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転生しても受難の日々  作者: 流星明
ナルム王国騎士団の落日
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第50話 敵本陣激戦

お待たせしました。

「のけ、のけえ!! 帝国の剣たるドーザ=ライオネルが押し通る。ダルザは何処じゃあ!!」


「ライオネル卿に負けるな! このナルシス=ウィルゲムに続けえ!!」


「元ナルム王国騎士団の矜持を見せよ! 突撃!! 狙うは騎士団団長ダルザの首だあ!」


ダルザの首目掛けて襲いかかる帝国軍。戦力比50000対2000だからな。いかにダルザでも逆転は無理そうだった。策? 3方向を敵に囲まれ、味方は壊滅状態。これを逆転するには、大規模な援軍が無ければ不可能だろう。


それに、だ。包囲が空いている北側には撤退すら出来ない。なぜなら、その先には王都があり、現在はビトリア聖国の軍勢がひしめいている。顔を出したら即捕縛されるだろうからな。と、俺の側に転送光が現れる。現れたのは、少し涙ぐんだ師匠だった。


「ユウキ、大丈夫そうね。良かった‥‥。と、とりあえず、報告するわね。現在敵はナルム王国騎士団のみになっているわ。ビリナム男爵家の軍は、ライオネル卿の軍が殲滅。ライオネル卿は、そのまま敵本陣になだれ込んだわ」


リーザの親父達はあっさり死んでしまったか。これで家族同士が戦わずにすむと思った俺は甘いかな?


「それから、騎士団団長のダルザは撤退しようとはした。けれど、ウィルゲム卿の軍が進路を阻んで足止め。最後にあなた達が来たから、倒されるのは時間の問題よね」


「連絡ありがとう。だが、油断は禁物だ。相手は何らかの切り札を持つ可能性も考慮にいれないとな。師匠、このままついてくるか?」


「私も行く。どういう結末になっても見届ける義務があるから。今、私はマヤ様から監察として派遣されている。だから、ダルザとの最後の戦いを記録しなきゃ」


師匠も頑張って仕事をしているな。血と死体があふれる戦場なんて苦手だろうに。俺も好きじゃないが、守るべき人達を守る為だ。とうに覚悟は決めている。


「ねえ、ユウキ。騎士団の騎士の犠牲が多いけど良いの? 普通だったら、あなたは助けに行くのに」


「ミズキ、外側の連中は素行や人格にかなり問題があるんだ。だからこそ、非情ではあるが、ここで使い潰す。その代わり、内側の騎士達は守って欲しい。マヤを守護する騎士にするつもりだからな」


師匠と合流した俺達は、元ナルム王国騎士団と共に敵本陣内へと入っている。敵の抵抗は激しく、元騎士団の騎士が次々と倒れていった。だが、俺達は彼らに援軍は差し向けず、中核部隊50人を守る事に集中する。


なぜなら、この50人は、マヤの騎士団に加えるべき人材だからだ。主に、優秀な指揮官や腕の立つ騎士、魔法使い等で構成されている。現状、侍女とアンデッドで守っている離宮の守りを託すのに相応しい人物達なのだ。


「冷酷だけど、そんなユウキも素敵よ。‥‥どうやら、ダルザの近くまで来たようね。ウィルゲム卿の声がするわ」


声のする方を見れば、ウィルゲム卿と初老の騎士が並んで1人の男の前に立ちふさがっていた。あの人が、ドーザ=ライオネル卿か。眼光は鋭く、身体中に古傷がある様子を見るに、数多くの戦場を辺り歩いた歴戦の騎士のようだな。


「騎士団団長ダルザよ! 8騎士が1人ナルシス=ウィルゲム、推参。貴様の悪行も、もはやこれまでだ。覚悟せよ!」


「ウィルゲム卿、下がれ! ここは、わしが相手をする。ダルザ、命をもらい受けるぞ!!」


「ちっ。若造と死に損ないに、ここまで追い詰められるとはな。だが、俺はまだ負けた訳じゃない。部下を失ったが、まだこれがあるからな」


凶悪な面相をした筋肉ダルマのダルザは、帯剣していた黒い剣を抜いて天に掲げる。あれは‥‥間違いない! 邪神オードルの神器だ。ミズキが使っている神槍アルバースの原型と同じ気配を感じた。いかな8騎士とはいえ、神器持ちと対峙するのは危ない。


「ウィルゲム卿、ライオネル卿! あれは邪神オードルの神器だ。あなた達の武器では太刀打ち出来ない。神器を持つユイとミズキ、リーザに任せてくれ!!」


俺は騎士達の前に出て、2人に危険を訴える。神器込みでS+ってヤバイだろ! 本来の奴はA+なんだが、神器が強さを跳ね上げてやがる。これで下がってくれれば良いが、おそらくは‥‥。


「小僧、忠告は感謝しよう。しかし、わしらは8騎士じゃ。皇帝陛下の剣たる我らが、尻尾を巻いて逃げる訳にはいかん」


「そうだ。我々はそう簡単には下がらぬ。下がれば、兵士の士気も下がるからな。ですが、ライオネル卿。1人では厳しいと思われます。2人で当たりたいのですが、どうでしょうか?」


「‥‥良かろう。確かにダルザの剣は並みの代物ではないからな。いくぞ! 遅れをとるなよ、ウィルゲム卿!!」


2人は俺の願いを断り、ダルザへと向かっていった。ウィルゲム卿の高速剣技、ライオネル卿の豪快な大剣さばきで攻め立てる。だが、それを余裕でさばくダルザ。


その剣は怪しく黒い光を放ち、何か仕掛けがあるように見えた。攻防が激しくなり、8騎士2人が攻撃に動く刹那。それは起きる。


ウィルゲム卿の剣とライオネル卿の大剣が粉々に砕けたのだ。この隙を見逃すダルザでは無かった。一気に2人へ踏み込むや、がら空きの体に剣で斬撃を放つ。ウィルゲム卿の鎧が縦に裂け、ライオネル卿の左腕が斬り飛ばされた。


俺は師匠に目配せする。師匠も気づいてうなずいた。彼らが止めを刺される前に、俺達はテレポートで2人を回収。再びテレポートを使用し、騎士達の後ろに脱出した。


「余計な事をしやがって。そうか、てめえが噂の少年魔法使いか。ここは戦場だ。坊やは家に帰って、母親の乳でも吸ってな!」


典型的な挑発だ。ならば、奴の度肝を抜いてやろう。確か、アリーは奴の愛人だったらしいからな。


「おい、ダルザとやら。俺がただのガキじゃない事を教えてやる。ユイ、あいつの首を出してくれ!」


「はあい。ダルザさん、こんな泣き虫騎士を戦場で初めて見たよ。アリーさん、だっけ? ユウキ兄ちゃんの魔法と計略で倒したんだけどさ。奇襲に失敗して、部下に裏切られて情けないよね」


ユイが箱から出したのは、アリーの首だ。恐怖と涙に濡れた顔はかなり怖い事になっていた。それを見たダルザの表情が変わる。顔全体が赤くなり、血管が何本も浮き出てくる。うむ、挑発は成功したようだな。


「て、てめらああ!! よくも、よくもアリーを殺しやがったな! 殺す、貴様ら全員皆殺しだ。まずはてめえからだ、ユイ=リンパード!」


「私が相手だね。よおし、暴れるぞ!」


「ちょっとユイちゃん! 私が戦うわ。たまには私も活躍したいの」


「ええ、なんで譲らないといけないの?」


「ユイさん、ミズキさん。ここは私に任せて下さい。ダルザには積年の恨みが‥‥!」


「え、ええと私が時空魔法で相手を‥‥」


敵を前に言い争う女性4人。無視された形となったダルザは、当然の事ながらキレた。剣を構え、猛然とユイ達に襲いかかる。


「貴様らああ! 俺をなめてんのかああ!!」


「‥‥はあ、馬鹿馬鹿しい。さっさと終わらせます」


ユイ達の前に飛び出したのは、アヤメ=ルビアスだった。ダルザは速度を落とさず、そのままアヤメに剣を振り下ろす。繰り出される剣をアヤメは交わし、腰に帯剣した2本の剣を抜く。ダルザの左腕と左足めがけて振った剣は、ものの見事に根元から断ち切る。ダルザの体は倒れ、切断面から血が吹き出し、辺り一面に広がっていく。


「があああ!! き、貴様。アヤメ、裏切った上に俺の邪魔をするとは、どういうつもりだああ!?」


「どうって、早く戦いを終わらせたいだけです。さっさとベッドのある生活に戻りたいので」


アヤメのあんまりな解答に、戦場には唐突な沈黙が広がる。うん、確かに睡眠は大事だからな。ベッドじゃないと寝れない人もいるだろうし。でもね、アヤメさん。


「「「「それだけの理由で獲物を取らないでよ!!!」」」」


「それだけの理由で殺そうとしてんじゃねええ!!」


‥‥もっと理由を飾ってくれないと、敵味方の人がマジギレすると思うんだ。遊びで来てる奴が1人もいないからな。名誉とか勝利の栄光とか、それっぽい事を言ってくれ、頼む!


「‥‥えっ? 結構、睡眠って重要な事なのに。なんで、みんな怒っているの?」


駄目だああ!! 自分の欲求優先しちまった! まあ、ダルザ死にそうだし、これはこれで良いのかな。と、思ったら、ダルザの奴は余裕の笑みを浮かべてるぞ。まだ何かあるのか?


「俺の体に傷をつけたのは褒めてやるぜ。だが、俺にはこの剣がある。こいつは、サキュバスの貴族が作り出した剣でな。ありとあらゆる力を吸収する能力がある。だが、それだけじゃねえ。今から魔剣ゾーダルの恐ろしさ、とくと見せてやるぜ。はっはっはっ!!」


魔剣から解き放たれた闇がダルザの体を包む。血が止まり、斬り飛ばされた左腕と左足がくっついて、元に戻った。


体が膨張して鎧が弾け飛ぶと筋肉が盛り上がり、巨大化するダルザ。気づけば、身長6メートル程の巨体となっていた。剣もそれに合わせて巨大化、剣幅3メートル程の大剣となっている。


‥‥なにこれ、ダルザ第2形態なのか? まさか『私の戦闘力は53万です』とか言い始めないよな。


「さあ、アヤメよ。まずは、生意気なてめえから倒してやる。覚悟しやがれ!」


「‥‥面倒臭い、なんで大きくなるの? まあ、いい。私は平穏な睡眠とユウキ=ファルディス様の為に戦うだけ。ようやく巡り会えた仕えるべき主君の為、ダルザ。あなたを倒す」


いつの間にか、主君認定かい! まあ腕も立つし、かわいいから採用するけどな。問題はどの位の強さなのかだ。神眼スキルがうまく機能しないんだよ。調べた時にAって出たけど、後で見てみたらA?って書いてたからな。もしかしたら、邪神オードルの信者かもしれない。ここで、彼女の心の内を見極めてみるか。













次回、ダルザ対アヤメ決着。

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