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転生しても受難の日々  作者: 流星明
教え子2人との再会
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第17話 帝国8騎士の実力

ナルソス=ウィルゲムと名乗った男は、剣を腰の鞘から抜くや大上段に構える。‥‥8騎士か。以前、この世界において強さのランクはA~Eまでだと言ったと思う。


だが、それはあくまで並の人間だけの話。時に人間でも神に近い力を持つ者が現れる。彼らには、畏敬の念を込めてSランクという最強のランクが与えられるのだ。大陸各国はSランク持ちを優遇し、更なる人材発掘に余念がない。


何が言いたいかって?  帝国8騎士に選ばれるのは、Sランクが最低条件。そう。今、目の前にいるのは人外の1人なんだよ! やばいな、弥生。軽くミンチにされそう。


「あっはっはっは! わざわざ帝国8騎士の1人が私を倒しに来る。それだけ、私が怖いということね。愉快、痛快の極みだわ。さあ、ナルソスとか言ったっけ? 私の可愛い愛刀の力、見せてあげる」


そう言って、弥生が刀を掲げる。黒い瘴気が刀から立ち昇り、倒れていた人々に吸収されていく。肉体が小刻みに震え始めた後、突然立ち上がると彼等は一斉にこちらを向いた。


死体の目玉や肉等が落ち始め、骨が見える程に崩れていく。たちまち腐臭が部屋にたちこめ、あまりの臭いに師匠やユイは鼻を押さえていた。彼らはゾンビになって復活し、弥生の下僕となったらしい。おい、リアルバイ〇ハ〇ードは勘弁してくれ!


「ウウッ、肉。肉クレ」


「アアアアッ、コロス! コロス!」


「ほおう、どんな手品を見せてくれるかと期待していたが残念だ。僕の知り合いには、これ以上の化け物を使役するトンデモ皇女がいる。ふん、興が削がれたな。弥生とやら、さっさと終わらせてやる」


「なんですってえ! あんた、楽に死なせないわよ」


いつの間にか弥生対ナルソスの展開になったな。あと、トンデモ皇女はマヤさんで確定。ドラゴンガードを呼べる皇女が複数いる訳無いからな。それはそうと、どさくさに紛れて体を這って逃げようとするラングを発見。


なので、彼に近付くと弥生に斬られた方の腕を足で思い切り踏みつける。こいつ、この期に及んで逃げきれると思ったのか?


「ぎゃあああ、止めろ! お、俺を殺す気か?」


「答えはイエスだな。と言っても、8騎士様の登場でどうなるかは分からないが。なんにせよ、ラング。君が死体になるのは確定。あとは早いか遅いかだけだけさ。今のうちに介錯してやろうか?」


「そ、それは嫌だああ! 助けてええ!!」


この状況でおとがめ無しなんてある訳無いだろ。おそらくだが、ファルディス家に対するカードとして皇帝はラングを捕まえたいのかな? そうじゃなければこんな貧民街に近い宿屋へ、わざわざ8騎士が来るわけがない。


普通だったら、帝都防衛隊辺りが店ごと破壊して終わりだからな。ウグイス亭は要注意冒険者の定宿だからか、前々から潰すべく当局が動こうとしていたらしいし。


「おい、そこの。確か、ユウキ=ファルディスだったな。馬鹿を勝手に殺してもらっては困る。なにせ、そいつらの苦情は宮廷にまで殺到しているからな。今までならファルディス家の名で黙らせる事が出来ただろう。しかし、占術師カレンにまで乱暴したとあっては許さん。‥‥覚悟しろよ、くそ女が!」


「ああ、あのいけすかない女ね。私の刀を見て、『災いが降りかかる。早く捨てるべきです』とうるさかったのよ。試し斬りがてら、軽くいたぶってやったのさ。なかなか良い声で鳴いてくれたよ。さあ、あんた達はどんな声で鳴いて‥‥」


「‥‥やかましい、死ね!」


「えっ、うぃ? あああっ!!」


ナルソスの剣で、弥生は頭から体まで一刀両断。辺り一面、血が大量に飛び散った。体が見事に真っ二つだな。骨とか臓器まで綺麗に割れてるよ。ええと、妖刀黒雪は‥‥刀身が見事なまでに斬られてるなあ。あっ、ゾンビの皆さんが朽ち果てていく。妖刀の力が失われたからか、あはははっ。‥‥いや、ちょっと待って。


「あのう、ナルソス様。全く剣筋が見えなかったんですが?!」


「当然だ。僕の剣筋は神眼持ちの君であろうと看破できない位に速い。‥‥もっとも、1人だけ例外がいるがな」


「うわあ、さすが8騎士だね。剣の鋭さも威力も私より数段上だ。今は無理だけど、いつかは越えたいな」


ユイさん、貴女は見えたんですね。剣神スキルは伊達じゃないな。一方で師匠は今にも倒れそうだ。魔法使いとしては一流でも、斬った張ったの修羅場慣れはしてないし。


「師匠、大丈夫ですか。なんなら先に帰ってもいいですよ?」


「き、気にするな。この程度の修羅場どうという事はな‥‥」


「お師匠さん!? 先生から聞いていたけど、本当に深窓の令嬢って感じだね。でも、しっかり汚れ仕事にも参加する所を見れば、ただの箱入りお嬢様ではないな。これは私も仲良くなれそう」


気絶して倒れこんだ師匠の体を俺は抱き止める。やはり、刺激が強すぎたか。現代日本じゃ、画面全体モザイク確定の光景だし。俺? 俺は慣れたよ。幼い頃より、孤児院仲間の死体処理とかしてたからな。‥‥腐乱死体とかもあったから、かなり精神を鍛えられたぞ。


この有り様を見ても、おかげで少し吐き気がする位で済んでいるからな。俺は異世界の現実に慣れたんだとつくづく感じる。


それと、ユイが師匠を優しい目で見てくれているのが個人的には嬉しいな。恋敵ではあるが、友人として仲良くしてくれると本当にありがたいんだが。


「さて、ファルディス家の皆さん。ラングとやらを引き取らせてもらう。彼には色々と聞きたい事があるからな。まさか、嫌とは言わないだろう?」


鬼気迫るナルソス様に、俺とケビンさんはうなずくしかなかった。ラングは本日2度目の失禁。ユイは仕方ないと諦め、リルは悔しそうだな。


「いえ、どうぞ。煮るなり焼くなり、ご随意に。我々は我々の成すべき事をしますので」


「助けて、助けてくれよ! ユウキ、ケビン。俺はまだ‥‥ぐほっ!」


「黙れ、小僧! 貴様は私が直々に尋問してやる。さっさと来るんだな」


こうしてラングは、ナルソス様によって連行されていった。俺とケビンさんは話し合いを行い、この後の事を話し合う。2人の意見はすぐに一致し、師匠の回復を待ってから動く事になった。マルシアス様達の許可を取って速やかに行うとしよう。ラングの尻拭いをな。


























次回、ルーによる冒険者ギルド訪問。

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