第34話 アルゼナのアドバイス?後編
お待たせしました。
「次はユイちゃんか。あの娘は君に対する想いが強い。君がピンチなら、たとえ大軍をも突破して助ける位にね。君が前世で彼女にした事は、それだけ大きいんだと思うよ」
確かにユイはそんな所がある。両親がネグレクト気味だったからか、食事や洗濯等の家事全般と勉強を教えたりもした。結果、ユイは俺に強く依存するようになってしまう。俺が彼女『怨敵』と婚約した時は、荒れに荒れたからな。怒って、1ヶ月近く会わなくなってしまったし。
「そんなユイちゃんなのに、必死にアピールしてたのに、鉄の意思を持ったユウキ君は全く答えてくれません。‥‥あのさあ、抱いてって好きな女性が言って来たら、受け止めるのが男の甲斐性じゃね?」
「先生と教え子だぞ! こっちなら合法でも、向こうじゃ大問題なんだよ!!」
「‥‥建前はいらないんだよなあ。君も好きだったんだろ、ユイちゃんを。だけど、あえて君は身を引いた。確かに同年代の男子と付き合う方が上手く行きそうだしね。ただ、君はユイちゃんの想いの重さと強さをなめてたね」
全てを見透かす神の相手は骨が折れるな。ああそうだよ。ユイを妹のように可愛がってたら、いつの間にか女性として見ていたよ。
「それを断ち切るべく、俺は彼女と結婚しようとしたんだ。結果は見るも無残な状態だったがな」
日頃の行いを神様は見ているのか、俺の結婚は見事に失敗した。‥‥まさか、アルゼナの仕業ではあるまいな?
「良かったじゃん、今回は上手く結ばれそうで。ユイちゃん、修学旅行先で君に夜這いしようとしていたからね。黒の勝負下着に媚薬まで買って、本気モード全開だったし」
「待てい! かなり計画的犯行じゃないか。ユイの奴、そこまでしようとしていたのかよ!」
以前から部屋にパジャマ姿で遊びにきたり、体をわざと密着させたりしていたからな。スキンシップがエスカレートしてきたのは気付いていたが、その先も狙ってたんかい!
「全ては君の為だね。自分の体で婚約者を忘れさせようと考えたらしい。まっ、そんな彼女だけど裏社会の連中に狙われている。殺した奴等は人間のクズが多いけど、ボスの身内とかいたからね。ユイちゃんに復讐すべく、動き出している。だから、早めにマヤちゃんの離宮に避難した方が良い」
やはり恨みを買っているよな。いくら、悪党だからって家族はいる。復讐考えてもおかしくはないか。ただ、やってる悪行を鑑みると逆恨みじゃないかと思うけど。
「最期にミューズちゃんだね。ふっふっふ、今、この瞬間に前世の記憶の封印を解除しておく。前世の彼女の名前は秋月瑞希って言うんだけど。幼なじみで同級生のユウキ君は、もちろん知っているよね?」
「う、嘘だろ! ミューズさんが瑞希だって言うのか!! 何年も前に亡くなった幼なじみの」
これはアルゼナによる作為的な運命の結果なのだろうか? それくらい、俺にとって都合が良すぎる。かつて好きだった幼なじみが恋人として一緒に暮らしているのだから。
「ちなみに彼女は、君に会えるような転生にしておいたよ。その際、あえて記憶は消させてもらったけどね。もし、記憶を持ったままだったら、世をはかなんで自殺しそうだったし。君に申し訳ないと自責の念を強く持っていたからね。‥‥死ぬ間際まで君の名前を呼んでいたから」
「‥‥瑞希のせいじゃないってのに。毎年墓参りは欠かさず行っていたんだ。アジサイの花が好きで、よく一緒に育てていたな。バレンタインのチョコレート、砂糖と塩を間違えて悶絶したら必死に謝って‥‥うぐっ」
気付けば涙が止まらなくなっていた。瑞希とまた会えるとは思わなかったからな。こんなに嬉しい事はない。しかし、だとしたらまずいな。マヤやユイに師匠がどう動くか全く読めないぞ。特にユイだな。ミズキを好きだった事をよく知ってるし。
「男泣きしてるところ悪いけど、ミューズちゃんは暗黒教団に狙われてる。だから離宮に行った方が安心だよ。また彼女を失いたくはないだろう?」
あいつらまだ諦めないのか。あまり関わりあいにはなりたくないが、火の粉がかかってくるなら応じるしかないな。となれば、マヤの説得は必要か。
「っつ、そうだな。マヤが認めてくれればの話だが、提案はしてみるよ。アルゼナ様、ありがとう」
「う~~ん、その事だけどさ。実はこの会話、4人に筒抜けなんだよね。それぞれの夢につなげてんの。さあ、明日の朝は修羅場開幕だよ。楽しみだなあ」
「な、何してくれとんねん。このアマああ!! 女子4名による喧嘩沙汰確定じゃないかああ!」
‥‥駄目だ、この駄女神。早くなんとかしないと。俺の命がいくつあっても足りやしない。処す? 処しちゃうか? 神殺しをするとなるとまずいから、神帝とやらに報告して処断‥‥。
「ちょっと! 何ヤバい事考えてるの!? 駄目だからね、神帝様に報告するのは。お仕置き受けるの、かなりきついんだから!」
「知らんがな。たまには理不尽な目にあうのもいいだろう? さて、アルゼナからもらった巻物で神帝様への通信方法を‥‥」
「や、やめて! そ、そんな事したら君を殺すよ? それに神帝様は忙しくて‥‥」
「その必要はないのう、若人よ。いつもアルゼナが迷惑をかけてすまぬな。これからわしが罰を与えるゆえ」
驚いてよく見てみれば、いつの間にかアルゼナの頭をわしづかみにしている白髭のおじいさんがいた。見事なカイゼル髭に眼光鋭い青い瞳、マルシアス様や皇帝陛下並に怖いな。かなり怒っている様子で、それを感じ取った駄女神は震えている。アルゼナさんや、総身汗まみれで足凄く震えてますやん。
「ひっ! こ、これはアレクサンド様。いえね、私は彼に助言を与えただけでして‥‥みぎゃああ!!」
おお、手から電撃が発言してアルゼナが感電してる。全身の骨まで見える仕様って、漫画的表現だなあ。
「このたわけが!! これまでの行動記録を見れば、貴様が愉快犯的犯行を繰り返していたは明白。これより、貴様はお仕置き部屋に連行じゃ」
「い、嫌ああ。あそこは嫌ああ!! 駄目なの、精神壊れちゃうのおお。だから‥‥あっ」
神帝の手で捕まれていたアルゼナの姿が消えた。あの駄女神がトラウマ抱える部屋って、相当なもんだな。さて、今度は神帝様との話か? 最近偉すぎる方々との会話多過ぎて、精神面が限界なんだけどな!
次回、神帝との会話。




