第四話 デートじゃないよオフ会だよ
空は晴天、デート日和の日曜日の朝、琢磨はどういう訳か美少女とデート......ではなく
第二回目のオフ会という名の名目で、春佳と会うことになっていた......参加人数二人の。
琢磨は、日曜日にしては早い朝八時半に起き、シャワーを浴びて、朝食に軽くバナナを食べて、約束の場所に汗をかかないようバスで向かった。
集合の10分前には約束の場所へ着いたが、既にそこにはひときわ目立つ茶髪ポニーテールの美少女が立っていた。
白黒のボーダーシャツ、下はレディース様のジーンズなのか、可愛らしいひらひらが所々に付いていた。
琢磨は深呼吸をして、彼女に声を掛けた。
「よ、よっす」
「あ、イカさん、よっす」
「ごめん待った?」
「ううん、全然」
「そっか」
「うん、じゃあ行こ」
ちょっと春佳の頬が赤らんでいることを、琢磨は知ってか知らずか、その事には触れずに二人は第一目的地の洋服屋へと向かった。
「人いっぱい居るねー」
「まあ日曜日だしな」
「私達、他の人から見たらカップルじゃない?」
春佳は顔を隠す様に下を向きながら言った
「なっ?!ちょ、じょ、冗談よせって」
春佳が顔を上げてテンパる琢磨の顔を見ながらからかう様に「なんてね」と微笑んだ
目的地の洋服屋は日曜日と言うこともあって、たくさんの人で溢れ返っていた。
「人いっぱい居るねー」
「うん、その台詞2回目、みんな焦るからやめて」
「私あの服見てくるからなんかしてていいよ」
「そこ無視なんだ、わかった」
春佳は今にでもスキップしそうな足取りで、レディース用品が並べられてあるコーナーにかけていった。
しばらくすると、春佳は何着か服を持って来て、「これ、試着するから感想言って」と
琢磨にとっては、ハードルが高すぎる事を言い、返事も待たずに試着室へ入っていった。
スルスル、と布一枚越しの向こうから、服が擦れる音が聞こえる。
琢磨はその音を聞きながら、緊張した面持ちで
春佳の着替えを待っていた。
その待ち時間は、琢磨にとって永遠に続くのではないかと思わせる程長く感じた。
「開けるねー」と春佳が言うと同時に試着室のカーテンを開けた。
「......似合ってる」
「ほんとに?何か今間があったけど」
「ほんとに似合ってる」
「そ、そっか、それなら良いけど」
琢磨が感想を答えるまでに、間が空いてしまったのは、春佳が信じられない程に綺麗だったからであったのは想像にた易い。
服屋での買い物を済ませ、午後のランチを済ませた二人は上映中のラブコメアニメ映画を観た。
時間は残酷にもあっという間に過ぎ別れの時間になる。
「今日は楽しかったよ」
春佳は駅の改札前まで来ると、隣りにいる琢磨の顔をみて笑顔で伝えた。
「うん、俺も楽しかった」
琢磨も笑顔で春佳の方をみて答える。
「オフ会第三回目も絶対に開催するから覚悟しててね」
「ああわかったよ。それじゃあ俺こっちだから、また今度」
琢磨は、呆れ顔で答えると「じゃあな」と言って人混みの中へ消えて行った。
春佳は笑顔で手を振りながら、琢磨を見送った。
彼の姿が見えなくなった後も、春佳はしばらくそこに佇んでいた。
「琢磨君......」
春佳は煩いぐらいに激しく鼓動している胸に手を当てながら小さく呟いた。