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転生しても受難の日々  作者: 流星明
休暇であって、休暇じゃない!
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第108話 闘技場デートの前に

仕事等が原因で期間が空きましたが、お待たせしました。

翌朝目が覚めると、だらしない笑顔でマヤとユイが俺の顔をのぞき込んでいた。夢の中とはいえ、逢瀬を楽しめたからな。これでしばらくは嫉妬も収まるだろう。


「おはよう、ユウキ兄ちゃん。ていうか、昨夜のあれは激しすぎだよ。私達の制服を引きちぎるだなんて。ま、まあ、それだけ求めてくれたのは、う、嬉しいかな?」


「おはようございます、ユウキ。昨日は本当にありがとう。ようやくあなたと結ばれて良かったわ。‥‥あとは現実で結ばれるだけね」


2人とも顔を赤くしながらモジモジしていて可愛い。ずっと見ていたいなと思っていたら、咳払いをする人物がいた。


「おはようございます。ご主人様、マヤ様にユイ。すぐに支度をお願いします。朝食の準備が出来ているそうですよ。あと、アイラ様とミズキ、リーザも食堂に集まっております。私が逢瀬以外の所を夢で見せていたせいか、3人に強制連行されたアルメアが泣きそうになってますので、お早く」


「おはよう。その、前世と同じ話し方をしてもいいんですよ、あ、綾香?」


「私はご主人様の騎士です。あまりになれなれしい発言はまずいと思いますので、普段はこの口調でいきます。‥‥ふふっ、安心してくれ立野先生。プライベートな時間とベッドの上では昔みたいに話してあげるよ」


桃色空間を吹き飛ばしたのは、綾香‥‥じゃないアヤメだった。昔みたいな言葉使いの方が良いんだけど、主従関係だとため口はまずいか。とはいえ、前世の彼女も素敵だったな。もし、告白されたなら普通に付き合いそうだったし。って、痛い痛い! 急にマヤとユイが思い切りほほを指で摘まんできおったぞ。


「‥‥ユウキ兄ちゃん、師匠にデレデレし過ぎ!」


「はあ、辻先生を相手に戦うのは大変そうね。私達が殺気を放っても、どこ吹く風でユウキの側に来るんだから」


「ふん。小娘程度の殺気で私が怯えるものか。今のマヤとユイの実力では私に勝てないからな。せいぜい精進するといい」


「「ぐぬぬぬっ!!」」


その後、俺はクローゼットの中でインベントリから服を出して着替える。一方、マヤとユイは寝室にて着替えをアヤメに手伝ってもらっていた。3人の準備が済んで、アヤメの案内で食堂に向かう。そこでは死にそうな顔をしているアルメアと、怒り心頭のアイラ達が座って待っていた。


重い空気を感じて入るのをためらっていると、アヤメが声をかけてくる。


「とりあえず、ご主人様。中に入りましょう。アルメアの件はご安心を。『妹の性根を叩き直す!』と、リーザがそれはそれは意気込んでましたね。もっとも、今日はご主人様とのデート。代わりに私やユイがアルメアを鍛えてご覧にいれますので。‥‥さあて、かなりきついしごきをしないとなあ」


「楽しみだなあ。ユウキ兄ちゃんに害を与えないよう、しっかり調教してあげるからね。まっ、駄目だったら処分するけどさ」


‥‥アルメアさん、死亡フラグ立ったんじゃあ。だって、アヤメとユイの体から殺気と闘気があふれてるんだもの。彼女の来世に幸あれ! とか思っていたら、アルメアに殺意を隠そうとしないミズキが、彼女に向かって穏やかな口調で話し始めた。


「アルメアさん。ユウキを殺そうって考えていたなんて、愚かな事を。とりあえず死んどく?」


「ひっ!」


ミズキの純粋な殺意を浴びて、アルメアは怯える。しかし、今回は姉のリーザも助けてはくれない。それどころか、他の女性陣に深々と頭を下げた。


「私の妹がすいません。責任をもって、必ずや矯正させますから! ユウキ様への歪んだ殺意も、常軌を逸した性癖も」


「‥‥野外であんなはしたない事をするだなんて、本当に嫌らしいわ。ねえ、アルメアさん。あなた、頭のネジをどこかに捨ててきたのかしら」


「うぅ、そこまで言わなくてもいいじゃないですかあ!!」


あのう、アイラさん。『何、この汚物?』って、顔で責めないでやってください。ほら、アルメアを見て。号泣会見したN議員みたいな感じになっちゃってますから!


「うっ、うわああ! なんで、なんでええ? 夢でも現実でもこんなに責められるのおおお!? 私は、私はああ! レイの為に先生を殺してええ! 2人でし、幸せになりたかっただけなのにいい! 」


「「「それが駄目なの! この変態!!」」」


3人の怒りの突っ込みに押し黙るアルメア。俺達は殺伐でした空気の中を食堂へと入っていく。俺に気づいた3人は満面の笑顔を見せた。いや、君達。さっきまでの修羅場との落差に俺はついていけませんぜ。


「‥‥おはよう、皆。思う所はあるだろうが、この辺でアルメアを許してやってくれ。あまり追い込みすぎると自暴自棄になりかねんからな。とりあえず、食事にしようじゃないか」


俺達が席につくと、安心した様子で使用人達が給仕を開始する。うむ、3人の怒りは怖かっただろうからな。まずは朝食を終わらせる事に専念し、食後のコーヒーを飲みながら話し合いを再開する。


「アルメアが殺意を抱いたきっかけは俺が原因だ。優柔不断だった前世の俺の、な。だが、彼女にも罪が無いとは言えない。リーザやアヤメ、ユイが歪んだ性根を叩き直すみたいだ。ミズキにリーザ、アイラも今回は許してやって欲しい」


「‥‥ユウキ。分かったわ、今回はこの辺で勘弁したげる。でも、アルメア。次なんて無いからね。妙な事をしたら殺すから。‥‥おほん、今日はいよいよ私達の番ね。1対1のデートじゃないのは残念だけど、仕方ないか」


「ユウキ様、妹の無礼は平にご容赦を。私が徹底的に鍛え直しますので。アイラ様の護衛は任せて下さい」


「分かったわ、ユウキ。ユイ達に免じて許します。それと‥‥ごめんね。リーザさん、ミズキさん。私の仕事に巻き込んで。お父様も何を考えているのかしら? 『ユウキと一緒に闘技場デートをしてくれ』だなんて』


今回のデートはアイラの言うとおりマルシアス様の依頼だ。何でも闘技場の経営者が、改築した闘技場のこけら落としに俺を招待して(はく)を付けたいらしい。いや、他にも適任者はいると思うんだがな。


そろそろ延期されていた学院の入学試験も近いし、女性陣とのデートに使えるのは、あと2日位か。そのうち1日は全員そろって観劇する予定だし、今日しかないからな。


「しかし、ユウキ様も大変ですね。リーキッド侯爵家の内紛に巻き込まれ、命を狙われるなんて。あの後、侯爵夫人は亡くなり、前リーキッド侯爵は失意の内に引退。エアリアル公爵領より帰り次第、シンシア様が家を継がれる事になるようです」


リーザの報告を聞いてほっとする俺。皇帝陛下は意見を受け入れてくれたようだな。とはいえ、第2皇子派閥は大打撃を受けた。ラクシュア騒動で何人も捕まり、ネッドの騒動でアン様とリーキッド侯爵家の関係は壊れた。あげく、シンシア様はネリスとセネカと共にマヤを支持するんだからな。


「第2皇子派閥は壊滅的打撃を受けたわ。第1皇子派閥も半壊状態。勢力を保っているのは、マヤ様の派閥と第3皇子派閥だけ。あっ、ユウキ。リーキッド侯爵家でシンシア様の派閥以外とは取引停止したわ。‥‥あなたを殺そうとした連中と商売なんてしたくないし」


リーキッド侯爵家の連中どうするんだろう。物の売り買いは出来ないし、教会からは出禁をくらっている。いまや、帝国随一の商人たるファルディス家と教会を敵に回してまで商売したい奴なんていない。


しかも、教会出禁となっているので、結婚や子供の命名、スキルの授与と確認。それと亡くなった時の葬式等が一切出来なくなるからな。まあ、他の神様に宗旨替えする事も出来るが‥‥。


「うちのお母様から伝言。『当教会は、リーキッド侯爵家の皆さんに手を差し伸べるつもりはありません。ユウキさんに害を為した輩を救ういわれは無いので』だそうよ。帝国ではラーナ神かアルゼナ様、あるいは邪神を信仰している穏健派魔族しかいないもの。宗教的にもつま弾きにされそうね」


意外と信仰している人が多いんだよなあ、アルゼナは。神帝様を除いた神の中で最強と目されているからか、騎士や傭兵。あと裏社会の皆さんの信者が多い。‥‥俺達にしてみれば、ただの愉快犯なんだがな。


「自業自得すぎて何も言えん。まあ、良い。そんな事は忘れてデートに行くとしようか。アイラ、今日は君を中心にエスコートするよ。俺達の子供がお腹にいるからね」


コーヒーを飲み終えた俺はアイラの席に向かうと、手を差し出す。まだ師匠と呼んでいた時以来のデートだ。あの時、マヤに再会出来たんだよな。そこからは、まさしく激動の日々でデートどころじゃなかったし。


「ありがとう、ユウキ。最後のデートをしてから2ヶ月近く経ってるのが驚きだわ。‥‥恋敵が8人も増えたのは想定外だけど。ここは嫉妬しても仕方がないし、まずはあなたの子供を産む事に専念するわね」


アイラはため息をつきながらも椅子から立ち上がり、俺の手を取ってくれた。ローブの下のお腹の膨らみが、少しではあるが目立ち始めている。どうやら順調に育ってくれているみたいだ。彼女のような優しい子に育ってくれると嬉しいな。


「ま、まあ仲良くやっていこう。子供の事に関しても、俺も色々と頑張るからさ。って、うわっ!」


「‥‥ユウキ、アイラさんだけじゃなく私もエスコートして! アイラさんはあなたの右手、私はあなたの左手と手を繋ぐからね。やっと前世以来のデートなんだから、ここは譲れない」


珍しくミズキが積極的になっている。皆に先を越されていって不安や嫉妬が溜まっているんだろう。今日は彼女にも優しくしてやらないとな。それと、ミューズさんも忘れてないぞ。


「ううっ、両隣を取られてしまいました。はっ、そうだ! ユウキ様におんぶしてもらって‥‥」


「リーザ、ユウキが変に思われるから止めなさい。ミズキさん、交代で彼女と変わってくれません? アイラさんは妊娠中ですし、マルシアスからの要望を無下に出来ませんからね」


「っつ! 分かりました。皇女殿下の仰せのままに。なんで私が‥‥ちょっと、ユウちゃん!? 私の頭を撫でないでよ。恥ずかしいから!」


「「「「「「ユウちゃん!?」」」」」」


自分に不利益があるのに、すぐ認めるだなんてミズキも変わったもんだ。少しずつだが、本来のミズキに戻ってきたよな。俺の呼び方も前世の呼び方に戻ったし。俺はマヤ達に挨拶して別れ、ファルディス家の馬車で闘技場へ向かう。向かったのだが‥‥。


「‥‥幼なじみは強敵だな。リーザさん。お互いに頑張りましょうね」


「ユウちゃんって、凄く親しみありますよね。私も呼んでみたいです」


「ちょっと、リーザ。私専用の呼び方なんだから止めてよね!!」


馬車内で仁義なき俺の呼び方論争が始まってしまう。‥‥本当に大変だよな、複数の女性と付き合うって。




次回、闘技場にてユウキが‥‥。

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