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転生しても受難の日々  作者: 流星明
痴話喧嘩からの戦争乱入
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ルー立志伝 8 嵐からの逃避

お待たせしました。

今朝起きたら、ユウキを好きな女性陣がにらみ合って喧嘩寸前になっていた。皇女殿下にユイとミューズが特に殺気を放っていて、恐ろしいのなんのって。アイラ叔母さんは震えてるし、ユウキは頭をかかえていたな。触らぬ神に祟りなし、僕はマリー姉さんとミルを連れてマイカさんの実家たるティナート家に向かった。


‥‥ただ逃げたんじゃないよ? マイカさんとは今後の打ち合わせもしないといけないからね。マイカさんとマリー姐さんが抱える錬金術師をまとめて、化粧品や香水、薬等を作る事になったんだ。土地と建物はドーザ様が準備してくれるから、他の事で詳細を詰める必要あるし。


「おこしやす、ルー。その顔やと噂はほんまでしたか。皇女殿下が離宮から鬼の形相でファルディス家に向かわれたと聞きましたえ。これは修羅場発生かと、周辺住民の皆さんが戦々恐々としとるみたいやけど」


ティナート家の応接室で会ったマイカさん。黒髪を飾る金の髪飾りは、僕が婚約記念に送った物だ。職人にバラの彫金をしてもらったけど、気に入ってもらえて良かったな。あの夜会の後、両家が話し合い、僕とマイカさんが正式に婚約する運びとなった。


当初、後継者ではない僕との結婚に難色を示したマイカさんの父親。確かに話が違うと怒るのも分からなくはない。でも、僕が手掛けている事業を説明すると態度が一変。ティナート家にとっても利があると見てくれたようで、婚約が成立した。


‥‥ロウ兄さんは終止無言で怖かったな。僕とマイカさんを見て、怒りの表情を浮かべていたし。まあ、悪いのは婚約者をほったらかして人脈作りに勤しんでいた貴方なんだけどね。あとうかつな発言をして、マイカさんの心を離れさせた事もだ。


「もう、噂になっていたんですか? あれは心臓に悪かった、逃げだして正解でしたよ。ユウキも苦労が絶えなさそうです。僕はマイカさんとマリー姉さん、ミルだけで‥‥」


「待ってえな! うちとルーはもう婚約者やろ? だったら、名前だけで呼んで欲しいわ。もっと親しくなりたい思てるから敬語も禁止! よろしおすな?」


うぅ、マイカさんの機嫌が悪くなったな。本当に良いのかな? はっきり言えば、僕の方が格下なんだけど。自分は事業の営業兼金庫番にすぎない。事業の中心で活躍している彼女の方が輝いて見えるけど。でも、ここまで言われたら仕方ないな。


「わ、分かった、マイカ。それより、金の髪飾りを気に入ってくれて嬉しいよ。白のドレスを着こなている君の美しい黒髪に良く似合っている」


「‥‥うふふ、嬉しいわ。お世辞やなくて真心込めはった物言いやから。はあ、早くルーを食べたいわあ。うちはいつでも準備万端やで?」


舌なめずりをして、僕を見るマイカ。うん、マリー姉さんと比べると胸は小さい。けれど僕より背が高いし、普段の言動からにじみ出る教養の高さは魅力的だ。僕も早く彼女を抱き‥‥って、マリー姉さん! 足を、足を思い切り踏んでるよ!!


「‥‥お2人とも、朝から発情なさらないで下さい。まだ幼いミルもいるのですから自重を願います」


「もう! いけずやな、マリー姉さんは。まあ、ええわ。商売の話に移りましょか」


そう言った途端に雰囲気が変わるマイカ。商談をしている時のお爺様と相対してるかのようで、かなり怖い。これが一流の商人が持つオーラと呼べる物か。僕もいずれは彼女みたいになりたいものだ。


「ふふ、ルーの性格はそのままでええと思うで? 強面担当はうちがして、友好担当をあんさんがすればええと思う。まあ、商売の勉強は続けないといけまへんけど。まだまだうちから見てもひよっこやし」


「うぐっ! 痛いところをつくなあ。お爺様やマイカを参考にして頑張るよ。さて、商売の話だな。僕達は錬金術師を10名程確保しているけど、君の所は何人いるんだ?」


「うちは3人やな。秘密を守れる優秀な錬金術師は、そうはおらんかったから。ふむ、1度そちらの錬金術師と面談せんとあかんか。秘密を守れるなら化粧品や香水作りを手伝ってもらいたいんや」


確かにマイカの化粧品と香水は大人気だからな。うちだとお婆様とお母様、アイラ叔母さんが愛用している。品質を維持しつつ、大量生産するには人手がいるだろう。ただ、秘密を守れる人間だという事が重要だ。他の商家に行ったり、情報を流されて同じ商品を作り出したされたら困るからな。


「その辺は心配に及びません。私が錬金術師の手綱を握ってますので。以前、情報を漏らそうとした不届き者が出ましたが、病を得て亡くなりましたよ。亡くなる日の朝までは元気だったんですけどね。朝食後に血を大量に吐いて、そのまま逝ってしまいましたが」


‥‥マリー姉さんによる完璧な毒殺ですね。相変わらず、裏切り者には容赦しないからな。アイラ叔母さんからも、『絶対にマリーを裏切ったら駄目よ』と言われた理由がよく分かる。どうやら、マイカも理解してくれたようだ。顔がひきつってるし。


「‥‥こわっ! マリー姉さん、見せしめにしてもやり過ぎやろ。おっかない魔女がおるなら、情報漏洩は大丈夫そうやな。あとはルーの増毛剤と保湿剤やったっけ? うちの方にも1枚噛ませて欲しいねん。顧客が洒落にならん大物揃いやし、ティナート家としても繋がりが欲しいんや。マイカからのお・願・い」


「大胆と言うべきか、厚かましいと言うべきか。とはいえ、マイカ様程の商人ならば見抜かれても仕方ないでしょう。ルー様、貴方の判断に任せます」


マイカの言う事は分かる。皇帝陛下に宰相閣下、8騎士筆頭に魔法学院学院長と大司教様。あげくに冒険者ギルドのギルドマスターだからな。商家の人間にとっては、(のど)から手が出る程欲しい縁だろう。


「分かった。向こうにはこちらから話しておこう。でも、マイカなら奥様方から紹介してもらえるんじゃないか? 化粧品や香水で繋がりあるだろうに」


「紹介されても、男である皆様に売れる商品が無いねん。うちは化粧品や香水位しか売れんからな。香辛料や宝石は、そないに頻繁に買うでも無いやん。でも、増毛剤と保湿剤は違うやろ? 毎日使うものやし、リピーターも多い超優良商品や。だから、な?」


ティナート家の商品はその2つがメインだもんな。商売の幅を広げるべく、マイカはファルディス家との共同で薬品関連事業にも参加したいのだろう。だが、対価は頂くとするか。


「その代わりと言ってはなんだが、香辛料や宝石等の値段を少し下げて提供して欲しい。ファルディス家は第1皇女殿下と親しくしている。彼女の職人達に任せれば、数倍の価値にしてくれるだろうからね」


「‥‥ふむ、悪くはありませんな。マヤは昔から人材育成と鑑定眼は得意としていたし。芸術関連事業の状況を見ても右肩上がりや。分かったで、ほんなら父様に話をしてみますわ」


何とか上手くいきそうだ。でも、あれ? マイカは、皇女殿下をマヤって呼び捨てにしなかったか? 昔からって言ってるから、もしかすると。


「なあ、マイカは天命人なのか? 最初会った時も前世とか異世界とか言ってたし。こうも簡単に化粧品や香水を作り出せる事が出来たのは、そのおかげじゃないのかな?」


「うわあ、うちもヘマしてますな。ルーとは隠し事無しにしたいから、言いますけど。うちも天命人やで。そして、ユウキとユイも知っている人や思うわ。ユイとマヤは学校の同級生やったし、ユウキはうちの先生やな。今となっては懐かしい思い出やわ」


驚いたな、ユウキ達とマイカに接点があったなんて。これはもしかしたら使えるかもしれない。カレンさんからは、『ユウキ達とは戦わない方が良い』と助言をもらった。彼女に仲介してもらって、何とか協調出来るよう努力した方が良いな。


‥‥さて、ファルディス家は大丈夫かな? 交渉決裂して屋敷が更地になってなければ良いけど。


次回、勅命による盗賊討伐へ。

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