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賢者の勇者は祈る

注 視点がハシュではありません

最近やたらと忙しかったのですが、台風のおかげ…というのも何ですが、なんとか書くことができました…

しかし、書くモチベーションが上がったのも、あれもこれもそれも全ては皆さまのおかげ!

評価して頂き本当にありがとうございます!!

これからもよろしくお願いします!



9/18ぎゃああああああ!!!??

何故か完結済みになっていただとおおおお!!??

いやもう本当にすいません、何故完結済みになっていたのだろうか…なんかおかしいとおもったんや…ということで本当にすいません、まだ続きます!


□□□



聖シエラエール王国の誇る国城。

国王バルハタザール三世の話によれば魔導大聖殿(シエラ・カタヒリヒと呼ばれているらしい、その巨大な建造物のとある一室。


一室といっても、その広さはホテルのスイートルームほどあり、その内装は一言で言えば豪華絢爛そのもの。

一目見ただけで相当な値打ち物だとわかる調度品が置かれ、床に敷かれたカーペットは何かの毛皮を使っているのだろう、フカフカの毛で足首まで埋まるほどだ。

灯は豪奢なシャンデリアに似たようなデザイン。

ソファーは革張りで、ベッドに至っては天蓋付きのキングサイズ。

シーツの手触りは絹のように滑らかで、細部には美しい刺繍が施されている。


部屋のどれもこれもが、生まれて初めて見るような高級なものばかりだ。

そして、そこからこの国はーー少なくとも王族は途方も無いほど裕福であることと、この世界の技術水準はとても高いことも伺えた。


そんな贅沢の粋を極めたようなこの部屋が、バルハタザール三世より勇者達わたしたち一人一人に与えられた部屋。


私ーー原崎莉緒の、これから住むことになる部屋だった。


「ーーふぅ」


どさ、と自分一人で使うには明らかに持て余す大きさのベッドに倒れ込む。

いつもは後ろでひとまとめにしている肩までの長さの髪が広がった。


やや湿っている髪は、私が湯浴みを済ませたことを指す。


この城には大浴場があるらしいが、精神的に疲れていた私はそれを利用したいとは思えず、部屋に備え付けられていた浴室ーージャグジーだったーーを利用することにした。


服装は今まで着ていた制服ではなく、国王が用意したパジャマのような服で、これまたシルクのような手触りだ。


「はぁぁ………」


ようやく一人になったことで少し落ち着く事の出来た私は、フカフカのベッドに顔を埋めて長いため息を吐いた。


「何でこんなことに…」



思い返せば普段通りに高校へ登校し、勉学に努め、家へ帰るという普通の生活を送っていたはずだった。


だが気付けば異世界こんなところに自分はいる。

そして、この世界から元の世界へはもう、帰れないという。

只の学生のはずの自分が、世界を救う勇者なのだという。

冷静にいようと努めてはいたが、まだ学生の身。

常に自分の振る舞いが正しかったのかと、自問自答せずにはいられなかった。


寝返りをうち、ベッドの天蓋を見上げる。


(あの人、大丈夫かな……)


ふと脳裏に浮かんだのは、巻き込まれたという青年の姿だった。


やや青みがかった色素の薄い灰色のに、少し長めの黒髪。

整った顔立ちに、すらりとした長身痩躯。


勇者でない事がわかった時のバルハタザールの態度は、少し冷た過ぎるものがあった。

シャルランテが私に目配せをしていたことに気付かなければ、私はバルハタザールに噛みつき続けて、立場を悪くしていたことだろう。


シャルランテは私がこの世界ーー星界グランバースへ呼び出された時に、送還することができないことを私に教えてくれた少女だ。

彼女はとても申し訳なさそうにしていて、少し話しただけでもその人となりの良さが窺い知れた。

だから彼女を信頼することが出来たのだ。

着ている服や周囲の態度から身分が高いのだろうとは予想していたが、まさか王女とは思わなかったけれど。


そんな事を考えながら、ぼうっとして天蓋を見つめていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「はーい」


がばっと身を起こし、急いでドアへ向かう。


扉を開けると、そこにはワインと思しきボトルをかかげてニシシと笑う凛と恐縮そうにするセリカの姿があった。


「はろー!莉緒っち元気ー?」


「遅い時間にすいませんです」


「大丈夫。気にしないで」


私は部屋に二人を通す。

ソファーに座り早速くつろぎ始める凛。

それとは対照的に背筋を正しているセリカ。

私は光輝の姿がない事に気付いた。


「ん?光輝はいないんだ?」


「ふっふっふー!今日は女子会なんだよ!」


「どんどんぱふぱふーー」


自慢気にはしゃぐ凛と、手を叩きながらウンウンと頷くセリカ。


「たまには女の子同士で話したいのです」


「コーキも来ようとしたけど、阻止した!だから多分今一人で泣いてる!」


「結構辛辣ね、凛」


「てへへ〜」


「褒めてないのです」


あはは、と笑うと、少し気分が楽になる気がした。


凛が持って来たボトルはやはりワインだったようで、とても甘口で飲みやすかった。

未成年だから法律違反だね、と笑いながらセリカの持って来たチーズをつまみ、たわいの無い会話を交わす。


笑って、話す度に、私は心が立ち直ってくるのを感じた。


一緒に召喚されたーーといっても召喚された場所は大聖殿の別の部屋だったがーー勇者が凛、セリカ、光輝で、本当に良かった。


凛とセリカは高校のクラスメイト。

いつも一緒にいて、昼休みは決まって一緒にランチを楽しむ仲だ。

光輝は幼稚園からの幼馴染。

幼稚園、小、中、高とずっと同じ学校で、もはや幼馴染というより家族のような意識が強い。


彼らと一緒だと知って、どれだけ安心したことか。

もし自分一人だったら、と思うとゾッとした。


「あ、そういえばさー、あのハシュウ?って人。どうなったのかなー?めっちゃイケメンだったよね?」


凛の言葉に、セリカが返事をする。


「確かにカッコ良かったですが、どこか近寄り難かったのです」


「えーそう?めっちゃ優しそうだったじゃん!」


「あぁいうタイプは絶対腹に一物抱えてるのです。キケンなオトコなのです」


「あはは、セリカがそう言うなんて珍しいね。いつもはぽわぽわーってしてるのに」


「一言余計なのです、莉緒」


「ふふ、ごめんごめん」


頬を膨らませるセリカに、私は笑って謝るポーズをとった。


そして、心の内で考える。


あの人(ハシュウさんは。


多分、一人だ。


私ならきっと耐え切れないであろう状況で、それでも優しく笑っていた彼が、私の目には眩しく写った。


だから彼が国王によって虐げられそうになったのを見て、つい居ても立っても居られなくなって異を唱えたのだ。


彼の境遇に、あり得たかもしれないその境遇の自分を重ねたのだ。


私は仲間がいて、仲間のいない彼を見て憐れみを覚えたのかもしれない。


それは、優越感、立場的に弱者の彼を上から見下して、偽善で言葉を吐いただけかもしれない。


私はそう考えて、そしてその考えに納得できる部分が自分の心の中にある事を感じた。


「……最低だ、私」


「ん?何か言った?」


「…いや、何にも言ってないよ」


きょとんとした顔でこちらを見る凛を、私は目を細めて誤魔化す。


あぁ、願わくば明日は、こんな私でありませんように。


明日は、もっと、強く笑えるように。


神様、あの人のように笑えるだけの強さ(こころを私にください。


「さて、今夜は飲むぞー?」


「おー!」


「負けないです!」


そんな事を祈りながら、私は再び親友達と笑い合って、夜を更かした。


これにてプロローグ終わり!……多分


莉緒が国王の言い分に納得した理由となる内容となりました。やはりシャルランテのおかげなのですね!(盲信)

莉緒はハシュに過去ナンパされそうになったことに気づいておりません。

理由としてはその時のハシュの服装がサングラスを付けキャップを被ったB-BOYスタイルだったからです(多分)

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