鋼色の悪魔に臨む
安定のサブタイトル詐欺……ッ!!
最近サブタイは語感で決めてるので(フィーリング)
許してください(土下寝)
庭へ飛び出す。
植木の間を駆け抜け、城壁の元へ。
周囲に目は無い。
しかし念の為《誰も知らぬ》で気配を消してから、今まで抑えて使っていた《黒刻》を全開にした。
細胞が余さず裏返るような不快感と共に、迸るような全能感が身を包む。
禍々しい音を立てて、身を包む黒が角と翼を象った。
「五号」
振り返ると、そこには毒蟲死体のゴロツキ君五号がいる。五号は一号と同様に首から上が無くなっていたが、一号とは違い大振りのククリナイフを持っていた。
コイツは俺が念の為にと残しておいた毒蟲死体だ。
「お前はミストの所へ行け。ついでに、餓鬼街のでもなんでもいい、適当にあいつらと背格好の似た女を見繕ってこい」
「キチィ」
五号の躰から蟲達が一斉に顔を突き出して哭いた。
「任せたぞ」
そう言ってから、俺は目の前に続く赤光の道に従い上へ飛んだ。
シャルランテの元へと続く赤い道。それが、彼女が未だ生きている事を指し示していた。
「起きろ」
「い、ぎィッ!」
腹に衝撃を感じると共に、焼けるような激痛が走り、シャルランテは目を覚ました。蹴り飛ばされた彼女は床をゴロゴロと転がり、長椅子にぶつかって止まった。
瞼を開いて最初に瞳に飛び込んできたのは、仄暗い部屋の天井。天窓のステンドグラスに描かれた装飾や、天井に描かれた絵画は、大聖殿の玉座の間にあったものに近い。
ぼやけていた思考は痛みによって覚醒し、滲む脂汗と共に、シャルランテは自分が悪魔に連れ去られた事と、その時に意識を失っていた事を悟った。
「起きたか」
ざらついた、人を不安にさせる様な声が、床に臥せ咳き込む少女に掛かる。
「……っ!悪、魔……!!」
睨みつけるシャルランテの視線に、声の主はぎょろり、と目を動かし、
「そうだ」
と返した。
悪魔は先程まで見せていた己の本性を隠し、人の姿に戻っている。
服装は目元以外を全て覆うような服に変わっていたが、闘牛のような瞳に宿る悪意は依然として変わってはいなかった。
「な、ぜ……わた、し、を」
「“殺さない”、か?それとも、“拐かしたのか”か?」
悪魔が鼻で笑うと、かりかりかり、と音が、シャルランテのすぐ近くでする。
「ひっ……!」
辺りを見回せば、そこは小さな教会の聖堂のようだ。
そして、その聖堂の床、壁面、天井のいずれにもびっしりと蜘蛛のような蟲が張り付いていた。
大小様々なそれらの蟲どもは、八ツ目を歪ませ、さざ波の様に、ヒトのそれにも似た生え揃った歯をカチカチと鳴らして嗤った。
「可愛いものだろう?此奴らは糜戒蟲と言ってな。七匹のヒトの屍肉を腐らせ、七晩かけて練合わせて漸く彼岸に怨嗟の産声を上げるのだ。一匹造るのにもかなりの手間と労力がかかるので、ここまで集めるのには中々に苦労した」
悪魔の視線の先を辿ったシャルランテは、聖堂の片隅に堆く積み上げられた黒ずんだ何かを目にした。
その塊から漂う腐臭と、その表面を蠕く黒いなにか。シャルランテはそれの元となったものの正体を悟り、激しく嘔吐いた。
「案ずるな、小娘。用が終われば、直ぐ様に糜戒蟲どもの餌にしてやる」
すうっ、とゆるりとした袖から手が伸びて、シャルランテの髪を激しく掴み上げる。
「あぁッ!」
苦悶の声を上げるシャルランテを意に介さず、悪魔は口を開いた。
「お前は、魔王の復活を告げる神託を受けたらしいな」
だからこそ勇者が召喚された。
ならばこそ、知っていてもおかしくは無い。
そう、悪魔は独り言ちる。
「──言え。魔王は、我らが王は何処に居る?」
その闘牛が如き両眼が怪しく光った。
シャルランテは弱々しく、されど強い意志を感じさせるように首を振った。
「言え」
悪魔の拳が腹に突き刺さる。
シャルランテは胃液を吐いた。
「例、え……しって、いた、としても」
禍々しい眼光を放つ悪魔と対照的に、シャルランテの紫瞳は清廉なものを宿していた。
それは人の眼だ。覚悟だ。
死を厭わぬ覚悟。
シャルランテは幼いながらにして、既にそれを身につけていた。
「悪魔には、教えない」
ばちぃ、とシャルランテから溢れる魔力が紫電へと変わり、悪魔の手を焼いた。
驚いた悪魔は思わず手を離し一歩下がったが、目前の少女にしてやられた屈辱からか、やがてその眼にめらめらと炎が熾る。
「くく、く……くは、くはははははははははははははッ!いや、想定内だ!想定内だとも!人間のガキが自分の立場を弁えず、この私に逆らうのはな!」
悪魔はそう言って、さも可笑しそうに手を顔に当てた。
そして、
「ぐぅぅっ」
放った蹴りが、シャルランテの頭を蹴り飛ばした。
悪魔は執拗に蹲るシャルランテの頭を、腹を、脚を、腕を、踏み付け蹴り飛ばす。
「だがなァ!あまり調子にッ、乗るな、よッ!人間如きがッ!」
「う、ぐッ、ぅッ、あッ!」
呻くシャルランテ。
内頬が切れたのだろう、口の中に鉄の味が広がった。
蹴るだけ蹴ってようやく満足したのか、悪魔は一息吐くと、足を止めた。
「ははっ、いいだろう!その言葉が何処まで真実か、見せてもらおうではないか」
そして、その眼を孤の形に歪ませる。
「糜戒蟲ども。体の端から、決して殺さぬように、少しずつ齧ってやれ。その小娘が自ら話したくなるまでな」
悪魔の言葉に、蟲達は沸き立ち、尖った前脚を蠅のように擦り合わせる。
糜戒蟲の中でも特に大きな個体が天井を蹴ってシャルランテの元に降り立ち、人の腕を複雑怪奇に捻じ曲げたような後ろ脚で擦り寄った。
そして、その糜戒蟲はシャルランテの小さな足を見てにやつき。
涎を垂らしながらその大顎を開いて。
そのまま、噛みちぎ、
「──そこまでだ」
ぐしゃり。
抵抗する暇も無く、目の前に突然現れた男に叩き潰された。
「ッ!?何者だ!」
悪魔はばさりと身を翻し、その男から距離を取る。
何の気配も、前触れも無く、自らの知覚を完璧に欺いて男は現れた。
異様だ、警戒に値する、と悪魔は判断した。
「あ……ああ、あ……」
その男は悪魔の事など全く眼中に無いかの様に、黙ったままシャルランテの方へと振り返り、彼女をそっと抱きしめた。
「申し訳、ありません。姫様。遅れ、ました」
そこに居たのは、シャルランテの執事。
彼女の騎士にして、彼女の英雄。
「ハ、シュウ……!」
痛ましい顔をして、こちらを見る彼。
そんな顔をしないで。
貴方は何も悪くない。
そんな想いが、喉を通ろうとして。
身を包む温もりに安心したのか、シャルランテの意識はふっと途絶えた。
ずっと見ていた。
悪魔が、こいつの腹を蹴って起こすところからずっと。
オイシイところで登場しようと、《誰も知らぬ》で隠れて、わざと見過ごした。
正直、シャルランテが痛めつけられている事に思うところが無いわけではない。
ざまぁ、と思う気持ちもあれば、何を俺の獲物に手出ししてんだ、と思う気持ちもある。矛盾した感情の折衷案として少し傍観してみたはいいものの、どの感情が今の俺の最も強い感情なのかはわからなかった。
(まぁ、とりあえずこの悪魔はボコるが)
強引に《我が意に従え》でシャルランテの意識を乗っ取り、強制的に彼女の気を失わせた俺は、続け様に自分ができる最高の水属性回復魔導をかけてから、《誰も知らぬ》でシャルランテの存在をこの世界から隔離する。
これで俺が呪いを解くまでシャルランテが起きる事は無い。
そして、俺以外の誰もこいつには触れられない。
「………《黒刻》」
眼の奥で蝙蝠が羽撃いた。
抑えていた《黒刻》の制限を解いたことで、全能感が込み上げてくる。
だが今は何故かそれが、鬱陶しかった。
「──おや。同族だったか」
悪魔が、俺を見てそう言った。
「大聖殿で見た顔だな?もしや、貴様が助けてくれたのか」
「……ああ」
なるほど。
俺は疑問が解けてスッキリした。
思っていたよりもアッサリと答えが出た事に拍子抜けする。
やけに悪魔の声が耳障りだと思っていたが──どうやら、俺は少しばかりイラついているらしい。
「そうか。流石の私でも大聖殿に糜戒蟲は持ち込めなくてな。そこそこ苦戦した。その件については感謝しよう」
だから、まあ。
「だが、私の糜戒蟲を殺したのは一体どういう了見だ?」
取り敢えず、
「死ねよ」
轟音を立てて踏み込んだ俺は、悪魔の顔面めがけ真っ直ぐに拳を突き出した。
だが、止められる。
気持ち悪い糜戒蟲とか言うらしい虫ケラが肉壁となりながらも、俺の腕に噛み付いていた。
「邪魔だ、虫ケラァ!!」
腕に纏う闇のオーラが膨れ上がり、蟲を弾き飛ばす。俺はそのままオーラを触手の様に動かして蟲を圧し潰した。
飛び散る蟲の体液。
「踊れ《糜戒蟲咒》」
だがその一言で、破潰された蟲の体がどろりと溶け、その液状の質感を保ったまま捻じれた縄の形へと変わった。そして縄の所々が裂け、そこから弧を描いた目が現れる。
「チッ、きめぇ!」
俺はその液体の荒縄を闇のオーラで薙ぎ払おうとするが、縄は絡みつく様に蠢き俺の全身に降りかかる。
だが、所詮は液体だろう。
縄を無視して体を動かせば、大した抵抗もなく動けた。
「ぐっ!?」
しかしその瞬間、俺は全身に燃える様な痛みを感じた。脳を抉られるような痛みに呻き声が漏れる。
どろどろとした液体が俺の身体を爛れさせ浸食し、血煙が上がっていた。
悪魔が嗤った。
「くはっ、痛かろう、痛かろうて!糜戒の呪いは貴様の存在そのものを爛れ蝕む呪いだからなぁ!」
悪魔が手を広げると、其処彼処を這っていた蟲達が全て姿をどろりとした液体に変え、捻れ歪んだ太縄の形状を模して悪魔の周囲を漂う。
それと同時に悪魔の顔面が服ごと捲り上がり、その本性が露わとなった。
「木っ端の下級めが、この私に刃向かう」
「はは、舐めんなよ」
咆哮。
悪魔が何か言っていた気がするが、無視して《黒刻》の出力を更に上げる。
この呪詛の本質は、ただ俺の肉体を強化する呪という訳では無い。
《黒刻》とは俺の内に流れる力そのもの。
荒れ狂う黒い大河から、力を汲み上げる呪い。
「があああぁぁッ!!」
もっとだ。もっと。
もっと、力を。
俺には奇妙な確信があった。この呪いが、この俺が、この程度の呪いに負けるはずがないと。
「ああああアあああアアあァ!!」
体から呪いが溢れ出る。
それは空気を侵食し、空間を侵食し、そして悪魔の呪いをも侵食した。
「馬鹿な!?」
「オラァァ!」
自慢の呪いを跳ね除けられ、驚愕の声を上げる悪魔。
その間抜け面に、俺は拳を叩き込んだ。
奴の長い口吻がひしゃげ、砕ける。
「き、貴様ァァァ!!」
悪魔がその無数の猿の腕で掴みかかってくるのを、闇のオーラで作った触腕で止める。
「お?」
俺はその手応えが、予想していたよりも軽いことに拍子抜けした。
手に負えないようならラファエロが来るまで《誰も知らぬ》なんかで時間稼ぎをするつもりだったが、案外何とかなりそうだ。
「ぐぅ、ぐ、ぐぐぐ」
悪魔が必死で押し返そうとするが、俺はビクともしない。力の差は歴然だった。
余りにも必死すぎる悪魔の顔がコミカルに見えて、笑いが込み上げてくる。
くつくつ、と悪魔を笑っていると、ふと思ったことがあった。
それは、俺の《呪詛》と悪魔の呪いが同じものではないか、という事だ。
こんな気持ち悪い生物の使っているものと一緒にされたくないというのは本心だが、何となく性質が似ている気がする。
「確か、《糜戒蟲咒》、だっけ?」
不思議と、出来る気がした。
所詮、大した事のない悪魔の呪いだ。俺に出来ないはずがない。そう思った。
「こんナ感じか?」
悪魔を抑え込む俺の触腕から、無数の目が開く。
じゅうっ、と音がして、悪魔が悲鳴を上げた。
「ぎ、ぎいいぃィぃぃいッ?!」
悪魔の腕が溶け落ちる。
ぼたぼたと、濁り混ざって黒となった肉が、とろみのある液体となって床に落ちた。
「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なァッ!私の、この私の!?」
腕は、再生しなかった。
ラファエロに斬り落とされても回復したその怪腕は、今や溶け落ちる腐肉の悪臭を放つのみ。
「何故だ何故!何故、貴様が我が《糜戒蟲咒》を使える!?」
「知るカよ」
再び殴る。
呪いによって更に強化された拳が、悪魔の腹に突き刺さる。
「ガァァァァッ!!」
悪魔が叫び、《糜戒蟲咒》が俺にまとわりつこうとするが、俺の纏う闇のオーラがそれを消し飛ばした。
「あり得ん!この私が、この私が!」
「喧しい」
思いっきり頭を蹴り飛ばすと、悪魔は面白いように吹き飛んだ教会の壁に激突した。
「この私ga、こノ私ガ敗レるnnnnaど、ありりリりリRRrRrrrr aaAaAaaaAAaaa!!!!」
悪魔は気が狂ったように叫ぶ。
腕を失くしたせいで狂ったのだろうか。
まぁそんなことはどうでも良いけど、と考える俺の目の前で、悪魔はその肉体を、教会の天井に届くほどに肥大化させていく。
同時に、まだ残って居た虫ケラ達が、その身を《糜戒蟲咒》へと変えていく。
無数の目を持つ荒縄と化した《糜戒蟲咒》が悪魔に絡みつき、失われた悪魔の腕を模る。
そして悪魔は、その呪いの腕を振るった。
「Sssssineeeeeeeeeeeeeee!!!」
「何言ってるかわかンねェよ!!」
俺も無数の触腕を更に生み出し、それらを振るう。
悪魔の腕と俺の触腕がぶつかり合い、びりびりと空気が振動する。
そして両者は拮抗し───僅かな時間もかからず、その均衡は崩れた。
勝ったのは当然、俺だ。
「GYAAaAaaAアaaAaAAaAAaAアアAAaaaAaa!!??」
俺に身体の一部を更に溶かされ、苦悶の声を上げて身をよじる悪魔。
俺はその巨体を触腕で上から圧し潰すように抑え込み、床に引きずり倒す。
天井から、パラパラと埃や粉塵が舞った。
「ひゃは。ザマぁねぇなァ」
仰向けで固定された悪魔は、動く事も出来ずにじわじわと俺の触腕で溶かされていく。
俺はゆっくりと、地に伏した巨体の上に乗った。
見下ろせば、怒り、苦悶、恐怖の感情がないまぜになった悪魔の無様な顔が見える。
そこには轡を噛ませるように俺の触腕が絡みつき、最早声すらあげる事も許されない。
「こういうの、ナんて言うンだろうなァ」
地球にいた頃、何処かで見た事のある光景だ。
どこで見たんだっけ。
「ああ、そうだ」
思い出した。
俺はポン、と手を叩き、
「屠殺場の豚だ」
にんまりと笑った。
「じゃアな」
心臓を抉り出してフィニッシュしてやるよ。
右手を貫手にして、悪魔の胸であろう部分に叩き込む。
「ン"ンン"ン"ン"ン"ンン"ン"!!」
声にならない絶叫が響いた。
殆ど抵抗なく悪魔の胸を貫いた俺は、悪魔の心臓を探して内部を掻き回してみる。右手を動かす度に悪魔がびくんびくん震えるのが面白い。
しかし、暫く探してみたがそれらしきものは無かった。
もしかして悪魔に心臓は無いのだろうか。それとも胸部に無いだけか?
「ンん?」
手を引っこ抜こうか、と俺が考え始めた時、右手に何か硬質なものの感触があった。
「なんだコレ?」
「ン"ン"ン"ン"ンン"ン"ッッ!!」
悪魔の抵抗が激しくなる。
もっとも、完全に俺の触腕によって抑えつけられているので殆ど変わらないが。
そうかそうか。そんなに嫌か。
「なら、引ッこ抜イてやるよ」
それを掴んで引き抜こうとするが、結構な力を込めても中々引き抜けない。
「お?中々固ェな……せェ、のッ!!」
「ン"ン"ン"ン"ンン"ン"ン"ン"ン"ァッッ!!!」
目一杯力を入れて引っ張ると、今日一番の悪魔の悲鳴と共に、ぶちぶちと音を立てて引き抜くことが出来た。
「おぉ……何だ、コレ」
俺が引き抜いたのは、蒼黒い光沢を持つ、立体パズルのようなものだった。その見た目は、簡単に言えば、無数の長さと太さの違う直方体を縦横無尽に組み合わせたような外観。
悪魔の血と脂肪に塗れたそれは、てらてらと鈍い光を放っていた。
俺がその立体パズルに目を奪われていると、悪魔が痙攣し、段々とその動きも弱々しくなっていった。
「おお?もしかシて、死ぬのか?」
俺は絡みつけていた触腕を解き、悪魔から飛び降りる。この立体パズルが心臓の役割をしていたのだろうか。
軽く蹴飛ばしてみるも、悪魔は呻くだけ。つまんねぇな、オイ。
「…………ォ…ぁ…」
「何だ何だ?遺言か?」
悪魔が遺言なんてするかは微妙だが。
しかし、蹴飛ばしてもまともに動くことも出来ない所を見ると、もう決着はついたと言ってもいいだろう。
存外、あっけないものだ。悪魔といってもこの程度か。
戦闘が一瞬で終わった事に俺は嘆息する。
こりゃ、大聖殿で貴族達を操ったのは正解だったな。あれらのお陰でラファエロの動きを制限する事が出来た。それが無ければ、すぐにこの悪魔はラファエロに滅ぼされていただろう。
「例eェ……地ni、堕ちヨうtモ……」
悪魔が途切れ途切れに、聞こえるか聞こえないかのか細い声で呟く。
「………我ラ、御身ノ旗下二」
「あぁ?って、痛ッ……!?」
突然こめかみがずきりと痛んだ。
しかし、手をやるとすぐに痛みは引いた。
僅かな痛みで、しかもすぐに消えたが、俺はそれが苛立ちに変わった。
舌打ちをして悪態をついた。
「何、言ってやがんだ、キモチ悪りぃ………死ね」
俺は闇のオーラを無数の触手へと変え、それら全てを悪魔の頭部へと叩き込んだ。
ぐちゃり、と音を立てて何かが飛び散る。
そして、悪魔は動かなくなった。
決着……!
悪魔瞬殺……!
次回、エピローグ……!




