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異世界転生の月間ランキング上位20位までの作品の冒頭部分を3つの型に分類してみた

作者: おさむ文庫

 こんにちは。はじめまして。

「おさむ文庫」と申します。


 ふだんは、主に異世界転生ものやら短編やらを書いております。


 今回は、自分の勉強の一環として、ランキングに乗っている異世界転生作品を分析をさせていただきました。

 そしてその作品の中から、冒頭部分を3つほどの型に分類してみましたので、その結果を今回このような形でまとめてみました。


 異世界転生を知っていくうえでの、1つの手がかりにしていただけると幸いです。


 今回参照させていただいた作品は以下のとおりです。

 なお、こちらの作品は「2020年2月17日 異世界転生・ファンタジー部門月間ランキングの上位20位」までの作品となっております。

 そのため、投稿日現在(2020年2月29日)のランキングとは違いもございますが、ご了承ください。



1.ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~(ハム男 様)

2.領民0の土地を押し付けられた俺、生産スキルを使って最強国家を作り上げる(未来人A 様)

3.転生貴族の万能開拓~【拡大&縮小】スキルを使っていたら最強領地になりました~(錬金王 様)

4.普通職の異世界スローライフ~チート(があるくせに小物)な薬剤師の無双しない物語~(仏ょも様)

5.落ちこぼれ国を出る〜実は世界で4人目の付与術師だった件について〜(御影 雫 様)

6.主人公じゃない!(ウスパー 様)

7.クロスゲームシンフォニー(多重奏)~従姉は悪役令嬢、俺は好感度判定キャラ~RPG風味(Y.A 様)

8.異世界のんびり素材採集生活(錬金王 様)

9.外れ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺が全てを蹂躙するまで(篠崎芳 様)

10.中年おじさんのいきなり異世界生活 ~平凡なサラリーマンが異世界で理想のスローライフを目指す~(珈琲は無糖派 様)

11.ゴミスキル「空気洗浄」で異世界浄化の旅 ~捨てられたけど、とてもおいしいです~(夢・風魔 様)

12.転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております(森下りんご 様)

13.植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~(りょうと かえ 様)

14.身体は児童、中身はおっさんの成り上がり冒険記(力水 様)

15.RPGの悪役に転生してしまったけど生き残りたい(岡沢六十四 様)

16.転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜(空野進 様)

17.とんでもスキルで異世界放浪メシ(江口 連 様)

18.最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました(ほのぼのる500 様)

19.元・世界1位のサブキャラ育成日記~廃プレイヤー、異世界を攻略中~(沢村治太郎(合成酵素) 様)

20.転生貴族、鑑定スキルで成り上がる~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になっていた~(未来人A 様)



 これらの作品の中から、主人公が動き出すために、大きく3つの型に分類することができました。


1.願望型

2.危機脱出型

3.達観型


 これら3つの型をそれぞれ、詳細に見て行きたいと思います。

(それぞれの型に対して対応する作品をあげていきますが、作品名のみの掲載とさせていただきます)


 1.願望型


【対応する作品】

 ・ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~

 ・主人公じゃない!

 ・異世界のんびり素材採集生活

 ・中年おじさんのいきなり異世界生活 ~平凡なサラリーマンが異世界で理想のスローライフを目指す~

 ・元・世界1位のサブキャラ育成日記~廃プレイヤー、異世界を攻略中~

(5作品)



 まず1つ目の型が「願望型」というものです。

 転生前の主人公がかなえられなかった願いをかなえるために、異世界での生活を進めるといった流れです。

 

 死ぬ直前の願望ならば(せめて死ぬならば、次は○○な生活をしたい……のような)輪廻転生的な要素が強くなります。

 逆に、生きている中での漫然とした悩みや不満がかたまったものである場合(どうしてこんなつまらない社会で生きているのだろう……のような)ものである場合は、突然の転生になるケースが多いです。

 

 願望といっても、主人公が抱えているものはそれぞれです。

 例えば、今回の作品に関しては、以下のような願望が挙げられます。

 

「廃設定のやりこみゲームをもう一度やりたい」

「異世界でのんびり素材採集がしたい」

「(来世があるのなら)気の向くまま自由に生きたい」

「やりこんだゲームをもう一度楽しみたい」

 

「もう一度人生をやり直したい」、「辛い現実から解放されたい」、「ゲームのような世界で生きたい」などといった欲望をより具体的にすることで多くの作品が作られています。 

 転生前に主人公が思い描いていた願望を、どういう因果か世界の神のような存在に届いて、異世界に転生させられていきます。(必ず神が出てくるわけでもないので、読者自身が解釈しないといけないですが)


 死ぬ原因が人助け(トラックから引かれそうな人を助けた、など)だった場合は、転生する理由も納得はしやすいですが、理由もわからず突然好きだったゲームの世界に転生するパターンも珍しくありません。

 この場合は、主人公の願望に応えて転生することになったと考えるのが妥当でしょう。 

 このようにして転生した主人公は、ポジティブな動機によって行動を始めます。待ちに待っていた世界に来ることができたから、心が躍るのも納得ですね。

 

 この型は、願望の範囲が狭くなればなるほど、わかりやすくなります。

「もう一度人生をやり直したい」という願望の中に、『ヘルモード——』のように「廃人仕様の難しいゲームをプレイしたい」というくらい具体的な願望であればあるほど、主人公の動機はより深まります。

 

「現実世界では、主人公は○○という願望がかなえられない状態でいて、それが異世界に旅立ったことによってかなえることができる」

 この状況を作り出してあげることによって、主人公は異世界に希望を抱いて心置きなく活躍していくのです。



 2.危機脱出型


【対応する作品】

 ・領民0の土地を押し付けられた俺、生産スキルを使って最強国家を作り上げる

 ・転生貴族の万能開拓~【拡大&縮小】スキルを使っていたら最強領地になりました~

 ・落ちこぼれ国を出る〜実は世界で4人目の付与術師だった件について〜

 ・クロスゲームシンフォニー(多重奏)~従姉は悪役令嬢、俺は好感度判定キャラ~RPG風味

 ・外れ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺が全てを蹂躙するまで

 ・ゴミスキル「空気洗浄」で異世界浄化の旅 ~捨てられたけど、とてもおいしいです~

 ・転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております

 ・植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~

 ・転生領主の優良開拓〜前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました〜

 ・とんでもスキルで異世界放浪メシ

 ・最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました

 ・転生貴族、鑑定スキルで成り上がる~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になっていた~

(12作品)



 次は危機的状況型です。

 この型は、異世界転生した先で主人公の置かれる状況が危機に陥り、行動をせざるを得なくなる展開の型です。 

 願望型とは雰囲気が変わり、異世界転生をするまでの展開は淡白になります。

 そのため、よくわからない状況で異世界転生をしてしまったかと思ったら、そのまま追放される、無理難題を押し付けられるといった形で物語が進行していきます。

 

 対応する作品は、20作品中12作品。半分以上がこちらに分類できます。

 王道ジャンルですね。

 

 作品名を見ていただけると分かるのですが、「領民0」「外れスキル」「最弱」「落ちこぼれ」といったようなマイナスのワードが並んでいます。

 最初から最強という立場を与えられるわけではなく、むしろ危機的な状況に置かれてから、その状況を克服するために動き出さざるを得ない。

 主人公がそういう境地に置かれることによって物語が動き出します。

 

 願望型が、異世界で生活すること自体が主人公の理想な状態であるとすれば、危機脱出型では、その理想を勝ち取るために異世界で奮闘をしていくのです。 


「突然領地が襲われ、領民がいなくなってしまう」

「異世界転生させられたと思ったら、外れスキルだったようで追い出されることになった」

 死ぬのではないかという境地まで追い詰められた主人公は、とりあえず異世界で生き残るために物語を歩み始めるわけです。


 下剋上。外れスキル。領地開拓。復讐の物語……などなど

「主人公に最初に危機が訪れてその後成り上がっていく物語」として、これらの要素は非常に相性のいい組み合わせです。

 

 この型の中では、ピンチに陥った主人公のその後の心情変化によって、さらに3つのタイプにさらに分類できました。

 

 ・恨みを抱いて動機になる「復讐タイプ」

 ・考える暇もない状況に陥られている「切迫タイプ」

 ・その状況を楽しんでしまう「好奇心タイプ」

 

『領民0の土地を押し付けられた俺、生産スキルを使って最強国家を作り上げる』や『外れ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺が全てを蹂躙するまで』は復讐タイプに分類されます。

 主人公は危機を脱出するだけでなく、周りの人間への恨みを原動力として物語を歩みだします。

 主人公に強い怒りが沸き上がるまで胸糞な展開が序盤で展開されることになります。そのため、読者の感情移入を誘いやすいですが、その分のストレスもまた大きいです。

 

『転生貴族の万能開拓~【拡大&縮小】スキルを使っていたら最強領地になりました~』や『最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました』などは「切迫タイプ」の作品です。

 突然危機に陥られて、生き延びるためにはとにかく行動するしかない。主人公の思考の上をいくように、周りの人たちに振り回される必要があります。

 

『植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~』のような作品は「好奇心タイプ」です。

 追放されてしまう訳だが、逆に異世界で自由に振舞えるようになることを楽しんでしまいます。異世界転生して、そのままその世界の人に乗り移った場合に起こりやすい展開です。

 

「異世界転生した先で主人公は○○な危機的状況に陥ってしまう。この状況から脱出しなければならないとき、□□という解決策を見つけることになる」

 このような展開の中で、主人公がアクロバティックな物語の世界へ飛び込んでいきます!



 3.達観型


【対応する作品】

 ・普通職の異世界スローライフ~チート(があるくせに小物)な薬剤師の無双しない物語~

 ・身体は児童、中身はおっさんの成り上がり冒険記

 ・RPGの悪役に転生してしまったけど生き残りたい

(3作品)



 最後は達観型と名付けました。1番癖の強い型となっています笑

 

 訳もわからなく異世界転生させられる。

 物語の進め方は、上2つの型と似ているのですが、主人公は強い意思がない場合が多いです。

 転生の仕方も簡略的であり、特徴です。


 例えば、これは『RPGの悪役に転生してしまったけど生き残りたい』の冒頭の一部です。

 


「死んだ。

 

 そして生まれ変わることになった。

 

 前世でどうして死んだとか、そういうことは特にいいだろう。所詮過去のことだ」

(「00 転生」より)


 

 主人公にとって転生することは特に意味がない。むしろ、異世界転生ものは転生することでしか物語が始まらない、というお決まりのために動いてます。

 いわゆるメタ的視点に立っています。

 願望型や危機脱出型で起こる展開を俯瞰的に眺めながら、主人公が1歩離れた立場冷静に物語を語っていきます。

 

 主人公が異世界転生する時点で異世界転生について知っている。

 主人公が全てを把握してしまっているため、どうしてもコメディーちっくにならざるをえません。

 このような展開が当たり前のように起こるわけです。

 物語の登場人物でありながら、物語がどうやって動き出すべきかあらかじめ把握している。しかたないからいやいや動いてあげる。

 そういう型破りな主人公がそこに現れるわけです。

 

 主人公の心情の変化というよりかは、周りのキャラの驚きや、展開で楽しむ感覚です。主人公の型破りな動きを楽しめる型であります。

 他の王道がしっかり立っているからこそ面白くなる型です!


 ――


 さて、ここまでランキング作品を見ながら、それぞれの旅立ちの部分について分類をしてきました。

 この分類の中で分かることは、異世界転生の中でも主人公は「冒頭で何かを失っている存在」であるということです。

 

 物語論の中で言われることには、主人公は本来自分から動き出す存在ではありません。

 周りからの働き掛けがあって、初めて動き出すことになります。

 自らが勝手に使命を理解して行動ができるのは、物語のお約束をなぜか知っている存在のみです。(そういう主人公が「達観型」に分類されていきます)

 


 願望型では、この失っているものは、転生前の現実でした。

 現実世界の中で、何か満たされないものがある。

 こんな現実からは逃げ出してしまいたい。


 そんな、なにかが満たされていない状態(あるいは奪い去られてしまった状態)の主人公を満たすために異世界に転生されるわけです。

 異世界転生は、現実世界の中で満たされなかったものを、異世界転生した先でつかみ取っていく、という自己回復の物語だということもできます。

 

 願望は、「本当は○○がしたいのに、この世界じゃもうできない」という風に置き換えてみると分かりやすくなるかと思います。

 何かを渇望しているということは、すなわち、それができない状態ということですから、その欠落しているものを満たす旅にしてあげればいいのです。

 

 

 危機脱出型では、転生することは何かの装置であり、本当の事件は異世界転生した後に起きることになります。

 事件により、無理やり何かを奪い去られ、そこから状態を回復させるために物語が始まるのです。

 これらは異世界転生ものに限らず、多くの作品の中でもありうる展開です。


 

 そして、これらの欠乏を意識的に消し去って、好き勝手に主人公を動かせるのが達観型のような型破りな主人公たちという訳です。

 

 

「現実世界では、主人公は○○という願望がかなえられない状態でいて、それが異世界に旅立ったことによってかなえることができる」

「異世界転生した先で主人公は○○な危機的状況に陥ってしまう。この状況から脱出(復讐)しなければならない」

 こういった切り口からテンプレに当てはめていくと、主人公の行動をより自然なものにしていくことができそうです。


 

 もちろん、これらの型は綺麗に1つの型に当てはまるという訳ではありません。

 今回は1作品1つの型に当てはめてみましたが、2つの型をまたがっているような作品だってあります。

 ベースとなる型のことは押さえていきながら、そこに足し算のように要素を加えていく楽しみも物語を作っていく1つの楽しみです。


 今回のような型は、物語を考えていくうえで、1つの整理された軸だと思っていただければ幸いです。

 物語の中で主人公の転生や危機の訪れをわかりやすくするために、これらの型が1つの参考になればと思います!

 

 私自身作品を書きながら勉強中の身でありますので、さらに多くの知見を増やしていきながら整理していこうと思いますので、またお会いした際にはよろしくお願いいたします。


最後までお読み下さりまことにありがとうございました。


まだまだ勉強していかなければならないことは多くありますが、一旦のまとめということで投稿をさせていただきました。(2月中に間に合ってよかった笑)


「ここってこうなんじゃない?」などのご意見等ございましたら、指摘していただけますと幸いです。皆様のご意見と共に、自分ももっと勉強していければと思います!

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― 新着の感想 ―
[一言] こうしたエッセイは珍しいです。 考察、楽しく拝読させて頂きました。
2020/03/01 20:12 退会済み
管理
[良い点] おさむ様、とても参考になりました(^^)♪ 20作品の分類を丁寧になされていることや、ご自身のご意見もしっかり述べられており、わかりやすかったです♪ [気になる点] 分析・考察まで、丁寧に…
[良い点] 参考になりました。
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