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転生しても受難の日々  作者: 流星明
教え子2人との再会
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幕間2 ユウキの努力

「よお、ユウキ。今日も派手に飛ばされたな。どこに行ったんだ?」


ファルディス家の門前で、ケビンさんが声をかけてくる。ボルハ達との戦いから1ヶ月、俺はファルディス家に滞在していたんだ。娘であるアイラを救ってくれたお礼だと表向きは言っているが、実際は違う。


当時の師匠は人間不信に陥り、部屋から全く出てこなくなったのだ。事態の深刻さは、家族と俺以外の人間とは話をしない程である。特に男性に対する拒絶反応は強く、うかつに近づいたら死人にが出かねないからな。なんで俺は話せるかと言うと、助けてくれた恩人だかららしい。


しかし、俺も男である。ボルハ達と同じ、な。時折その時の記憶がフラッシュバックするようで、俺はテレポートで飛ばされる羽目になる。これが防衛本能のなせる技か‥‥。


「今日はミシガ湖のほとりでしたよ。確か、別荘ありましたよね?」


「またずいぶん遠くに飛ばされたな。お前は魔法を使えるから1日で帰って来れるが、普通なら歩いて2日はかかる距離だぞ」


「‥‥ふっ、慣れましたよ。この前はエレンス山の麓に飛ばされて、魔法と歩きで2日かけて帰ってきましたからね」


「‥‥国境付近の山じゃねえか。帝国は周辺諸国と仲が悪いから危なかったな。下手したら死ぬぞ?」


まだ帝国内だからいいが、外国に飛ばされるとかなり困った事になる。隣接するナルム王国とは長年敵対関係にあり、帝国人と分かればスパイ容疑で殺されかねないらしいからな。その辺は当時の師匠も考えていたのかも?


「お前も大変だな。まあ、頑張ってくれや。俺達はくそ虫のいた組織をぶっ潰すので忙しいからよ。ボルハだっけか? 情けねえ男だぜ、少し拷問しただけで知っている事を全て吐きやがったからな」


うん。尻に真っ赤に焼けた鉄の棒刺したり、足の裏に釘を何本もぶちこんだりされたら誰でも話すと思うの。しかも、最期はマルシアス様が直々に火あぶりにしてた。


『た、助けてくれええ! 悪かった、俺が悪かったよおお!!』


ボルハが炎に焼かれる中で言った最後の言葉だ。全身が炎に包まれ、のたうち回りながら奴は死んでいった。生き残った取り巻き連中もむごい死に方だったよ。生きたまま海に岩と抱き合わせで沈められてたし。それに誘われたか大群で鮫がやってきて、海面が真っ赤に染まったから確実に死んだよな。


「しかし、ケビンさん。裏社会の組織を潰して大丈夫なんですか? 彼らも盗賊ギルドの下にいるんでしょう?」


「安心しろ。盗賊ギルドとは話がついている。『我々は今回の件を全く関知していない。故に潰してくれて構わん』とな。あいつらもファルディス家と戦いたくはないから、あっさり尻尾を切ったぞ」


「そ、そうですか」


うわあ、ボルハのせいで組織潰れたよ。そう言えば、ボルハの姉とか取り巻き連中の弟妹が行方不明になってたな。先生達が青ざめていたっけ。組織かファルディス家によって、人知れず殺されたのかもしれない。あるいは奴隷にされて売られたかだが。ボルハ達の巻き添えだろうに哀れすぎるな。


「‥‥ユウキ、帰ってきたの?」


声のする方を振り向けば、不安そうに俺を見つめる当時の師匠が立っていた。どうやら心配してくれているようだ。だったら闇雲に飛ばさないで下さいと言いたいが、それは言えない。彼女にとって、ある種の発散になってるからな。禁止とかしたら、逆に精神へ更なる負荷がかかりそうだ。


「ええ、ミシガ湖のほとりに飛ばされました。何とか夕方には帰ってこれましたよ」


「家の別荘がある場所か。今回はまだ近かったわね。ねえ、ユウキ。時空魔法に興味ある? もし貴方学びたいのなら、私が教えて上げてもいいわよ」


「その心は?」


「私が飛ばしても、すぐに帰って来れるようにするためよ。テレポートまで覚えられたらいいんだけどね」


‥‥飛ばすのは前提なんですね。だが、これはチャンスかもしれないと俺は思ったんだ。出会った頃から師匠は時空魔法においては天才と名高かった。魔法学院でも上位の成績らしいから、先生としてはふさわしいだろうと。


彼女は俺をサンドバッグにして、俺は魔法を教えてもらう。周りの視線が同情とか哀れみが強いからか、嫉妬を一切されないしな! なんか泣きたくなるのは気のせいだろうか?


「分かりました。よろしくお願いします、先生」


「師匠と呼びなさい。先生は大勢いて特別感が無いわ。よろしいかしら?」


ぎこちない笑顔を浮かべる彼女を見て、だいぶ立ち直ってきていると俺は感じる。隣にいるケビンさんは少し泣きそうだ。まあ、油断は禁物。彼女の精神が回復するまでは頑張ると俺は心に決めた。


先生達からも、総土下座で頼まれてれたもんな。『治らなかったら孤児院ごと丸焼きにする』って言われたらしい。マルシアス様、恐ろしい人。


「分かりました。では、マスターアイラと呼べばいいんですね? よろしくお願いします。師匠おおおっあが!?」


杖で頭を叩かれた。素材は木ですが、かなり硬いんで地味に痛いんですけどね!


「普通に師匠と呼んで。なんか馬鹿にされてる気がする」


何故だ、この世界に流派〇方〇敗はないはずだ。まさか、彼女は転生者か? ここで神眼スキルの出番だが、当時はまだ名前と性別しか出なかったんだよな。やはり経験値を稼いでのレベル上げは必須らしかった。仕方ない、こうなったら直接聞いてみよう。


「師匠、尋ねたい事があるんですが?」


「何かしら?」


「Gガ〇ダ〇ってご存じ?」


当時の師匠は怪訝そうな顔で俺を見つめる。あれ、知らなそうだな。じゃあ、単に嫌だっただけか? あのアニメの師匠は好きなんだけどな。最後の夕日のシーンは涙無くして見られないし。


「初めて聞く単語ね? なにかの魔法なのかしら? そんな事より魔法を教えるわ。早速だけど授業するわよ」


「うわあ、淡々と返されるのもきついんですけど。分かりました。よろしくお願いします、師匠」


「ふふっ、こちらこそ。‥‥後は距離を徐々に詰めていくだけね。いずれは既成事実を重ねて、私の旦那様になってもらわないと」


最後の方は小声で聞き取れなかったが、こうして俺は師匠の下で魔法を学び始めた。3年近くファルディス家に住まわせてもらったのだから、正直ありがたかったな。師匠のおかげでテレポートまで覚えれたし、彼女の心の傷も何とか治す事が出来た。


組織は悲惨な最期だったな。全員あの世行きになったし。『ファルディス家と対立しようなんて考える奴等が居なくなった』と、マルシアス様が喜んでいた。


ファルディス家から離れる時は、師匠がかなり抵抗したが俺は意思を押し通した。ロウ様以外のガキどもが、孤児だの貧民だのとかなりうるさかったからね。後で両頬に立派な紅葉を作ったルーのみ、マリーに引きずられて謝りに来たけどな。


それはともかく、師匠と釣り合う男になるには実力を磨かないといけない。そう思って孤児院に戻ったら‥‥。


「ユウキ、帰ってきたのね。ねえ、私の部屋に来て。色々とお話しましょうよ」


そう言うなり、レムが服を脱いで女の武器を使って攻めてきた。は〇れメ〇ル並みの速さで俺が孤児院を出て、貧民街に住む事にしたのは防衛の為でもある。そこで、仕事をしながら魔法の鍛練を続けた訳だ。


しかし、1年でまたファルディス家に戻って来るとは思わなかったけどな。さて、そろそろ師匠を起こそうか。早くしないとマヤさんがやって来る。1人より2人の方が安心だよね! ‥‥そうだと思いたい。思いたいのだ、俺は!!










幕間終わり。次回マヤによる説教。

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