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転生しても受難の日々  作者: 流星明
山積する諸問題を解決せよ
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第72話 ラングは逃げ出した。しかし‥‥

お待たせしました。

「ユウキ様、騎士団の戦準備終わりました。いつでも行けます」


ワトカ村を出発した俺達は、1日かけてラングが(ひそ)む廃城近くの荒地にまで進軍。廃城を3方向から包囲する布陣を敷くと待機していた。エアリアル公爵率いる3000の援軍を待つ為だ。


「俺達の部隊は最前線だ。気を引き締めてあたってくれ。リーザとアヤメがいない分、俺達は弱体化しているからな。万が一の時はレイのいる場所まで撤退するぞ」


ラング率いる賊は1000に対して、こちらは近衛騎士団50とレイ率いる2000のみ。城攻めは城兵の3倍の兵以上で攻めるのが鉄則だからな。


俺はクレスと共に近衛騎士団を率い、その後方にレイが1000の兵を率いて布陣。残り部隊を2分割して、右翼のリーザと左翼のアヤメに率いさせた。2人は何度かエアリアル公爵軍と共同で戦った事があり、臨時の指揮官として使われた過去があるらしい。


「すまんな、副団長殿。これはファルディス家の内輪揉めみたいなものだ。君達には迷惑をかける」


「ユウキ様、どんどん権力の深みに()まってません? それと事情を理解している私はともかく、団員の男連中が血の涙を流してにらんでいます。いつか刺されかねませんよ? まあ、女性陣の報復が怖いのでしないでしょうが」


うむ、皆から怨念と怒りのオーラが(ほとばし)ってる。それは甘んじて受けるがな。俺だって、女性を増やしたくて増やしたい訳じゃないぞ?


アルゼナはともかく、女性を推挙してくる神にラーナ神とボルガさんも加わったんだから。はあ、ラーナ神の連れてくる女性は何者なんだろうか‥‥。


「‥‥まあ、事情知らん奴からすれば俺は単なるハーレム野郎だ。しかし、レイまで加わったのは想定外だからな? まさか、身内すら操って俺との結婚認めさせるとは思わなかった」


「それだけユウキ様が好きだったんでしょうな。アルメアから聞きましたが、前世からお慕いしていたようですし。『いつかやると思ってたけど、このタイミングでやるとはさすが我が友』と言ってましたね」


「アルメアさん、知ってたなら‥‥。いや、言うわけ無いな。レイとアルメアは親友だし、話を聞くと恋仲になるのを応援してそうだから。その話は後回しだ、副団長。敵は俺達に仕掛けてくると思うか?」


俺の問いかけに、クレスは目の前にある山とその頂きにある廃城を見ながら説明を始める。


「地の利を得ている彼等が、わざわざ山を降りてまで仕掛けるのは無いかと。ただ、夜襲を行う可能性があります。警戒はしていた方がよろしいでしょう」


「確かにな。しかし、将兵の質的な問題があると思うが。念のために警戒はしておこう」


その可能性はあるな。ただ、問題は夜襲が出来る程の練度をラング達が持っているかだ。彼等は旧ナルム王国騎士団の残党だが、先の戦いで優秀な指揮官と兵の大部分を失っている。統制の取れた戦いは出来ないだろう。


「エアリアル公爵の軍が来るのは明日辺りだ。となれば、俺達は‥‥」


「て、敵襲! 副団長、ユウキ様。敵が攻めて来ました。数は1000、ほぼ全軍でこちらに向かってきます!」


「‥‥予測が外れたな、副団長」


「な、何で攻めてきた? 山にいた方が有利に戦えたはずだが」


いきなり戦闘開始かよ! まあ、幸いなのは昼飯が終わってた事だな。全員配置に着いてるし、気力も十分だ。奴等、援軍が来る前に逃げ出すつもりだろうがそうはいかん。敵が中央突破してくるなら逆手に取ってやる。


「近衛騎士団に通達だ、副団長殿。『このまま敵を引き付けて後退。レイの陣まで下がるように』とな。昨日の軍議で話した策を使う。上手く行けば敵が殲滅出来るだろう」


「‥‥正直、あまり気乗りしない策ですがね。ここで死んでは意味がありませんし、やりましょう。近衛騎士団、これより後退開始! 逃げるんじゃないからな!!」


クレスの指示に従い、近衛騎士団は動き出す。さて、俺は撤退の時間を稼ぐとしよう。山から出てきた敵の中で指揮官らしい奴めがけ、魔法を放つ。


「ファイアーランス10連!」


炎の槍は見事に指揮官へ命中、敵の動きが鈍った。その隙に近衛騎士団は後退していく。しかし、何かおかしいな? 奴等、慌てて逃げ出している様子が見て取れる。まるで何かに追われているような‥‥。


「ひ、ひるむなあ! ここで止まったら、あの女に殺されるぞ。活路は前にしかない。ユウキ=ファルディスを討って、中央突破しろ!!」


諸悪の根源ラング登場か。逃避行が堪えたのか、随分とやつれてるな。しかし、君は何だ。関ヶ原の戦いの島津義弘になったつもり? 勇猛果敢な薩摩隼人も最後は60人近くしか生き残れなかった激戦だったんだぞ。統制無く士気も低い輩に出来る芸当ではないぞ。って、おい! 矢が何本か俺を狙って飛んできたじゃないか。


「シールド展開! ‥‥危ないな、当たる所だった。油断大敵、気を引き締めるとしよう」


後ろを振り返れば、近衛騎士団が乱れも無く後退していた。どれ、時間を稼ぐべく挑発もしてみるか。時空魔法スピーカー、オン!


「やあい、ラングの馬鹿、無能、弱虫! 何度も人前で失禁した小便たれえ! 臆病者のお前なんかに負けるか、アホウ!!」


「ユウキ、貴様ああ!! 奴を捕らえろおお! そうすれば、奴を人質にして脱出が出来る。者共、かかれえ!」


「「「「うおおおお!!」」」」


効果は抜群だった。俺めがけ、むさい野郎達が襲いかかってくる。この位で良いだろう、俺も逃げるぞ。馬を使って敵を引き付けつつ、後退する近衛騎士団に合流。見ればレイの部隊が2つに別れ、魔法使いと弓兵が前面に出てきていた。よし、作戦通りだな。後は空いた中央を走り抜けるだけだ。


「近衛騎士団、全力で走れ! 早く抜けないと巻き込まれるぞ、急げ!!」


クレスの言葉に死に物狂いで走る団員達。最後尾の団員も何とか射線から抜けると、レイの部隊がラング達めがけて魔法と矢を放つ。十字砲火を受ける形となったラング達は、なす術無く次々と倒れていく。前衛部隊が壊滅し、怯んだ後衛部隊にリーザとアヤメが襲いかかる。


どうやら上手く行ったようだな。後はラングを討ち取るだけだ。俺は近衛騎士団と共に反転し迎撃を開始する。もはや、ただの烏合の衆に成り下がったラング達はなす術も無く討たれていった。


釣野伏は成功だな。ぶっつけ本番だったが、何とか上手く行った。練度の低い相手だから成功したが、上手く使うにはまだまだ精進が必要か。さて、そろそろラングの命を終わらせようか。


「ラングよ! さっきの威勢はどこにいった? 臆病者め、姿を見せろ!!」


「お、臆病者ではない、ただ少し驚いただけだ! 俺達をここまで追い詰めるとは、ユウキもなかなかやるな。だが、俺はここで死なない。英雄になるまでは死ねないんだあ!!」


死屍累々(ししるいるい)の敵の中からラングは馬とともに現れた。そして、そのまま城の方へと逃げ出す。‥‥悪運は強く、往生際の悪い奴だ。あいにく逃がす道理は無いからな。ここで確実に仕留める。


俺が魔法をラングに向けて放とうとした時、廃城の塔から光が放たれた。それはラングめがけて突き刺さり、馬に乗っていた彼を地面に縫い付ける。おいおい、あの距離からラングを狙撃したのかよ!?


俺はテレポートを使って、ラングのいる場所へと移動する。そこで見たのは、ラングの心臓を貫いた光の矢が地面に深々と突き刺さっていた光景だ。ラングは必死の形相を浮かべたまま死んでいる。逃げ足の早かった奴だが、今回は逃げきれなかったか。


「あまり良い思い出の無い奴だが、かくも簡単に死ぬとはな。悪事を重ねなくなったという点では、この結果で良かったかもしれん。ラングよ。あの世に逝ったら、犯した罪を償うがいい」


しばらくするとアヤメとリーザ、クレス達が駆けつけてきた。レイも側近達を連れてやってくる。俺はしばらくラングを見ていたが、全員集まった所でスピーカーを使って宣言する。


「ラングは倒れ、我等が勝利した! これでエアリアル公爵家の平穏も約束されただろう。近衛騎士団及びエアリアル公爵家の方々、此度はファルディス家の身内が迷惑をかけて申し訳ない。この恩義には必ず報いると誓おう! 報奨等は期待していてくれ!!」


「「「「おおおおおっ!!!!」」」」


戦後処理は大変そうだが、何とか勝てたか。しかし、光の矢を撃ったのは誰なんだ? ラングを討ち取る活躍を見せたんだ。1番に報いないといけないんだが。


「ユウキ様、廃城に旗が掲げられています。あれは‥‥帝国のリーキッド候爵家の紋章!! どうして廃城にいるんだ?」


「ぬう、昔から長い事戦ってきた間柄の家だからのう。どさくさ紛れに領地を奪いにきたか? しかし、それにしては動きが遅い。何を企んどるやら」


クレスとレイの言葉を聞き、俺はある事を思い出す。リーキッド候爵家は、アヤメの父親たるゴールさんと因縁深い家らしい。加えて弓使いの女性とくれば、考えられる事は1つ。


「‥‥たぶん、俺が目当てだろう。ラーナ神が俺に託す女性とこんなに早く会えるとはな。しかし、レイに続いてか。これを皆に説明するのは苦労しそうだな、はああ」














次回、弓使いの軍師登場。


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