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転生しても受難の日々  作者: 流星明
暗黒教団騒動
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ルー立志伝 4 占術師カレン

お待たせしました。

ユウキがブレスク伯爵に捕らわれ、アイラ叔母さん達による強烈な攻撃を受けた暗黒教団は滅んでしまった。どういう状況なの!? ユウキは謝罪行脚しただけなのに、なんでこんな大事になってるんだよ。


「私もケビン隊長の話を聞いて驚いたわね。ブレスク伯爵が暗黒教団と結託して帝都で反乱を起こそうとしていたらしいし。まあ、私達には出来る事は無いわ。ユウキ様が行けなかった占術師カレンの所に行きましょう」


僕とマリー姉さんは、ユウキが行方不明の間も貴族や商家等への謝罪行脚を続けていた。ラング兄さん、どれだけ迷惑をかけてるんだよ! 数が半端ないんだけど!? それよりももう1人の娘は大丈夫かな? 馬車の向かい席で疲れきって座っている少女に声をかける。


ピンク色の髪と尖った耳が印象的なミル。確かに将来は美人になりそうだ。だからって、ラング兄さんの所業はゆるされないけど。


「ミルさん、疲れていないか? すまないな、ラング兄さんの奴隷にされていた君まで巻き込んでしまって」


「あっ! すいません、ルー様。私も仲間でしたから責任はありますし、気になさらないで下さい」


‥‥本当に良い娘だよな。ラング兄さんも酷い事をする。奴隷から解放して、住んでいた所に帰そうと考えていたんだけどな。調べてもらったら、ゴブリン達の巣は討伐されて母親たるシスターは亡くなっていたらしい。何度もゴブリンの苗床にされた彼女は、老いさらばえた姿で見つかったそうだ。そんな残酷な事実を知らせる勇気も無い僕は彼女を引き取る事にした。


ただ悲劇を先伸ばしにしただけかもしれない。でも、ミルさんが立ち直るきっかけになって欲しいと虫の良い事を考えている。


「ルー様、占術師カレンの店に到着致しました」


「ご苦労様、しばらくここで待機していてくれ。マリー姉さんとミルは付いてきて」


御者に礼を言って、僕達は店のドアをノックする。しばらくして出て来たのは、店の主でもあるカレン=ウィルゲムさんだ。切れ長の黒い瞳に栗毛の髪。占術師用の黒いローブを着こなす肢体はすごいな。マリー姉さんと同じ位の‥‥いだだっ! マリー姉さん、なんで足を思い切り踏みつけるの!?


「こんにちは、僕はルー=ファルディスと申します。この度は兄であるラングの仲間が貴方に対して乱暴狼藉を働いてしまいました。まことに‥‥」


強い視線を感じて頭を上げると、カレンさんが僕をまじまじと見ていた。しばらく考えていた彼女が、突然僕の右手をつかむ。驚いているマリー姉さんとミルさんを尻目に、カレンさんは動き出す。


「! ちょっとこちらに来て下さい。ルー様」


「えっ!?」


いきなり右手をつかまえられた僕は、カレンさんに奥の部屋へと連れていかれる。そこは占いで使われる部屋のようだ。夜に輝く星空が天井に描かれ、内装も濃い青色で統一されている。カーテンも閉められた部屋は薄暗いけど、テーブルに置いてある蝋燭(ろうそく)の灯りが部屋を照らしていた。


カレンさんは、テーブルの前にある椅子を指し示す。


「そちらにお座り下さい。ルー様、貴方は変わった星の下に生まれていますね。人ではない女性との結縁が見受けられます。まずは‥‥サキュバスのマリー様。そして、ゴブリンと人のハーフたるミル様。あとは魔族の女性との縁が見えますね。どうやら、正妻となる女性のようですが」


「ちょっと待って下さい! マリー姉さんはともかくミルさんも? しかも、魔族の女性と結婚だなんて」


かなりの確率で当たると噂のカレンさんの占いだ。間違いないのだろうけど、結婚相手まで分かるの!? あっ、2人も聞いていたみたい。マリー姉さん嬉しそうだ。ミルさんは‥‥あれ? なんか顔が真っ赤になって目が潤んでいる。まさか、僕の奥さん候補に確定した!?


「会うべくして会ったというのが私の鑑定結果です。ルー様、貴方はその‥‥精力絶倫スキルをお持ちです。貴方のライバルたるユウキ様もお持ちのようですが、対象が違いますわ。ユウキ様は天命人及び神の加護持ちが対象で、ルー様は闇の者達が対象です。効果は絶大で、側にいるだけで発情するレベル。ちなみにですが、現在ミル様が疲れているのはご自身で夜な夜な‥‥」


「か、カレン様止めて下さい! 人の秘密をばらさないでえ!!」


「‥‥やはり、そうでしたか。部屋から女特有の香りが漂ってましたし、ミル本人からも匂いが出ています。女性としての成長が早いのは、ゴブリンの血の特性が出ていますね。1年位でかなりの成長を見せるかと」


「ひっ!」


マリー姉さん、淡々と説明しないで。怖い目で彼女を値踏みしてるせいか、ミルさんが怯えているから。ミルが僕の事を好きだなんて驚いたな。会ってまだ何日も立ってないのにおかしくない?


「ルー様は、マリー様とミル様にとって依存性のある麻薬のような物。1度味わえば2度と離れられません。もし、無理に離そうとする輩がいれば相応の報いを受けるでしょう。ふむ、多くの死体が折り重なる未来がみえますね」


「怖い事を言わないで! カレンさん、ラング兄さんの事で怒ってるからそんな事を言うんでしょ? 冗談だって言って下さい」


「私の占いは外れません、特に個人においては。ラングの転落も見えていましたわ。これから彼は急な坂を転がるように堕ちていきます。一緒になって転がり落ちるかは、ルー様次第ですね。更に鑑定を聞きたいのなら、金貨500枚を支払って下さい」


右手を出して、お金を寄越すよう手を動かすカレンさん。こういう所は、やり手の占い師だよな。鑑定料には高すぎる気もするけど、慰謝料を含めると妥当な額かな? 僕は持って来た慰謝料の金貨300枚と、自分のお金である金貨200枚を魔法の袋から出してテーブルに置いて渡す。‥‥マリー姉さんには、しばらくデートや贈り物は我慢してもらおう。未来を知る方が重要だし。


「お支払いありがとうございます。まさか、全額支払って下さるとは‥‥。もらえて金貨300枚が限度と思ってましたから。では、鑑定の続きですね。まず、ユウキ様とは戦わないように。彼の戦力はこれからも増える一方です。ルー様では敵うレベルじゃありませんので、共存の道を選びましょう」


「なんか男としては悔しいけど、分かったよ。マリー姉さんとミルを守る方を優先する」


「あとロウ様やご両親とは距離を離してお付き合い下さい。近い所にいると陰謀等に巻き込まれますよ。選択を誤れば、マリーさんとミルさんの2人とは2度と会えない場所に島流しされそうです。海岸で1人、涙を流して黄昏ている貴方の姿が見えました」


待ってええ! そんな未来は絶対に阻止だよ、断固阻止!! ミルさんもだけど、特にマリー姉さんに会えないなんて辛すぎるから。でも、陰謀ってなんだろう? 今のところはファルディス家での問題は、ラング兄さんとリア姉さんの素行だよな? これ以上の事が何か起こるのか?


「これ以上の事は見えません。ただ、ファルディス家は激動の時を迎えるのは間違い無いかと思われます。ルー様に置かれましては、その時までに頼りになる味方を増やす事を提案しますわ。いかにユウキ様とはいえ、強力な手札を何枚も持った人物を無下にはしないでしょうから。あとは‥‥ラングを潰して下さいね。惨たらしく惨めな状態で。ルー様なら何とか出来ますわ」


ラング兄さんを潰すか。確かに害をもたらす存在になり下がってるからな。まあ、出来たらの範囲で実行しよう。頼りになる味方ね‥‥。今はマリー姉さんとその弟子達しか頼れる人がいない。僕自身の取り巻き連中は役に立たないな。土壇場で主を置いて逃げたんだ。あのあと、謝ってきたけどとても信用ならない。となると、ミルは?


「ミル、誰か知っている人はいないかな? 僕に力を貸してくれそうな人を探してるんだけど」


「ええと、そういえば昔お母さんが話をしてくれました。『お金大好きだけど聖職者をしている親友がいる』って。何でもアルゼナ様の教会で神官長をなさっているらしいですが」


「それって、ブレスク伯爵の元妾の方ですね。今は会うのは難しいでしょう。ブレスク伯爵家は取り潰され、連座する危険もありますし。とりあえずは、地道に仕事をこなしましょう。人脈も功績も一朝一夕では作る事は出来ませんし」


マリー姉さんの言うとおりだな。まずは自分の支持者を増やすとしよう。しかも、カレンさんが言うには大きな嵐が吹き荒れるらしいし。ユウキの活躍は腹立たしいけど、僕も負けてられない。目の前にある仕事を1つずつ済ませていこう。












次回、ユウキによる大散財!

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