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転生しても受難の日々  作者: 流星明
邪神と聖女との出会い
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第58話 聖女の炎

お待たせしました。

「嫌、嫌あああ!! 止めなさい、止めなさいよ! ただ、私は騎士団から献上されたドレスを着ただけ。なのに、なのに何でお父様達を殺そうとするの!?」


駄目だ、この姫様救いようが無い。聖女と似たようなベクトルの思考してやがる。聖女が正義の為に王族を火炙りにする、リーザ姫がドレスをもらっただけで悪くないと主張する。事の本質はただ1つ、自分が絶対に正しいと考えている事だろう。


まあ、事の善悪を考えれば軍配が上がるのは聖女だろうな。聖女とリーザ姫の違いは、それを自分の為にしているのかだからな。リーザ姫は騎士団から献上されただけと言うが、仮にそれが認められたとしても罪は残る。騎士団が報告した時、咎めて罰した上でビトリア聖国に謝罪を行うべきだったよ。


「ふっふっふ。良いわよ、もっと泣きなさい。貴女には、絶望のなんたるかを教えてあげるわ。聖騎士達よ、まずは悪辣なる王族に火をかけよ!!」


「「「「はっ! かしこまりました、聖女様!!」


聖騎士達により、彼らの足下にある藁に火が入った。みるみる燃えていく火が炎に変わるのは早い。服やドレスに引火し、泣き叫ぶ声があがる。そんな中で、ナルム王国国王が声を荒げた。


「痛い、熱くて痛い! 助けてえ、助けてええ!」


「お願いです、聖女様! お許しを!!」


「や、やめられよ! このような蛮行、教皇様が許しても神がお許しになりますまい!!」


「何を世迷い言をおっしゃるの、ナルム国王。私が仕えている正義の女神ラーナ様は、今回の件を支持して下さいました。ちなみに、あの姫が着たドレスは金貨5000枚はかかってます。希少な絹糸を使った代物でしたのに、本当に残念だわ!!」


うわあ、聖女マジギレしてらっしゃる。相当楽しみにしてたみたいだな。金貨5000枚って、見た事無い大金だわ。せいぜい、ファルディス家の資金運搬で金貨1000枚運んだ位だし。


えっ? 助けにいかないのかって? あいにく俺は正義絶対勇者でも後先考えない熱血主人公でもないからな。彼らは大罪を犯し、罰を受けている。あくまで当然の事だからね。


処刑方法はグロいが、現代以前は処刑はエンターテイメントだよ。ルイ16世らを殺したギロチン。ジャンヌダルクらを殺した火あぶりなんかは、民衆の前で行われたし。‥‥正直、中国の車裂きの刑みたいなやつじゃなくて良かったよ。あれ、女性陣が見たら気絶不可避だろうから。


「い、嫌だ。僕、死にたくないよ! 助けてえ!!」


「ごめんなさいね。恨むなら貴女の愚かな姉を恨みなさい。さて、バージニル帝国の皆様。ナルム王国の分配についてお話しましょうか?」


「‥‥せ、聖女様。この場で会談を行うとおっしゃるのですか?」


「嫌ああ! 息子が、息子に火がああ!!」


「か、金ならいくらでも出す。だから、だからああ!!」


さすがのマヤさんもドン引きしてるな。大丈夫そうなのは、ユイとリーザ位か。ユイは悪党は潰す派だし、リーザは国家に失望しているからか当然と思っているのだろう。


「ええ、我々も暇じゃありませんので。まず、帝国が押さえたナルム王国南部は領有を認めますわ。代わりにですが、ナルム王国北部の大部分をビトリア聖国が治める事を了承して頂きたいです。‥‥そういえば、検分の使者を送ったのに残りの3国は来ませんでしたわね。どうしてくれましょうか?」


聖女の目が笑っていない笑顔が怖い。次の獲物は確定か? そこに慌てて聖騎士の1人がやってくる。


「聖女様、ダリア公国より使者が来ておりました。『検分に向かおうとするも、リビス王国が通行許可を出さず軍が通れない』との事でした。なお、代わりに金貨5000枚の寄付を行うとの事です」


「まあ、殊勝な物言いですこと。ダリア公国は許しましょうね。リビス王国ともう1国には‥‥ふふっ。聖戦を発動しちゃおうかしら」


地球でもありましたね、十字軍。あれ、宗教的な目的よりも土地、金を異教徒からぶんどるのを主目的にしてるからなあ。第4回に至っちゃあ、同じキリスト教国たるビザンツ帝国を滅ぼしてるし。


結局、諸侯と教皇の力が落ち、国王や皇帝の力が上がる契機になった出来事だもんな。どうやら、こちらの世界でも後者を理由に仕掛けるっぽいな。


「やだ、やだ、やだ、やだああ!! 聖女様、お願いします。お父様達を助けて下さい。ドレスは洗って返しますし、罪を悔い改めますからああ!!」


違う、そうじゃないリーザ姫。盗んだ服を洗って返すとかおかしいだろ!? 万引きした奴が店に行って、『盗んだけどサイズ合わなかった。洗濯してクリーニング出したから、ごめん返すね」って、言う位におかしい。


「いい加減にしろ、くそガキが!! さっきからピイピイピイピイ喚きやがって!! ナルム王族は内政もろくに出来ない低能ぞろい。義務を怠り、ただ金を浪費するような輩。地獄に落としてやるのが筋だろうがああ、おおう!?」


「ひ、ひぃぃぃ!!」


聖女の本性は、サラ〇ーマン金〇郎並みの武闘派でした。皆も大人しいお友達とかをキレさせちゃったら、事がでかくなる前に全力で謝ろうね!


「けっ、けったくそ悪い女だぜ。ああ、もう無理、とっとと処分しちまおうか。正義の神ラーナよ、汝の代行者たる聖女に力を与えたまえ。我が敵に終焉の炎を! ジャッジメント・ファイア!!」


「「「「ぎゃあああ!!」」」」


天から舞い降りた炎が王族達を燃やし尽くす。いや、聖女さん。瞬殺出来るんならして下さい。正直、精神的にキテる身には断末魔の悲鳴とか辛い。


「さて、次はそこの盗賊4人の家族どもだ。甘い汁さんざ吸ってたんだろ? 心置きなく旅立ちな」


「うええん、お姉ちゃん怖いよおお!」


「お願いです、聖女様! どうか、どうかこの子だけは!!」


「「「「や、やめろおお!! 俺達の家族を燃やさないでくれええ!!」」」」


今まで空気と化していた霊魂の皆さんが、ようやく覚醒したようだ。しかし、遅すぎるよなあ? それに、王都に家族を置いていってた事を鑑みても見捨てた可能性高いし。あるいは、俺達を破ってから迎えに行こうとしていたか。どちらにしても、家族が助かる見込み無いよな。


「はん、自分の犯した罪は棚にあげて命ごいだあ? 冗談は存在だけにしとけや、クズ!! だいたい元を正せば、お前らが原因だろうがあ!?」


「せ、聖女様。口調、口調に地が出ています。皆様が見ておられますよ!」


いや、聖騎士さん。指摘するのが遅いから! 皆、あっけに取られて見てるよ。しかし、口が悪いな。もしかしたら、俺と同じ貧民街出身かもしれん。


「ああん、今更だろうが。そんな事よりやかましい命乞い大合唱を止める。我が敵に終焉を。ジャッジメント・ファイア!!」


「あ、熱いよお! お母‥‥」


「嫌ああ! なんで。なんで子供まで‥‥」


「弟のせいで、こんなの‥‥」


「カーチス、あの親不孝者めええ!」


悲鳴や恨み言、怒りや憎しみの声が城門前に響く。だが、それも一瞬。あっという間に彼らは燃え尽きてしまった。霊魂たる4人は何も出来ずに、ただ呆然と立っているだけ。あまりの惨状に声が出ないようだな。


「ああ、スッキリしたぜ。おい、酒だ。酒を持ってこいや!」


「は、はい。ただいま!」


シスターさんがワインを持ってくると、聖女はボトルのコルクを歯で加えて外す。そして、グラスを使わず豪快に飲み始める。‥‥完全に動きが荒くれ者のおっさんです。ボルガさんは邪悪って言ってたけど、自分の正義に酔ってる豪快さんですやん! まだ若いし、道理を解けばなんとか考えを矯正出来るかな? ただ、2人で話す機会が無いからね。


「ああっ、生き返るな。やっぱりワインは教会のに限るぜえ。うん?」


おっと、ようやく全員が注目しているのに気が付いたらしい。慌てて立ち上がると身だしなみを整え、営業スマイルを見せる。


「おっと、私とした事がはしたない真似を。ちょっと、ストレスが貯まってただけですのよ、ほほほ。‥‥見逃してくれる?」


「「「「「あんだけやらかしといて、何言ってるんですかあああ」」」」」


聖国、帝国問わずの抗議に、聖女さん沈黙。あっ、頭を乱暴にかき出したぞ。なんかストレス貯まってそうだな。俺と似たような境遇かもしれんな。


「ちっ、だよなあ。反省してま~~す。ああ、面倒くせえ」






次回、ルーの外伝。帝都での陰謀が動き出します。

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