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転生しても受難の日々  作者: 流星明
休暇であって、休暇じゃない!
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第113話 観劇中にて

お待たせしました。

舞台の幕が上がり、演劇が始まる。最初は、とある国の王子が3女神に無理難題を押し付けられる所。それを見たユウキとアヤメは気付く。


ユウキ「おい、マヤ。これはあのトロイ戦争だろう? ギリシャ神話で有名な話だからな」


アヤメ「確か、ヘラとアテナ、アフロディーテの誰が1番美しいか。1番だと思う女神にりんごを渡すだよな。ゼウスが困って、トロイの王子に無茶振りしたらしいけど」


マヤ「ちょっと、先生方。ネタばれは止めて下さいません!? 私が必死になって書き上げたんですから。黙って最後まで見て下さい」


ユイ「‥‥レイ。トロイ戦争って歴史で習ったかな?」


レイ「覚えてないのう。とはいえ、妾はシュリーマンの伝記を読んだ事がある。だからトロイ戦争自体は知っておるぞ?」


ミズキ「トロイアやトロヤとも言うわね。今のトルコにあった国で、シュリーマンは伝説の地を発見した人物よ。もっとも、彼が見つけた遺跡はトロイ遺跡では無かったらしいけれど」


ネリス「そうなんですね。ユウキ、後で詳しく聞かせて下さい。地球のお話はとても面白いですから」


リーザ「ううっ、ネリス様。今は劇に集中して下さいませんか? 先程からユウキ様に近づき過ぎです!」


アヤメ「君は大人しい顔をしてなかなかに大胆だな。出来ればさっさと離れてくれたまえ。私としても気分が悪い」


いつの間にかネリスはユウキの右隣の席を手に入れており、皆がうらやましがっていた。ちなみに左隣はアイラが占拠している。


ネリス「‥‥はい。あの、でも私以上に近い子がいるんですが?」


リーザ、アヤメ「「‥‥どうしようもない」」


ミズキ「セネカ、いい加減に離れなさい。お姉さんも怒るわよ?」


セネカ「へえ、やっぱり美人な女性を選ぶんだ。権力と戦争の勝利も大事だと僕も思うけど。ユウキはどう思うの? ねえ、ねえ!」


ユウキ「‥‥セネカ、そろそろ自分の席に座ろうか? そのう、皆さんキレそうだよ」


マヤ、ユイ「「セネカ! ユウキの膝に乗るのは止めなさい!」」


セネカ「ええっ。だって、僕は好感度が後ろから2番目なんだよ!? ここで挽回しないでいつ挽回するの」


リーザ「‥‥止めて、これ以上傷口を広げないで」


アイラ「セネカ、それ以上言ったらリーザが死んじゃうから。だから席に戻りなさい。焦るのは分かるけれどね」


セネカ「はあい。ふむふむ、アイラさんがやはり1番落ち着いてるな。他のお姉さん方はまだまだ修行が足りなさそう。僕みたいな小娘に心乱されるなんてさ」


ユイ、マヤ、リーザ「「「ぐぬぬっ!」」」


レイ「意外に怖い者知らずじゃのう、このちびっこ勇者は。むっ? 王子が隣国の王妃を奪っていきおったぞ。ほほう、これは修羅場発生じゃなあ」


舞台では宴の席で王子が隣国の王妃を奪うシーンが演じられた。観客はその様子を見て呆れていたり、歓声を上げたりと様々だ。


リーザ「あ、あり得ません! 下手をしたら戦争になりますよ!?」


ネリス「‥‥最悪過ぎます。宴の最中に誘拐だなんて。明らかな敵対行為ですね」


ユウキ「これから戦いになるんだよ。しかし、今日は客の数が凄いな。最初の挨拶回りで苦労したし」


マヤ「演劇を楽しむ方以上に、我々と繋がりたいと思う連中が多いんですよ。まっ、お客様として来るなら歓迎しますけれど」


レイ「ふん! ゴルディフ公爵家とリーキッド元侯爵が倒れて、慌てた連中が顔繋ぎに来ただけじゃて。何かあった時にすぐ離れていきそうな輩じゃ。あまり親しくするべきではないの」


ネリス「本当に面倒くさいです。今まで見向きもしなかった癖に、急に尻尾を振りだすんですから。セネカはその辺の扱いが私以上に上手で助かるわ」


セネカ「ネリスお姉ちゃんの為なら頑張るさ。おっ、いよいよ戦いのシーンだね。迫力あるなあ。でもトロイの城壁で攻めあぐねてるし、英雄が討ち取られたね。ギリシャ軍の危機だ」


ユウキ「なかなかに見応えがあるし、役者の演技もかなり洗練されている。音楽も悪くない。さすが、マヤとアイラだな」


マヤ「当然よ! この為にどれだけの時間を劇団と向き合ったか。政治に関与出来ない以上、私は文化芸能に力を注いでいる。結果、力を得ているんだから皇族連中の青い顔が目に浮かぶわね」


アイラ「ありがとう、ユウキ。そういえば、今日は皇族方はいらっしゃっていませんね。相手の勢力を越えようとするのなら、マヤ様に力添えを頼んで来るはず。私の実家にも援助依頼が来ていますし、どうかお気をつけて」


ネリス「私の家にも第2皇子がいますが、よくお母様と話し合いをしていますね。最後は第2皇妃とつかみあいの喧嘩になっていますが」


レイ「家にもよく来るのう。『どうかマヤ様におとりなしをお願いします』とか何とか。父上も困り果てておったわ」


ユウキ「当然だろうな。皆が勝ち馬に乗りたいんだ。失敗すれば、次代の皇帝の治世において冷や飯食いが確定する。だからこそ、権力争いは世の中から無くならない。まあ、俺達を食い物にしようとする連中は漏れなく地獄を見てもらうがな」


アヤメ「そこは私達に任せなさい。ミズキやユイと協力して調査したり、排除したりしてるから。今は剣闘士狩りをしてるけど、8割方終わったわ」


ユイ「まっとうな暮らしが出来る人間は1割程度だったね。腕が良いのはマヤの騎士団やファルディス子爵家の従士として雇った。騎士になりたくない人は冒険者とかになってたね。後の連中は金や人斬りに飢えた亡者だった。だから闇討ちで処分したよ」


ミズキ「あのゴンザレスだっけ? あいつは倒したわ。『なんで!? なんで私までええっ!』とか言っていたけれど、甘言で簡単に踊らされる奴なんていらないからね。最期はギーズ公爵の手の者が半死半生の奴を持っていったわ。まさか公開処刑するとは思わなかったけど」


セネカ「‥‥政治の世界は怖いけれど面白いね。うん? なんか大きな木馬が出てきたよ。あっ、城門前に置いていった。なんのつもりかな?」


セネカが指差す方向を見れば、木で作られた大きな木馬が設置される所だった。その迫力に観客は驚きの声を上げている。


ネリス「‥‥あれは! だめ、それを中に入れたらだめよ。ギリシャ軍にもなかなか頭が回る人物がいるみたいね」


レイ「ほほう、さすがネリスじゃな。あれを見てどんな策か気付いたか。トロイの木馬は良い教訓を教えてくれる。1つ、勝利が確定する最後まで油断をしない。1つ、怪しい物には手を出さない」


木馬はトロイの城門から中へと入り、戦利品として持ち込まれた。戦勝の宴が終わり、皆が寝静まった頃に兵士達が中から飛び出す。城門を開け、外にいたギリシャ軍がなだれ込む。こうして、難攻不落と言われたトロイは滅んだ。


幕が閉じ、役者達が舞台から出てくると割れんばかりの拍手と歓声が沸く。第1皇女マヤが作った脚本による劇は、見事に大成功を収めた。もっとも、問題はここからだが。


マヤ「さて、大成功に終わったは良いけれど。この後が大変ね。大物な皆さんとの挨拶が待っているんだから」


ユウキ「そうだな、俺達も手伝うよ。という訳で、だ。レイやネリス、セネカも挨拶回りを手伝ってくれ。アイラはユイと一緒に支配人室で待機。アヤメ、ミズキとリーザは俺達の護衛を頼む」





次回、久々にルー達の登場です。

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