人間ほうとう――
「シーナ!」
「おじさま! なぜここへ――」
手を広げるシーナを無視し、オージーは五点着地を行い、回転し、転がるように着地を図る。
あの勢いでシーナと衝突したら、シーナが衝撃でどうなるか分かったものではない。前衛のオージーと比べシーナは後衛だ。レベルが同じであればHPの量が違う。
「俺は覚悟を決めたんだ! どうなろうと知ったことか。シーナ! お前をいまから略奪する!」
「はい。おじさま!」
シーナはオージーの手を取る。
オージーはシーナを抱き寄せた。
「なんだ貴様は! 深海に潜むおじさんのような顔しやがって! ここから逃げられると思うなよ!」
そこに、結婚術式を邪魔されて怒り狂う第九王子の声が響く。
周囲からは衛兵が集まりつつあった。
衛兵たちにより逃げ場は塞がれ、シーナとオージ―はベランダの逃げ場のない手すり側に誘導させられた。
その手すりの先は空――
「来ないで! 来たら飛び降りるわよ!」
大声でシーナが叫ぶ。
それに衛兵たちはたじろいだ。
シーナがベランダから落ちれば――、おそらく死んでしまうだろう。
「まて! お前何やっているんだ。何をする気だ!」
第九王子が叫ぶ。
オージーは、シーナのウェディングドレスの胸倉をつかむと――「さっさ飛べー」と叫びながら――まるで龍が如く、シーナをベランダの外にぶん投げた!
「貴様ぁぁぁ!! なんてことを!」
第九王子の声を無視し、次の瞬間、オージーもまた手すりに足を掛け、空へと舞い上がる――




