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勇者だけど人に頼ってもいいよね  作者: プーたん
冒険の書 序章
8/26

#8 アレクの冒険 Ⅰ

この番外編もちょくちょく挟んでいきたいと思います



王国軍兵舎に1人の青年が入ってきた時、男の笑い声が建物内に広がった。しかしそれはその青年に向けられたものではなかった。


「てめぇみたいなチビに魔王が倒せるわけねぇだろ!」


周りにいた屈強そうな男達もこぞって笑い出す。僕だって覚悟を持ってこの街に来たんだ。男達と何が違うと言うのか。


「あなたに認めてもらわなくても構いません。僕はただ家族や大切な人のために戦うだけです」


そうだ、それでいい。誰に認めてもらわなくたって構わない。みんなを守るために、僕は故郷の村を飛び出したんだ。


「あん?てめぇみたいなチビごとき、そこいらの魔物に食い殺されるのがおちだろうが!」


「僕は魔道士です。体の大きさは関係ありません!」


「うっ!」


大男は少年を思い切り蹴飛ばす。


「お前みたいなのが前線に出てきても邪魔なんだよ。とっとと恋しいママの元へ帰るんだな!」


大男は少年に興味をなくし、そこから去っていく。


「君、大丈夫か?」


先ほど兵舎に入ってきた青年が心配そうに声を掛ける。くせっ毛だが綺麗な金髪だ。


「大丈夫です、これくらい。ありがとうございます」


こんなことで泣き言は言ってられない。僕は1人前の魔道士になって、魔王を倒すんだ。その時兵舎の扉が勢いよく開けられる。



「伝令、伝令!巨大な魔物が出現、今この街にいる兵だけでは戦えない!新設された()()()()()()のみなさんにも助力願うとのことです!」


「おっしゃぁぁぁ!俺がそいつをぶっ殺して、報酬をいただくぜぇ!」


少年を足蹴にした男がそう言って走っていく。すぐに他の討伐者達も後に続く。


「僕も行かなきゃ…!」


少年もまた同様に走っていく。金髪の青年は微笑み、その背中を見つめていた。




「おいおい、デカすぎねぇか! ?」


男達が街の外に出るとすぐに魔物の姿が見えた。高さ20メートルはあるだろう。大きな狼だ、ヤギのような角が生えている。


「おらぁ!」


男達の武器が巨獣に振り下ろされる。しかし、どれだけ力を込めても傷一つつかなかった。巨獣が腕で薙ぎ払う。男達が次々に転がってくる。


「こんなのに勝てるわけねぇ…」


「き、貴様ら待たんか!」


その場にいた騎士の制止も聞かず、男達は逃げ出した。巨獣は前足を大きく振りあげ、そしてその動きが止まった。


愚者の足枷(フェッター・フール)


「ここは僕が抑えます!皆さんはその間に街の皆を!」


「お、おう!」


逃げ出そうとした男達は街に戻って行く。この魔法は一時的なもので、術者もその場から動くことができなくなる。少年の魔力が切れた時、街

の命運も尽きるのだ。


「くっ、まだだ…」


少年の魔力が切れかかっている。今魔法を解けば逃げ遅れた人が危険にさらされてしまう。


「くっ、うおぁぁぁぁ!」


少年の魔力が限界を迎え、腕の血管が裂け、血が吹き出る。それでも少年は魔法を解かない。しかし、その甲斐虚しく、魔法の効果が弱まり動けるようになった巨獣の腕が少年に襲いかかる。



その刹那────



ザンッという音と共に巨獣の腕が、頭が、一刀のもとに切り伏せられる。


「あなたは一体…」


あまりにも呆気なく、地に落ちる巨体。少年が思わず口にした疑問に、金髪の青年は優しい声色で答えた。


「俺はアレックス・カーライル。いつか魔王を倒す男だ。俺のことはアレクって呼んでくれ。君は?」


「ぼ、僕はクロノス。いつか大魔法使いになって、魔王を倒す男です」


この人について行けば、この世界に平穏を取り戻すことが出来るんじゃないかと、そう思わせる何かがあった。これは、いつの日か勇者と呼ばれる男、アレクの冒険記である。

アレクは主人公らしい主人公を目指しています

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