?

「そうッスよね、湯淺中尉さん」

「何のことですか?」

 根岸の言葉に湯淺中尉は即答するが、視線は相変わらず合わせようとしない。

「隠さなくてもいいッスよ。俺は経験者ッスから」

 その言葉に肩をビクッと震わせる。

「何の話をしてるんだ?」

「少なくともこの作戦を言った時点で解ってるッスよね? 紅澤大佐さんはとっくに気づいてるって」

「それは・・・・・・」

 僕のことを無視して話が進んでいく。根岸の言うことに変に反応する湯淺中尉。

 何だ? 何の話をしている?

「おい、それって――――――」

 僕が根岸の言ったことについて訊こうかと思った直前。

 バッシャーン!! と爆発染みた音を立てて海面から水柱が上がり、そこから十メートル近い怪物が甲板に飛び込んできた。

 獰猛の目で僕らを捉え、咆哮を上げる。

 それが戦いの合図だった。

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