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02 本部にて

 2xxx年某日 天気は晴れ

  T都のとある一画にそのビルはそびえていた。

「W.U.T」と書かれた銀文字の看板を出口に掲げ、黒いスーツ姿の人間が多く出入りしているそのビルは、政府公認の組織のビルであるが、世間一般からはただの「おもちゃ会社」として認知されている。

 地下二階から25階までる高層ビルは、20〜25階までが社員寮となっており、15〜20階が各オフィスとなっていた。一階はエントランスであり、そこから5階まではカフェや食堂、生活必需品を取り揃えることのできる店舗が揃っている。


 そしてそのビルの地下二階に、「彼ら」の会議室があった。

 会議室―――とはいっても、真面目に会議をしているわけではない。まるで高校生が昼休みや放課後、部室に集まってたむろするかのように、「彼ら」にとってもそこは暇つぶしの場所でしかなかった。

 そして「彼ら」のうちのひとりであるセイヤがそのドアを開けようとしていた。

 ドアにかかげられている「会議室」というプレートは、すでに何者かの手によって「ぱーてぃーるーむ」などという名前に変えられている。

 セイヤはそのプレートをスルーし、ドアをあけた。その瞬間、


「なあーんじゃ、遅かったのう姫!」

「うわあっ!」


 柔らかい何かがセイヤの顔面に押し付けられた。ぎゅうっと抱きしめられ、今にも窒息しそうだ。


「相変わらず綺麗な毛並みじゃ。今日も今日とて愛らしいの」

「つ、月子てめっ、もがっ~~っ、~~!」


 月子と呼ばれた人物は艷やかな黒髪を後ろに束ね、セイヤに負けず劣らずの整った顔立ちをしている。真っ赤にひかれた口紅が印象的だ。そしてその豊満な身体でセイヤを抱きしめていた。全国の月子ファンが見たら、羨ましいと唇を噛み締めるに違いない。


「っーー、む、胸をっ~、おし、つけんじゃねえ!」


 セイヤが突き飛ばすと、月子は残念そうな顔をした。


「なんじゃ、もう終いか?あいかわらず、つれないやつじゃ。ま、そんなところがまた愛らしいがの」


 どこからか取り出した扇子で口元を隠しながら、コロコロと笑う。セイヤは顔を赤くし、わなわなと拳を震えさせている。


「俺で遊ぶんじゃねえよ月子!俺の名前はセイヤだ!姫って言うなって何度言ったらわかんだよっ。ほんっといい加減にしねえとしばくからな!」

「年を重ねるにつれ、口もどんどん悪くなるのう。そんな悪い言葉、どこで覚えてきたんじゃ。私の可愛い姫」

「だから、姫って言うんじゃねえ!」


 そんな入口で騒ぐ二人をよそに、メイが机に座ってティータイムを楽しんでした。

 ちなみに部屋は長方形型になっており、真ん中には本来なら会議をおこなうはずの、大きな長机がおいてある。しかし、その机の上には会議という言葉には似つかわしくない、雑誌や筋トレ道具、枕など様々なものが散乱していて、この部屋を見て、会議室であると判断する人間はいないだろう。メイはその一番端に座っている。

 メイは、セイヤに劣らない綺麗な金髪をしており、邪魔にならないよう三つ編みにしてまとめている。赤いぽんちょは、部屋の中でも脱ぐ気はないらしい。

 そんな彼女の目の前では、ひとりの少年がお菓子をほおばって幸せそうな顔をしていた。淡い桃色の短髪で、年齢は高校生ぐらいだろうか。机の上に盛り上がっているお菓子を、次から次へと口にいれていく。


「…レン、あなたってほんと、食べてる間は幸せそうな顔してる」

「ほらあね、ほふ、はへるほほは」

「食べながら喋らないで」


 メイに指摘され、レンと呼ばれた少年があわててお菓子を飲みこむ。


「んっ……んん、だから、僕、食べることが大好きだからね」

「そう、でも食べ過ぎはよくない。あなた、今日それが原因でおなか壊して、任務にこれなかったんでしょ」

「あー、そういえばそうだっけな…」


 少年が手を止め、ふと悩んだその瞬間、がっとセイヤが少年の頭をつかんだ。


「え」

「てめえか、この豚野郎。俺を二時間も早く起こさせて任務に向かう原因となったのは」

「えー…と、なんのこと?」

「だから、てめえのせいで俺は任務に向かわなきゃいけなくなったんだよ!」


 そういって思いっきりセイヤはレンの頭をぶつ。

 がんっという鈍い音が部屋に響く。


「いっったいなあ!なにすんのさ!」


 頭をおさえ、涙目になりながらレンが立ち上がる。身長は気持ちセイヤのほうが大きいぐらいだ。


「てめえがバカみたいに食うから、腹壊して、わざわざ俺が任務にいったんだよ。ちょっとは反省しやがれ!」

「だからって殴ることないじゃないか!」

「うるせえ、腹立つんだよ!」

「理不尽!」


 目の前でまた騒ぎだしたセイヤに、メイは冷たい目を向ける。その様子を月子は扇子で口元を隠しながら笑ってみていた。

 突如、低い男性の声が響き渡る。


「静かに」


 その言葉に全員の動きが止まり、一斉に入口の方へと目を向ける。そこには、ひとりのメガネをかけた男性と、少し頼りなさそうな男性が立っていた。

 メガネをかけた男性の服装は、どうやら牧師のようだ。聖書を片手に礼拝のときの衣装をみにつけている。無表情で佇むその姿は、威圧感がある。そのうしろの男性は、ものめずらしそうにその会議室を見渡していた。

 牧師の男性が静かに口を開く。


「新しい、メンバーを紹介する」

読んでいただきありがとうございます。

次回、ようやくではありますが、話の全貌がみえてくるかと思います。


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