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「ねぇ……。おじさまぁ……」
女性の甘えるような声で目を覚ます。
ある朝――、オージーはシーナに起こされた。気持ちの良い朝だ。
そこはオージーの家である。
しかし、最近のシーナはなぜこんなにも積極的なのだろうか。
おじさんをからかって楽しみたいお年頃なのだろうか。
ともかく気にはなるが、成り行きを見守るしかないのだろう。
「なぁ、シーナ。最近どうしたんだ?」
「……。あのね。ちょっとウィンドウシステムでメッセージウィンドウを見てしまってね――」
一体それがどうしたというのか。
ナニか都合の悪いメッセージをシーナは見たというのだろうか。
それは何か都合の悪いことなのだろうか?
「ちょっとわたし、日本産業規格 Z8141:2001の5Sにある、清掃をしてしまって……」
詳しい説明をしたくないのか、シーナはわざと分かりにくい話を始めた。
「シーナは何言っているのかな?」
「えーっと。だからオージーは裏切らないで欲しいな。お願いだから――」
なぜかシーナは酷く怯えているようだ。
そんなシーナをオージーは優しく抱きしめた。
「大丈夫だから。裏切ったりしないよ……」
何に怯えているかは分からないが、とりあえず安心さえることが重要だろう。オージーはシーナの背中をさすった。
「ほんとに?」
「ほんとだよ」
「あ、ありがとう……」
はにかんだ笑顔をシーナは見せる。
それはまるでアサガオのように明るいものである。
しかし、それは何かスキルめいた作り笑いのようにも見えた。
「なら、何か一つ、おじさまの好きなもの作ってあげるね。何かある?」
顔を真っ赤にしながら甘えてくるシーナにオージーはドキリとする。
「ん? 今なんでもって?」
「大抵のものは作れるよ。なにしろ、ようやくわたしだけの魔術士工房が出来たからね」
「あー。それが言いたかったわけか」
そういう意味かと、オージーは緊張を緩めた。
おそらく、シーナは魔術士工房なるものを自慢したいのだろう。
だが、オージーはここでおやじギャグを口にしてしまう。
「なんでもって、うら若い女の娘がそんなことを言ってはいけないよ」
「そんなことをって、おじさまはわたしに何を言うつもりなの?」
「あぁ、なら子づくりとかどうだい?」
ここで、オージーは「それはちょっとー」とか「おじさま変態~」とか言われて話が終わることを期待していた。
だが、シーナの答えは想像の斜め上の返事であった。
「なるほど――、この乙女鉱山と子づくりがしたいのね?」
「あぁん?」
「いいわよ」
そいう言うと、シーナは明るい声で「今日はまだキケン日だから2日後ねー」と右手を振りながら去っていってしまう。
いつもの調子を取り戻したようだが、答えには戸惑うしかしない。
「え?」
(どういうこと?)
まさかのOKであった……




