幕間3 神帝、愛の説教部屋
お待たせしました。幕間追加です。アルゼナ視点の話。
先程までユウキ君と話をしていた場所から転移させられたのは、神帝様が作った神様専用お仕置き部屋だった。血のついた三角木馬とか、棘付き鞭とか蝋燭とか怖すぎなんですけど!!
「ぐぬぬっ、神帝様めえ! 早くここから出して欲しいんですけどおお!! つうか神様が椅子に座らされ、拘束具付けられて拘束って絵面はやばくない!? 」
私の声が聞こえたのか、霧が晴れて神帝様の姿が現れる。えっ、なんつう格好してるんですか!? なんでゴ〇ラの着ぐるみ着てるんだよ。そのまま神帝様は歌を歌いながら私に近付いてくる。
なに? 神帝様、疲れすぎて遂に壊れたか。あるいはヤバい薬でも使っちゃった?
「わしは神帝、偉い神~~。なのに、最近忙しい! なんでじゃろ~~? なんでじゃろ~~? 諸悪の根源の1人を発見! ええいやっ!!」
「おがっ!!」
鈍い音がして、私の頭から血が流れ出す。あのお、視界が真っ赤って結構やばくね? ドラ〇エとかの瀕死状態になってますやん。皆も画面が真っ赤になった時は回復を優先しようね。
あっ、なんか白いのも流れてきた。ヌルッとして、温かいんだから! ‥‥って、ギャグしてる場合じゃない! やべえよ、脳ミソが出てるやん。早く治さなきゃ、死ぬ、死ぬう!! 私は回復魔法をかけて、何とか傷を治すや神帝様に怒鳴り散らす。
「じじいいい、私を殺す気かあ!! なんだ、その鈍器は? 元ネタのお笑い怪獣が使用してたのは、ピコピコハンマーだろうがあ!」
いかん、あまりの痛さに神帝様を爺呼びしてしまった。頭に激痛をもたらしたハンマーを調べると『神滅殺懲罰?ハンマー』とあるな。ガチで殺しにきてんじゃん、私が何をやったああ!
「ピコピコハンマー程度では、貴様らに効かんでは無いか。わし、最近寝不足じゃし疲れ気味じゃからのう。アルゼナにオードル、ラーナが人物囲い込みに熱中し、他の神々から苦情が来ておる。それの苦情処理に困っとるんじゃが、言い訳あるか?」
神帝様が、いつの間にかクレーム対応係になってる件。私に向かって何で苦情を言わない? なにこれ、いじめ? いじめなの。よおし、あいつらがその気なら私にも考えがある。でも、その前に‥‥。
「ええ! 私よりオードルの馬鹿と生真面目ラーナを叱って下さい。奴等の青田買いの方がエグいですよ。勧誘方法が詐欺じみてますし、宗教で強引に誘うしで。お前ら、神様じゃなくて詐欺師じゃんって言いたくなりますが」
オードルは、邪神印の薬を飲めばランクが倍増になるとかやってたな。あと『邪神の壺を買えば幸運になる』って、言って冒険者に売ってた。でも、冒険者や魔族から苦情が殺到。結果、詐欺がばれて暗黒神に大目玉くらったけど。
ラーナの方もひどいな。ラーナじゃなくて、枢機卿が聖国に来れば全ての罪が許されるとか言ってランクA犯罪者を引き込みしてた。あとは免罪符とか言って、罪が許される紙を作って売ったりしたな。あまりに酷いんでラーナが直々に首を飛ばしたっけ?
私はそんな事はしてないんだけどなあ。まあ、時折からかったりはするけど常識の範疇内で済ませてるよ。人の人生を破壊するまではしない。
ユウキ君? 彼は大丈夫さ。ミズキちゃんとマヤちゃん達との対立とかも乗り越えるだろう。これから彼はもっと大変な事になるしね。ここでつまずいてたら駄目だよ!
「‥‥分からぬか。神の中でも最強の貴様を懲罰する事で、奴等に牽制しているのだ。現に、ラーナからは『無闇な異世界人の引き込みは止めます』と慌てて連絡がきたぞ」
私は見せしめの道具じゃないい! しかし、ラーナのヘタレめ。教皇と2人で、裏でこそこそ動いてたくせにばれてやんの。とはいえ、罰を私しか受けないなんて腹立つわ。
「ちいぃぃ!! あの性悪女が。神帝様ににらまれたら、尻尾まいて降参かよ。しかし、オードルの方はどうなります。あの変態、私の信者に手をだしたんですが?」
「オードルか? 奴なら安心せよ。比喩抜きで首が飛びそうじゃから。さすがの暗黒神も堪忍袋の尾が切れる寸前らしい。あと1回ヘマをしたら命の危機じゃのう」
「そうなのですか? 私に負けっぱなしなのは、魔族的にまずかったみたいですね。まあ、私は勝ちを譲る気は全くありませんでしたが」
そうか、あのオードル君が死ぬのか。面白かったけどなあ、彼の計画ぶっ潰すの。おっさんのくせにすぐ涙目になるし。
「それはそうと、アルゼナ。しばらくは謹慎しておれ。説教したうえに、謹慎させられたと知れば他の神々も強引な信者集めはすまい」
「はあ、分かりましたよ。ところでオードルといい、ラーナといい、ユウキ君に女を近付ける。あるいは仲間に引き込もうとする件はどうなさいます? 奴等、あの手この手で彼を狙ってるんですが」
正直、ウザいから止めてもらいたいんだけど。奴等、飢えたハイエナ張りにしつこいんだから。神帝様にガツンと叱ってもらうかなあ。
「その事だが‥‥。未来視で観察したところ、アルゼナを謹慎している間に2人が動くと出た。貴様が歴史の特異点を独占するのが不満らしいからの」
「じゃあ、出してください! 折角の大口信者を彼らに盗られたくないので。彼らは私の力で異世界転生したんです。ならば、私に優先権はあるはず!」
「駄目じゃ! 最近の貴様が調子に乗っていたのは事実。近々、ユウキ達は戦争に巻き込まれる。それが済むまでは謹慎せよ。断るのなら‥‥」
えっ? いったい何するんですか、神帝様。なんかでかいハンマーを巨人が持って来たんですけど。巨人ですら持っただけでバテてますが。それは?
「ふむ、これを使うしかあるまいな。いくぞ! ゴ〇ディオ〇ハン〇ー!!」
「待てええい!! この爺、私を殺す気だよ! 私はまだ光になりたくないんですが!? 分かった、分かりましたよ。謹慎すればいいんでしょう」
危うく存在自体を消されるところだった。何気にキレると怖いんだよな、神帝様は。ぬう、となればユウキ君の信心にかけるしか無いか。もし、ラーナの奴に尻尾を振ったら許さないからね!
「まあ、心配は無いだろう。ユウキはなかなか芯が強い。そう簡単にはなびくまいて。さて、そろそろ行くか。アルゼナよ、拘束は外す故に謹慎をしっかりしておれ。ユウキと接触する事で、オードルとラーナがどうなるか。わしも少し楽しみじゃわい」
「彼が動くと歴史が活発に動くからね。まるでかつての傭兵王みたいに。これを言うと、本人は絶対に嫌がるだろうけどさ。まっ、こっからのんびり見ていようか。さあ、私を楽しませてみてユウキ君」
次回、ユイ対ミズキの対決。




