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転生しても受難の日々  作者: 流星明
教え子2人との再会
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第14話 過去からの復讐(自業自得)

久々の投稿です。

「ぎゃあああ!! なんで、なんでユイ=リンパードがいるんだよ! な、何をしに来たんだ?」


‥‥のっけから、テンパっているのはラングだ。ユイを見た瞬間、壁際まで全力後退している。しかも、剣まで抜いて。異世界〇殺仕〇人となっていた立花結唯。その処遇について話し合いを行うべく、ファルディス家の皆さんに集まってもらったんだけどなあ。明らかに因縁ありまくりだよね? しかも、悪い方で。


「これは、これは。ラング一味の親分じゃねえか。私が洞窟で見つけた刀を横から盗んだ悪行許さん! しかも、私を川に落とした事も忘れちゃいねえ。その命、貰い受ける!!」


時代劇調の言い回しを使いながら、ユイは刀を抜き放つ。勧善懲悪の時代劇大好きだからなあ。しかし、ユイさん。尋常ならざる殺気出したせいで、給仕するはずの使用人達全力で逃走しちまったよ。


さしものケビンさん達も、経験した事がない殺気に顔色が悪いな。大丈夫そうなのは、幾多の修羅場をくぐってきたマルシアス様とルパート様くらいか。


あとは‥‥あれ? ルーは怯えながらも必死に耐えてるな。マリーさんは涼しい顔をして受け流しているし。よくみたら、2人は手をしっかり握ってる。類いまれな実力者にして、優しいお姉さんでもある彼女がいるから耐えてるって所か。


さて、女傑と名高い師匠もナージャ様も青ざめてるし、場を収めるとするしよう。当のラングが悲惨な事になっているからな。


「ユイ、いきなり刀を抜くものではない。見よ、彼は腰を抜かして失禁してしまった。弱い者いじめをするのは、武士たる道に外れておる。刀をしまい、まずは事情を皆に説明する事が正しいと思うが?」


「‥‥はあい、先生。そんな無理して言葉を使わなくてもいいよ。とりあえず、刀をしまうね」


殺気を収め、刀をしまうユイ。部屋の空気が弛緩し、皆がホッとするのが分かる。まずは、ユイとラングの関係について尋ねたいが、その前に‥‥。


「ラング、さっさと着替えて来い。事情を聞くにしても、それではあんまりだからな。ケビンさん、付き添いお願い出来ますか?」


今まではラング様と呼んでいたんだがな。師匠と婚約した事で、義理の叔父になったんだ。尊敬もまるで出来ない先達、容赦なく呼び捨てにさせてもらう。


「分かった。ラング様、参りましょうか」


もはや抵抗する力も無いのだろう、ラングは素直についていく。ううむ、嫌いな奴だが何かかわいそうになってきたぞ。


「ううっ、怖い。怖いよおお!!」


ケビンさんに連れられ、泣きながら去るラング。まあ、あんな殺気くらったら、歴戦の傭兵や騎士も逃げだす。失禁してしまった彼を責めるのは酷か。だが、聞き捨てならない言葉をユイは言っていたな。


「ユイ、ラングが盗んだ刀って何だ?」


「2ヶ月位前だったかな。私が故郷の村近くにある洞窟を探索していたら、宝箱の中に立派な刀が入っていたんだ。見つけて喜んで眺めていたら、彼らがやって来てね。刀を寄越せ、寄越さないと口論になってさ。しょうがないから戦いを挑んだんだよ」


「結果、刀を奪われたのか‥‥。しかし、君がおくれをとるなんて珍しい事もあるな」


間違いなく大陸でも上位に位置付けられる剣士だ。それを相手に出来るなんて、ラングの仲間って強いのか?


「あいつは正直言って、中の下位の実力だけど仲間の実力は一流だったよ。まあ、人の物に手出してくるのは人としてどうかと思うけど。長年使っていた刀が折れて満足に戦えなかったのが残念だね。あれは日常的にしてると思う、川に落とすまでの動きがやたらと手慣れていたから」


ヤバい、ラングの評価がだだ下がりだ。見れば、師匠とマルシアス様の表情が消えている。ナージャ様、ジェンナ様とロウ様は頭を抱え、ルパート様は泣きそうだ。ルーは‥‥ほくそ笑んでやがる。ライバルが自滅したから喜んでるな。はあ、自分を高める努力もしないで何考えてるんだよ。


と思ったら、隣のマリーがルーの足を踏んづけた。彼女が怖い顔でにらむと、ルーが慌てて頭を下げる。それを見た彼女はうなずいて許していた。‥‥どっちが上の立場なのか、よく分かるよなあ。主従逆転してるけど、それで良いのかい君達は?


「まずは彼の母として、ユイさんには謝罪致しますわ。その上で、お詫びとして金貨を‥‥」


「ナージャ様。そのような気遣いは無用に願います。代わりと言ってはなんですが、ファルディス邸に住まわせてもらえると嬉しい。先生とアイラさんの護衛兼ブレーキ役。何よりマヤ様の壁として役にたちますよ?」


ユイのやつ、一緒に住む気満々じゃないか。まあ、俺としても助かるぞ。マヤと師匠を止められる人材は貴重だから。悲しいけど、俺じゃ2人を止められないんだよ。


‥‥それに何より、彼女を2度と手放したくないのもある。前世では先生と生徒の関係だったから、自分の感情を自制していた。だが、今は関係無いからな。彼女を必ず幸せにしないと。


「‥‥よかろう。ユイ=リンパードを我が家の食客として認める。馬鹿孫の償いはもちろん、最近うるさくなった商売敵の抑止力として使えるからな。学院を卒業するまで居てくれて構わん。それでよいか、ナージャ?」


マルシアス様はユイの提案を認めた。彼女を手元に置いていた方が、自分達の利になると踏んだんだろう。剣士として名高いユイがいるのなら、夜中に忍び込もうとする賊や間諜も二の足を踏むのは間違いない。ナージャ様も、それが分かったのかうなずいた。


「分かりました。ユイさんはアイラの家に住みこんでもらって、護衛をお願いするわ。ところで、貴女が盗られた刀はラングが持っているのかしら?」


「いや、たぶん仲間の女侍が持っていると思います。名前は重田弥生と言って、一流の女剣豪と知られていますが金に汚い人物として有名です。おそらく、ラング様は金づるとして見られているのでしょう。当のご本人は彼女を自分の女と思っているのが悲しいところですがね」


‥‥女にだまされて金を吸われる典型的な貢ぐ君じゃないか。ラングも哀れすぎるな。とはいえ、まずは奴に事情を説明聞かないとな。その後、どうなるかは‥‥。うん、怖くて考えられない。穏便にファルディス家追放位になって欲しいがな。


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