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転生しても受難の日々  作者: 流星明
ナルム王国騎士団の落日
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ルー立志伝 12 僕を盾にするな!

お待たせしました。

「戦うしかないぞ! 皆で‥‥ぐはっ」


「くらえ、ファイアーランス! な、なんだと魔法ごと凍らせ‥‥」


「ダリダ様が殺られた。もう、もう終わりよ。ティリュ様、どうかお慈悲を‥‥いやああ!」


「ふん、我を利用しようとした愚か者どもよ。永劫(えいごう)の時の中を氷の中で過ごすがよい。エターナル・フリージア!」


僕の目の前で、暗黒教団の面々が次々と氷漬けにされていく。封印された魔族を利用しようとしたら、逆に返り討ちだなんてどんな喜劇だよ。このまま居ても殺されるだけだ。急いで逃げ‥‥って、誰か僕の手をつかんでる!


「ルー=ファルディス、逃がさないわよ。こうなったら、貴方を盾にして退くしかないわね。ダリダ兄さんが死に、他の皆もやられてしまった。ここから離脱して再起を図る。いつか必ず帝国を滅ぼしてやるわ」


「あのう、僕を盾にしても意味無いと思いますがね。ユウキみたくマジックシールド展開出来る訳じゃ無いから。ってか、離せ狂信女。僕には守るべき女性達がいるんだよ!」


「うるさい! 大人しく私の盾になりなさいな」


「僕を盾にするな! 自分の犯した愚行は自分で償え」


僕はダリダの妹に蹴りを何度も放つ。人の命を利用してまで生き延びようとする女性だ、もはや容赦はしない。さすがに痛かったらしく、彼女の手が離れる。よし、後は全力で逃走するだけだ。


「ま、待てええ! 私はここで死ぬ訳にはいかないの。暗黒神様に認められて、暗黒教団の長となる。私の名を歴史に残し‥‥えっ?」


「ふっ、随分と夢見がちな娘だな。残念だが、君の名は歴史に残らん。我によって殺されるからだ。さあ、我の(かて)になるがよい!」


ダリダの妹を捕まえたティリュは、そのまま彼女の首筋に鋭い牙を突き立てた。たちまち彼女の体から血液が失われていく。肌は干からび、肉は痩せこけて骨しか残らない。髪も色素を失い、白髪へと変わった。


魔族の中に血を吸う種族がいたと聞いた事がある。名は確かヴァンパイアだったよな。半人半魔って聞いているから、彼女はヴァンパイアと人間のハーフって事なのか? しかし、若さを失ったダリダ妹は哀れに過ぎるな。


「あ、あ、あああ。私はまだ10代なのにいい! こんな老婆になるのは嫌、嫌よ。返せ、私の若さを返せよおお!!」


「くっくっく、愚かな小娘だ。自分に過ぎた力を求めるからこうなるのだぞ? なかなか美味な血であった、ありがとう。では、さらばだ。切り裂け、アイスブレード!」


「い、いやあああ!!」


老婆と化したダリダの妹が無数の氷の刃で引き裂かれた。辺りには血が飛び散り、近くにいた僕にも飛んでくる。気づけば暗黒教団の面々は全員死んでおり、残っているのは自分とティリュだけだ。


「さて、君はどうするか。先程の話からすると私の生け贄に捧げられる為に連れて来られたようだが?」


「はい、そうです。聖女たるティリュ様におかれましては、慈悲の心で僕をお助けして頂きたく」


「‥‥弱いな、君は。よくもまあ、今まで生き残ってこれたものだ。しかし、聖女か。我はただ、自分の食糧たる人間を確保すべくこの街を作ったまでのこと。当時は魔族と人間の戦争の真っ只中だ。安全な場所など我の街位しかなかったからな」


うわあ、実利を兼ねた人間の保護だったんですね。どうしよう、僕もダリダ妹みたく血を吸われかねない。よし、逃げよう! 僕は後ろを振り返ると全力で走る。聖堂のドアまであと少し。外はまだ昼だ、ヴァンパイアは日の光には弱いはず。ならば勝機が‥‥あれ? うわああ!


「見事な逃げっぷりだが、逃がす訳は無かろう。床を凍らせたのだ、君はもう走る事も歩く事も出来ないだろう」


僕の考えなんて見透かされてたよ。くそっ、滑って立つ事も出来ない。だったら、このまま滑って‥‥って右肩に手が! いくら何でも早すぎませんか。


「はい、捕まえた。早速だが味見をしてみよう。君が近くに来たら、美味しそうな香りがしていたのでね。では、頂くとしよう!」


ティリュの牙が僕の首筋に突き立てられた。牙から血が抜けていく感覚は初めての体験だ。ど、どうしよう。僕はこのまま死ぬのか? その時、頭に不思議な声が聞こえて来た。


『ルー=ファルディスのスキル、精力絶倫(魔族)発動! ティリュ=バイオンに強烈な依存とそれに伴う禁断症状が追加。ティリュ=バイオンは、以後ルー=ファルディスに対して逆らう事が出来ません。簡単に言えば‥‥貴方のし・も・べですね』


「待てええ! なんかヤバいスキルが発動したぞ。あれ、ティリュ様? どうしました、急に離れて」


「な、なんだ。我の心が‥‥君で埋められていくこの感覚は? ぐうっ、ありえない。我が人間に‥‥こ、恋をするなど!」


息を荒げて必死に抵抗するティリュ。いや、スキルで人が好きになるなんて有り得ないだろ。マリー姉さんにミル、マイカさんとは色々な事が積み重なって恋人関係になれたんだし。と、また不思議な声が聞こえる。


『今あげられた3人も精力絶倫(魔族)の効果を受けております。もっとも影響が強いのはマリーですね。貴方に対して絶対的な忠誠心と愛情をもっています。次がマイカ、ミルの順です。3人とも裏切ったりしませんので、ご安心を。ただ、浮気をすると‥‥』


最後まで言ってくれ! しかし、こんなスキルいつ手に入れたのか? 記憶をたどっても手に入れた記憶が無いんだよなあ。声の言うとおりなら凄いスキルなんだけど。おや? ティリュの様子がおかしい。


「‥‥ルー、我は貴方の女になる。君の血は今まで吸ったどの人間の血よりも旨い。そして、我の心は完全にルーの物となった。もはや我慢ならん! 君の全てをもらい受けるぞ」


僕を押し倒して服を脱がそうとするティリュを必死に止める僕。ここで流れに任せたらまずい気がするからね!


「ま、待って、展開が早すぎて困るんですけど! 不思議な声から警告されたし、浮気はしたくないんです」


「ふむ、そうか。だったら聞いてみよう。そこの3人出て来い! さっきからずっと我等の戦いを見ていたであろうが」


ティリュの言葉と共に現れたのは、マリー姉さんとマイカ、ミルの3人だった。えっ、なんでいるの!?


「ふふっ、さすがはティリュ様です。私の母方のご先祖だけあって、さすがの強さですね。初めまして、マリー=ゴーディンと申します。かつてはバイオンの姓を名乗っていました」


「やっほう、ルーはん。マルチナの暴走を利用して、暗黒教団の残党を潰そうとしたのやけど‥‥。上手くいって良かったわあ。あっ、外の連中はマリー姉さんの毒とミルの魔法で死んでますので、安心しとくれやす」


いや、マイカ。かわいい顔しておっかない策略使ってんじゃない! そして、輝くような笑顔で頭を下げるマリー姉さん。いつもなら容赦無く排除するのに、しないのはご先祖様だからか。しかし、さっきから情報量が多過ぎて頭の処理能力が限界に近いんですが!?


「‥‥まさか、ララの子孫か? 気まぐれで人間との間に子供を作った事がある。その子は錬金術師として名を馳せたが、ヴァンパイアではなくサキュバスとなってしまったよ。結果、男と浮き名を流して幾人の子を作っていたが。君は、そんな所が見受けられないな。サキュバスとして覚醒しているのに」


ララさんって、マリー姉さんの母親みたいだな。あの人も冒険者の頃は、男達の間で浮き名を流してたらしいし。それが執事長の息子と結婚して落ち着いたかと思ったけど、若い冒険者と駆け落ちしちゃうんだからな。しかも、マリー姉さんの兄も女性使用人と子供を作りまくるおまけ付きだ。


なかなか奔放な家系だよなあ。ただ、マリー姉さんは違うから。反面教師にしてしっかりしてるからね。


「マリー姉さんはそんな事はしない! 僕の事を大切に‥‥って、うわ!」


「大丈夫よ、ルー。私は貴方以外の男なんて興味ないの。ねえ、早く皆で帰りましょう。屋敷の寝室が完成しましたからね。マイカ様とティリュ様もルーを抱きたいでしょうし。あっ、ミルはまだ駄目よ。もう少し大きくなってからね」


マリー姉さんは僕を抱き寄せながらとんでもない事を言った。えっ、ちょっと待って下さい! それって確定事項ですか?


「ようやくか。うふふ、ルーを抱けるなんて嬉しいわあ。女々しい男に絶倫振りを見せてやりましょ。今夜は寝かせへんで」


「ぬう、久しぶりの逢瀬だな。楽しみでもあり、不安でもあるが」


「ううっ、早く大人になりたいよお! 皆さんずるいですう!!」


‥‥大丈夫だろうか僕の体は。しかも、数年したらミルも加わるんだよな。精力絶倫って、存外厄介なスキルかもしれない。魔族限定なら魔族に近づかない方が良いかも。これ以上は増えたら、精神的にもきついし。















次回、ロウに対する反撃。

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