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勇者だけど人に頼ってもいいよね  作者: プーたん
冒険の書 序章
7/26

#7 仲間

キャラが崩れてないかちょっと心配になってきた。

 

「森にドラグレクスが…!?」


「そうだ、調査員は何をしていたんだ!」


 ドランが声を荒らげて抗議する。調査員とは冒険者の依頼先を調べ、クエストの難易度に変化を生じさせる要因がないかを調査する存在だ。初心者のクエスト依頼地にB級の危険種が現れ、俺たちは危うく死にかけたのだ、ドランが怒るのも当然だろう。今回は運が良かったが、今後このようなことがあれば新人の冒険者が命を散らすことになる。俺たち自身、次もまた対処できるかわからないためこれは重要な問題だ。そこへ、口が左耳に向かって裂けている強面の男が話しかけてきた。


「あ、ギルドマスター、お疲れさまです」


 受付嬢達がその男に挨拶した。


「私は冒険者ギルドのマスターをやっているクラウスだ。君たちには迷惑をかけたな、本当にすまなかった」


 受け付けのお姉さんが挨拶した強面の男はどうやら冒険者ギルドのマスターだったようだ。筋肉質だがそれでいてすらっとした体つきは、ただ戦うだけでなく、冒険者として様々な依頼をこなしてきたからだろうか。それに一目で一流の冒険者だと思わせる独特のオーラ、貫禄が感じられる。


「俺たちはなんとかなったが、若いやつが危ない目に遭うようなことは避けてやってくれ」


 ドランの拳が強く握られる、いつにも増して真剣な表情をしていた。


「もちろんだ」


 クラウスは力強く頷く。


「さて、君たちにはドラグレクス討伐の報酬を出さねばならないな」


 本来の依頼にない魔物の討伐は、ギルドに報告すれば追加討伐として新たに報酬として支払われる。もちろん新たに討伐依頼が出されるような

 魔物に限られる。


「380万ルシ、ドラグレクス討伐依頼の報酬額だ。そして君たち全員にC級冒険者としての称号を与える。B級にしてやれなくてすまない」


 クラウスは申し訳なさそうに言った。B級危険種を倒したんだからもしかしたらと思っていた。ちょっと残念だけどポンポンB級に上げる訳にはいかないんだろうな。


「それで構わない」


「俺もそれで構いません」


「私も大丈夫です」


 俺たち3人は初クエストにてC級冒険者になった。冒険者ランクは最初期のFランクからSS級まで存在する。討伐した魔物の危険度、数、依頼内容の難易度など冒険者ギルドがその資格があると認めた者に称号が与えられる。S級以上の冒険者や戦果を挙げた騎士などは国により勇者として認められる。また、魔物にもランクがあり、FからSSS級が存在する。SSS級の魔物は数えるほどしかいないが、個々が災害と呼ばれている。


「そろそろ私は失礼する。君たちはきっといい冒険者になれる、勇者にだってなれるかもしれない、期待しているよ」


 クラウスはそう言い残すと去っていった。







「お前らはこれからどうするんだ?」


 ギルドを出てすぐ、ドランが尋ねてきた。


「俺は、魔王城を目指して次の街に行きます」


「お前は魔王を倒したいのか?」


「ええ、少し事情がありますので」


 本当は魔王なんかに挑みたくないけど、行かないと俺死んじゃうみたいだしね。また銀髪の少女の顔が頭に浮かぶ。まあこれはユキのせいじゃなくて、死んだ俺のせいなんだから納得するしかない。


「魔王軍に家族や恋人を奪われた奴は山ほどいるからな、気持ちはわかるぜ…」


 ドランはまた真剣な表情をしている。何か勘違いしてないか…?まあいいか。


「アルさん、私もその旅に同行してもよろしいでしょうか?」


「……え?」


 アリスが覚悟を決めたように言葉にする。話を聞いていなかったのか。魔王倒しに行くって言ったんだぞ、どうしてお姫さまがそんな所に行きたがるんだ?


「アリスさま、この旅は危険なものになるかもしれません。」


 アリスには俺が勇者になる過程で国に口添えしてもらわなければならない、危険な旅に同行させて死なれては困る、俺のスローライフのためにも。これは本心だ、だけどなんで、本気で心配してる自分と、まだ一緒にいられることにほっとしている自分がいるんだ。


「わかっています。だからこそ私は行かねばならないのです。お願いです、アルさん」


 自分の意思を曲げる気はないようだ。アリスには何か訳があるのだろうか。少ししか一緒にいないがアリス(この娘)は1度決めたことは曲げないタイプだってことはわかる。説得は無理だろう。




「ありがとうございます、アルさん!」


 アリスはパッと笑い俺の手をとる。


「小僧と嬢ちゃんだけで行かせるわけにはいかねぇよな」


 ドランがニヤっと笑う。俺の新しい力は俺1人では役に立たない。仲間探しもしなければと思っていた所だし、ドランの力量は共に戦うのに申し分ない。


「ちょうど仲間を探そうと思っていたんです。助かります」


「サンキュー。あと2人ともその敬語やめてくてねぇか、ドラグレクスと戦ってた時の口調が素なんだろ?仲間になったんだから遠慮はいらねえよ」


 確かに、あの戦闘は命懸けだったし敬語を使うのを忘れてしまった。


「アルさん、アルさん!私にも敬語はいりません、仲間ですから!ちなみに私はこれが素ですから気にしないでください!」


「…わかった」


 いまさら言葉使いを取り繕っても無駄だろう。ずっと敬語でいるのも面倒だしちょうど良かった。


「よろしくな、小僧、嬢ちゃん」


「ドランもその小僧ってのやめてくれ」


「そうか、それじゃ改めてよろしくたのむ、アル、アリス」


「ああ、よろしくな」


「よろしくお願いします」


 アリス、ドランが仲間に加わった。最初に考えていた計画はもうめちゃくちゃだ。勇者になって、故郷を救えたら、あとは遊んで暮らすつもりだったのに。まさか魔王を倒しに行くことになるなんて…

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