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転生しても受難の日々  作者: 流星明
休暇であって、休暇じゃない!
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第109話 捕らわれのユウキ

お待たせしました。

‥‥あれ、ここはどこだ? 場所的には荷物や武器が置かれた倉庫みたいだが。まずは順を追って記憶を思い出そう。アイラ達を連れて闘技場に向かった俺。人の良さそうな顔だが、心は悪人の極みのような支配人に出迎えられた。観覧席に案内されてから、俺は1人でトイレに行って‥‥。


「そうだ! 誰かに眠り薬使われたんだ。甘い香りをかいだら、すぐに寝てしまったものな。考えられるのは物盗りか俺を人質にする事か。殺害する気なら、俺はとうに死んでるだろうし」


「あらあ? 気が付いちゃったのね、坊や! 手荒な事をしてごめんなさい。ちょうど、馬鹿支配人に対する反乱をするつもりだったのよ。今日ファルディス子爵が来るって聞いて、あなたを人質にしようって考えた訳。お分かり?」


「分かるさ。話は分かるが、もう少し丁重な扱いをしてくれても良かったんじゃないか?」


周りを見渡せば、倉庫の中に剣闘士達が十数名近くいる。その中心人物であろう、筋肉ムキムキマッチョお姉様系剣闘士がおネエ言葉で話しかけてきたよ、おい! 重装鎧を着て大剣を背中に装備しており、見えている手や足には古傷だらけ。まさしく歴戦の剣闘士だな。


しかし、あの支配人は相当恨まれてるようだ。ここにいる剣闘士の皆さん、神眼で見たら全員漏れなくぶちギレてるし。そして、中心人物たる男を詳しく見てみれば。


『ゴンザレス 剣闘士達のリーダーで人望が熱い。男だが、男が大好きな乙女である。自分たちの扱いに対する長年の不満から、とうとう反乱を起こしてしまう。神様コメント ‥‥いやあ、ユウキ君って本当に色々と巻き込まれますねえ。こいつ、戦うのは得意だけど頭は脳筋だよ。それをまんまとマルシアスとニムザに利用されてるねえ」


「‥‥ともかくゴンザレスとやら。支配人の何が不満なんだよ。話次第では手を貸す事もやぶさかでは無いが」


俺の提案を聞いて、ゴンザレスは満面の笑みを浮かべる。なんか怖いんだよなあ! 俺はノンケなんだ。女性にしか興味ないぞ。フリじゃない、フリじゃないからな!! おほん。ゴンザレスを曲者2人が利用しているとは、どういう事なのか。それについても調べていかないとな。


「あらあら本当に良い男だわ。私の名前がすぐ分かるなんて、神眼スキル持ちなのは本当みたいね。私は剣闘士の元締めをやらせてもらってるの。で、闘技場の主がムヒャクって言うんだけど、ケチで意地汚いくそ野郎なのよ。最近は私達の給金も支払わず、危険な仕事ばかりさせるようになってね。もう、我慢の限界よ!」


「な、なるほど。つまりは、支配人に待遇改善を求める感じかな?」


「‥‥もう、その段階は過ぎちゃったわねえ。私達は支配人を打倒し、闘技場を乗っ取ろうとしているから。あのくそ野郎ときたら、後ろ楯たるギーズ公爵に金を上納する事しか考えてない馬鹿よ!」


ギーズ公爵と言えば、次の宰相になる人物だな。帝都にまで影響力を及ぼしているとは驚きだ。しかし、任せた相手が無能すぎるが。剣闘士を無給で働かせる愚行が即反乱につながると理解していないんだから。


「最近は盗賊ギルドにも、びた一文払わないみたいだし。かのギルドマスターも今回の件を了承したわ。マルシアスに頼んで貴方が来るよう仕掛けたのは私よ」


笑ってはいるけど、殺気が全身からあふれだしてるんですがね!? しかし、これでマルシアス様が俺を向かわせた理由がよく分かった。闘技場は賭け事に加え、重犯罪者などが罪を償う為に戦う事もある。運営や維持に裏社会が大きく関わってくるのは当たり前の話。それをないがしろにしている支配人、頭おかしいにも程があるな。


ここは協力するか。さもないとニムザさんが本気で潰しに来るだろうから。後ろ楯のギーズ公爵が事情を知らないのか、あえて様子見をしているのか読めないのが怖いけどな。


「私の計画では、貴方を人質にしてムヒャクの追放を訴えるつもりなの。ファルディス子爵を招待したくせに、身の安全を守れなかっただなんて支配人失格だからね」


確かにな。大義名分まで考えているのはさすがと言えるが、詰めが甘いな。うちの奥様方の恐ろしさを知らなすぎる。だって、ドアの向こうに感じ慣れた殺気が漂いだしたから。ここの皆さん、死体にならなければ良いなあ! ふっ、キレた彼女達を止められる力など俺には無いのだよ。


「協力はしよう。ただ、俺の奥様方に事前説明したか? さもないと‥‥」


「その必要はもう無いですよ。佑樹‥‥じゃなかった、ご主人様」


「ユウキ兄ちゃん、大丈夫だった? ‥‥相変わらず誘拐されるんだね。もう少し、身の回りの事を気を付けなきゃ! それにしてもギーズ公爵は帝国の闇をなめすぎだよ。こんな事したら、自分達の首を絞めかねないのに」


倉庫のドアが開き、完全武装したアヤメとユイ参上。気絶した剣闘士2人の首根っこをつかんで引きずってきた。あっ、周りの皆さん慌てて下がったな。戦って勝てる相手じゃないと判断したか。よく分かってらっしゃる。


「アイラ様より通信が入り、即座に行動開始致しました。既に皆さんには通達済みです。マヤ様は近衛騎士団を動かしております。今頃、騎士の皆様は観覧席や場外に客としてまぎれているかと」


「レイやネリス、セネカは不参加だけど戦力的には充分だと思う。ゴンザレスさん、私達も参加するけど構わないよね? うふふっ、嫌とは言わせないよ」


マヤにユイ、リーザにアヤメ、ミズキとアイラが参戦か。うん、ムヒャクとやら。君の盤面は詰んでいる。ついでにゴンザレス。君もミスったなあ。この騒動、規模がでかくなる事は確定したよ。


「‥‥えっ、何で奥様方が参戦するの? こんなの聞いてないわ。だ、大丈夫かしら、闘技場が更地になったりしないわよね!?」


「更地ですめば重畳ですね。たぶん死体の山がついてくるでしょうが。皆さんかなり殺る気ですし、大量の血でこの辺りが真っ赤になる事は確実です。諦めなさい」


「ま、待って! そこまでしなくて良いから。闘技場が継続出来なくなるから止めてちょうだい!!」


だから想定が甘すぎだっつうの! 俺を誘拐するのなら、大陸でも屈指の剣士3名と凶悪な魔法使い3名、聖女と勇者にラミアンナーガと対峙する覚悟が必要なんだぞ。しかし、マルシアス様やニムザさんは怖さを知ってるはず。なんで、今回わざわざ仕掛けたんだ?


「ゴンザレス、見誤ったな。うちの奥様方の怖さを。『そんなゴミ虫、ためらいなく潰した方が後腐れが無いわ』とか言ってそうだし、マヤが」


「よく分かってるねえ、ユウキ兄ちゃん。マヤがその通りの事を首謀者2人に言ってたよ。まっ、彼らには色々と勉強してもらうとして‥‥ゴンザレスだっけ? 勝手にユウキ兄ちゃんを利用しないで欲しいなあ。もし、単純に金目当ての所業だったら、全員の首を飛ばすつもりだったよ」


あのう、ユイさん。ガチの殺気を出すの止めてくれませんかねえ!? 普段、命のやり取りをしている剣闘士の皆さんが顔色変えて怯えてるよ。ほら、足が生まれたての子鹿みたいに震えてる奴もいるしさ。


「ユイ、怒りは支配人に向けなさい。とりあえず、ご主人様はこのまま捕らわれていて下さい。ユイを護衛につけますから、ひとまずご安心を。私は闘技場の3人と合流しますので。‥‥そうそう」


笑みを消したアヤメは、剣闘士の皆さんを見渡すと強烈な威圧を始めた。傭兵王と魔族5大将軍の娘だけあって、怒った時は恐ろしすぎる。何人か失神したし、味方で本当に良かったと思うよ。


「剣闘士の方々にはムヒャク討滅に動いてもらおう。私のご主人様を不用意に人質にしたのが運の尽きだ。腕がもげようが足が折れようが死ぬまで戦え! 奴の首を落とすまで戦いは終わらないと心得ろ。分かったか、この凡愚どもがああ!!」


「「「は、はいいい!! 分かりましたああ!」」」


あっ、駄目だ。完全にゴンザレスからアヤメに主導権が移った。この反乱、ムヒャクの首が飛ぶまで終わらないな。俺はデートしていたはずなんだが、また修羅場突入だよ。さて、とりあえずゴンザレスをなぐさめるか。


「どうしよう、どおおしよう!! 私、とんでもない事しちゃったかしら? このままじゃ大変な事に‥‥」


「ゴンザレス、人間は諦めも肝要だぞ。貴女は選択を誤り、番犬を退治しようとして怒れる竜を呼び寄せた。もはや貴女の手に負えない事態に発展したのさ。まっ、強く生きてくれ」


「言葉が軽すぎいい!! あんたの奥様方が原因なのに、なに他人事みたいに言ってんのよ。って、ひぃ!」


いつの間にか、ゴンザレスの首筋にユイの刀が当たっている。ユイさん、相変わらず速いな。いつ刀を抜いたか分からなかったぞ。


「いや、他人事だし。俺は人質に捕らわれただけだからな。責任取れと言われても困るなあ。俺を使った君達が悪いんだよ」


「そ、そんなああ」


色々と限界が来たのか、ゴンザレスはとうとう泣き出してしまった。中年親父が泣いてる所なんて見たく無いんだが? さて、とっとと終わらせてデート再開といきますか。アイラ達に心配をかけたからな。早く顔を見せて安心させたいし。

次回、ムヒャクとの対峙。

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