第63話 神対神 からの神帝介入
お待たせしました。
「はい、スィーリアの代わりに別の娘を貴方に差し上げます。ところで、スィーリアは何処に?」
「いや、さすがにこれ以上の女性は結構です。あとスィーリアでしたら‥‥アイラ、何処に跳ばしたかな?」
無理だよ、無理、無理! 今ても女性達をまとめるのが大変なんだから。致命的な対立とか抗争に至ってないのが奇跡だものな。それはともかく、アイラが聖女を跳ばした島ってどんなところだ?
「アルトナズ島ね。先住民達が、島に入る余所者を誰彼構わず殺すという魔の島よ。昔、乗っていた船が沈んで漂着した島で、何とかテレポートで脱出出来たの。聖女の力を失った彼女だけど、今頃死んでいるんじゃないかしら」
「どこの北センチネル島だよ! しかし、アイラもよく無事だったな」
地球にもあるんだよな、そんな島。インド洋に浮かぶ島にいる先住民達が、何回かの接触以外は交流を拒絶している場所だ。政府が保護しているし、ガチで人が死んでいるから絶対にいかない方が良いけどな。
「‥‥ねえ、ユウキ。1年前に仕事から帰ったら、添い寝してってせがんだの覚えてる? 私すごく怖かったんだから。話も通じず、ただ、弓で矢を放ってくるのよ。夢に出ちゃったくらい」
「ふむ、そこは魔族と人間のハーフが暮らす島ですね。父が言うには、『両方の種族から迫害された人々の居住地だ。だから、無用ないさかいを避けるべく外界との接触を嫌っている』と言ってましたね」
アヤメの説明を聞いて、ようやく理解する。彼らにとって外の連中は敵と見なしているのだろうな。うん? ラーナ神が焦りだしたぞ。聖女がいないと困るのか。
「くっ、なんという所に跳ばしたのですか! このままでは彼女に渡した‥‥」
「聖玉が失われるからねえ。はい、ラーナ。聖女の成れの果て、受けとると良い。やあ、ユウキ。直接会うのは、異世界転生の時以来だね」
突然、現れたのはアルゼナだった。どうやら、神帝様のお仕置きから無事生還出来たらしい。その彼女が、ラーナ神の前に放り出したのはスィーリアだったのだが、何か様子がおかしかった。ローブに矢が何十本も刺さっており、出血も激しかったらしい。白のローブが真っ赤な血で彩られていた。
「怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い‥‥」
「ラーナも考え無しに聖女の力を取り上げたねえ。危うく、彼女が死ぬところだったよ。回復魔法はかけたけど、精神は救えなかった。アイラちゃんをマジギレさせちゃった聖女の失態だったな。で、まだユウキに君の配下を送りこむつもりなの?」
こりゃ、あれだ。先住民達と戦っている途中で力を失って、一方的な蹂躙にあったんだろうな。アルゼナの言うとおり、自業自得感が半端ないけど。
「ぐっ、アルゼナ。ま、まあスィーリアを連れて来たのは感謝していますよ。新たにユウキの下へ送る娘に、聖女の力を与えるつもりでしたから。貴方ばかり、独占は卑怯ではありませんか?」
「だから止めろって言ってるだろう? ユウキは私の管轄だよ。自分の手駒が不足気味なのを他人の手駒で補うのは止めい。私が譲った自称勇者とか自称最高司祭様とかいるだろうに」
「あ、あんな不良人物を渡してどの口が言うのです!! 能書き垂れるのは1人前で、行動がともわない典型的駄目人間じゃありませんか!」
‥‥アルゼナよ。自分に必要無い奴をラーナ神に渡した感ありありなんだが。あと、その自称する奴等は同じ学校関係者だろうな。うむ、面倒臭いから関わりあいにはなりたくないぞ。
「ふん、良さげなパッケージに飛び付いて中身を確認せぬラーナが悪い。やあい、ラーナの情弱。詐欺にまんまとだまされてやんの!」
「ぬがあ!! もう怒りました。アルゼナ、今日という今日は許しません。決着を‥‥痛ああい!」
「いい加減にせぬか、馬鹿者! 失態に失態を重ねる気か、ラーナよ。‥‥アルゼナ、あまり調子に乗るでない。また部屋に行きたいか?」
まさかの神帝様ご降臨だった。しかし、ラーナ神を殴ったあれって大丈夫か? やたらゴツいハンマーなんだが、かなり痛そうだぞ。まあ、あれだな。あまりに低次元な神様同士の争いにみかねて介入しに来たんだと思う。最近、やたらと神様との絡みが増えたなあ。
「うぐっ、部屋行きはもう嫌です。勘弁してください。しかし、地上に神帝様が来るのは珍しいですね。天変地異の前触れ?」
「たわけ! 2人が喧嘩すれば聖都が消滅するからだ!! 何万もの人間が死ぬのを看過出来る訳がなかろう。アルゼナよ、代わりの娘とやらを受け入れよ。ラーナの切り札たるスィーリアとやらは、その傲慢さ故に自滅した。魔族の娘がユウキの下におり、アルゼナが影響力を多大に持つ現状をラーナは不満に思っておるようだからな」
「ええ!? 受け入れないと駄目なんですか? ‥‥神帝様、ハンマーをこれ見よがしに見せるの止めて! それ何発もくらったけど、痛すぎるから!!」
おいおい! いつの間にやらラーナ神肝いりの女性が来る事が確定なのか。いかん、このままだと流されるだけだ。自分の身の安全の為にも断らないと!
「神帝様、これ以上女性が増えると俺の身がもたないんですが‥‥」
「ユウキよ、ラーナは1度言い出したら引かぬ神じゃ。ここは受け入れよ。そちらのお嬢さん方もすまんが頼む。‥‥その娘、恋敵になる可能性が100%じゃがのう」
「うぅ、ユウキの周りに女性が増えるのは嫌だけど、神帝様まで出て来られたら断れないよお」
「はあ、ご主人様も大変ですね。私もかなり嫌ですが‥‥仕方ありません。受け入れましょう。ラーナ神はともかく、アルゼナ様には両親がお世話になりましたからね」
うん、比較的話が分かるアイラとアヤメは良いとしよう。問題は他の面子だ。説得とかにかなりの労力使いそう。何かおかしい。前世で苦労した人間は、今世じゃ幸せな人生を歩むのがテンプレートじゃなかったけ?
「ユウキよ、苦労するだろうが頑張るのだぞ。ラーナ、その娘は帝都におるのだろう?」
「はい。そこにいるアヤメとは因縁のある家の出身ですね。神官ではなく、狩人の職を得ています。神官になる気は無さそうなので、今回は聖女の称号と神弓を与えるだけにしますが」
アヤメと因縁? おい、トラブルのにおいが今から漂って来ているんだが! 修羅場連続過ぎてマジできついっての。俺の人生何なの? キ〇グボン〇ーにでも取り付かれたのかよ!
「ラーナ、またまた厄介な娘を引っ張ってきたね。話も終わったし、ユウキ達をナルム王国王都に戻すよ。君の信者さん達が、マヤちゃん達にいじめられているから。間に合わなかったミズキちゃんも戻してあげる。それじゃ、ユウキ。夢の中でまた会おうね!」
「なっ、ちょっと待て。話は終わってないんだが!」
「くっ、今度こそ貴方の側に置いてみせます。聖都関連は私が何とかしますので、気にしないで下さいね。貴方方が罪に問われる事はないでしょう」
「そこは感謝しますが、女性を側に置くのは諦めてくれませんかね!?」
「人生はままならぬ事が多く、己で決められる事柄は以外と少ない。ユウキ=ファルディスよ、強く強く生きるのだ!」
「神帝様、遠い目をして語るのは止めてくれませんかああ! 心折れそうになりますから」
こうして俺達は、アルゼナのテレポートにより聖都を後にした。はあ、これから修羅場確定だよな。怒れるマヤ達に説明するのは難儀そうだ。ただ、アイラが妊娠した件はきっちり話すがな。自分の子を守れぬ親にはなりたくないし。
しかし、ラーナ神も余計な事をしてくれる。なんで、そこまで俺にこだわるかね?
次回、荒ぶるマヤ達に報告。
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