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転生しても受難の日々  作者: 流星明
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第27話 皇帝との謁見へ

お待たせしました。

「バージニル帝国の守護者にして、頂点に君臨せし強者。偉大なる皇帝アルゴス=ヴァンクリーブ陛下より、ファルディス家に命じる。ラング=ファルディスの件及び暗黒教団の事件に関して、陛下が裁く事とあいなった。ついては、マルシアス=ファルディスとアイラ=ファルディス。更にユウキ=ファルディスにユイ=リンパード、ミューズ=アルセは速やかにエルバンス城へ向かわれよ!」


莫大な貯金を失った翌日、俺達の下へ皇帝の使者がやって来て、エルバンス城への召喚命令を読み上げられた。皇帝直々の呼び出しだ、受ける以外の選択肢は無い。馬車に俺と師匠、ミューズさんとマルシアス様が乗り込み、ケビンさん達とユイが護衛として付き従う。


城門に到着した俺達は近衛兵に付き添われ、謁見の間へと向かう。初めて来る俺達は緊張していたが、マルシアス様は少しも動じず堂々と歩いていた。さすがの貫禄恐れ入ります。


「初めてエルバンス城に来ましたが、素晴らしい調度品の数々ですね。庭園も綺麗に整備されていますし、さすがは皇帝陛下の住まう場所です」


「エルバンス城の調度品の約半分は我々が異国より運んできたものだ。わしとしては、見た事のある物ばかりといった所だがな。何度も来たことがあるから緊張なんぞせんわい」


「私が運んできた品物もあるからな。美術品の搬入作業で何度も来た事がある。あそこにある壺、東方の大国から運ばれたんだが、帝国の最東端まで取りに行くのは大変だったぞ」


ファルディス家の面々の経験値が違いすぎて何も言えねえ。俺はこんな所、頻繁に出入り出来る根性無いです。どうやら、ユイも同じのようだな。さっきからため息ばかりついてるし。よく見ればミューズさんも駄目そう。


「‥‥はあ、場違い感半端無いんだけどな。前世で言うなら皇居に呼び出されたのと同じだし、かなり緊張するんですけど」


「わ、私もです。貴族の娘とはいえ、教会育ちなので。うぅ、逆賊の娘でもありますから何を言われるのか不安です」


不安や緊張、恐れを抱いているのは俺だけじゃないようだ。しかし、俺はそれを出す訳にはいかないな。俺は男なんだ。たとえ、尻に敷かれまくってようと強さは彼女達が勝ってようと泣き言は言わぬ! ‥‥影でこっそり泣くけどね。そこは許して欲しい。


「ほう、これはこれはマルシアス様ではありませんか。この度は愚かなるラング殿のおかげで暗黒教団を倒す事が出来ました。彼が人の役に立つとは思いませんでしたがね」


皮肉過多な発言をしてきたのは、ナルシス=ウィルゲム卿だ。どうやら、謁見の間門前の警備をしているようだな。ファルディス家当主に対してあまりな発言だが、気持ちは分からなくも無い。なにせ、うちの馬鹿ラングは彼の恋人たる占術師カレンを傷つけた輩の筆頭なんだから。もし、師匠達に手を出す馬鹿がいたら俺も容赦無く叩き潰すし。


「‥‥申し訳ありませぬ、ウィルゲム卿。貴方の恋人に馬鹿孫が大変な迷惑をかけたようだ。この通り深くお詫び致す」


率直に謝るマルシアス様も大したものだ。もちろん、そうしないといけない理由はある。占術師カレンは帝都でも随一を誇る占い師だ。その影響力は皇族、貴族はもとより、商人や庶民に騎士階級にも絶大である。そんな彼女を敵にまわすなんてとんでもないと言うわけだ。


「ウィルゲム卿、マルシアス様もこの通り頭を下げました。これで手打ちにしてくれませんか? これ以上の非難の応酬は、双方にとってまずいと考えますが」


とはいえ、ここでウィルゲム卿にも折れてもらわないと困る。皇帝としても部下が帝国で1、2を争う商会と喧嘩続行だと気が気でないだろうし。


「‥‥分かりました、カレンの傷も治った事ですしね。見舞金や品物もかなり頂きましたし、今回の件は水に流しましょう。では、こちらへどうぞ。皇帝陛下がお待ちです」


何とか謝罪を受け入れたウィルゲム卿に続き、俺達は謁見の間の奥へと向かう。そこではブレスク伯爵の息子が裁定結果を聞いている所であった。彼は確か領地にいたはずだが、何らかの行動をしていたのかな?


「こたびの事件において、貴様も関与している事が分かった。あろう事か帝都に兵を入れようとは言語道断! よって、死罪を申し付ける。なお、斬首ではなく、生きたまま火炙りの刑に処す。衛兵、連れてゆけい!」


皇帝陛下ではなく、宰相が裁定結果を読み上げてる。うん、正しいと思う。だって、陛下は青筋立ててキレる一歩手前なんだもん。


「へ、陛下、お待ち下さい。我々は暗黒教団の中に入り、あえて味方として演じていました。帝国に弓引く気など‥‥」


「愚か者があああ!! 余も見くびられたものよな、このような程度の低い詭弁に付き合わされようとは。衛兵! とっとと、この人間の顔をした悪魔を連れてゆけ!!」


「へ、陛下あああ! なにとぞ、なにとぞご慈悲をおお!! 火あぶりは嫌‥‥ぐはっ」


「やかましい! さっさと行くのだ。次の方が待っておられるのだからな」


あっ、キレた衛兵のおっさんが当て身で気絶させた。ミューズさんの異母兄にあたる人だが、反乱してのこの醜態は情けなさすぎる。彼女を見れば、深々とため息ついてるし。


だが、怒れる皇帝の怒号は凄まじい迫力だったな。さすが斜陽の帝国を再建させた男の威風だ。なにより、マヤの父親でもあるからなあ。娘さんと付き合ってますって言ったら、くびり殺されそう。あの怒号くらって失禁したらどうしよう?


「皇帝陛下、ファルディス家の方々がおこしになりました。また件のミューズ=アルセとユイ=リンパードも同道しております」


ウィルゲム卿がひざまずいて告げるのを見て、マルシアス様と師匠もひざまずいた。慌てた庶民代表の3人たる俺達もひざまずく。‥‥こんな場所、慣れてないから仕方ないだろ! 一般の日本人で皇族、王族に会う機会なんてないし。


「ほう、マヤと共に暗黒教団相手に大立ち回りを演じた者達か。ファルディス家の娘に天命人、下位神ラミアナーガとなった反逆者の娘とは面白い取り合わせよな。ふむ、初めての者もいるし自己紹介をするとしよう」


そう言って、皇帝陛下は大きく深呼吸をする。えっ、なんで全員耳ふさぐの? マルシアス様や師匠まで耳を両手でふさいでるし。してないの俺とユイにミューズさんだけ?


「余がバージニル帝国皇帝、アルゴス=ヴァンクリーブであああるっ!!!」


「どこの〇塾塾長だ、貴方はあああ!!」


‥‥いかん、ついうっかり突っ込んでしまった。大丈夫かな、俺?




次回、ラングの裁きとユウキの処遇の発表。

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