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-零章プロローグ-
彼は願った。
自由で平和な世界を。
彼女は願った。
苦しむ人のない世界を。
だが、実現は難しかった。
そんなものはない。
……ならば造ってしまえばいい。
運命はそうして流転していく。
そうして三百年もの年月をかけて、平和は保たれた。
だがある日、悲劇は起きた。
村は焼かれ、町は崩れた。
彼は嘆いた。
ここまで努力してようやっと念願である平和を手に入れたのに、時が経てばやはりこうなるのかと。
彼女は嗤わらった。
やはり人間は哀れだと。この世に平和など訪れないと。
その日、世界は終焉を迎えた。
──迎えた筈だった。
これは終わりの世界の先の物語。
終焉を迎え、終焉に抗う物語。
終焉が始まりになる物語。