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バイクに乗らない時は鍵をかけておくべきです。

話が進まないw

本日二話目


アラームがピピピッ、ピピピッと規則的に鳴る。

スマホのアラームではなく今時珍しい目覚まし時計だ。


「んー」


俺は寝返りをうちながら、目覚まし時計を全力で叩き、耳障りな音を消す。


「……ふぁあ」


目覚めはいいタイプなので、二度寝はしない。

大きく伸びをして欠伸をする。

時計は十三時を指していた。


昨日ーーつっても今朝四時ごろに帰った俺は、五時にようやく寝床に着いたので、八時間は睡眠時間を確保できたようだ。


スマホを見るとゴリからトークアプリの通知が五件ほど来ていた。


今何してる?を三十分ごとに送ってくんなよ。

くそ面白いじゃん。


スマホを机に置き、歯磨きをした俺は寝汗が気持ち悪かったのでシャワー浴びることにした。


そんで諸々の身支度を終え、部屋を出る。

俺が住んでいるのは一人暮らしにしてはもったいないくらいデカいマンションだ。

普段色々やっているからか、部屋には最低限のものしか置いていない。

女を連れ込んだ時に反応が大分変わるしな。


そんで鍵閉めると、ゴリから電話がかかって来た。


「もしもし、ゴリ?」


『あ、ハシュ?なんかさ、昨日のヒョロガリ死んだみたいだぞ』


「は?何でよ?」


金蔓ヒョロガリが死んだ?


歩きながらエレベーターに向かう。

俺の部屋は高層マンションの十七階だ。


『何でも首なし死体になってたらしいぜ。俺がヒョロガリってわかったのは全裸だってことと、発見された場所がいつものとこだったって情報からだ』


ゴリがいつにもなくマジなトーンで会話している。

マジかよ、こんなトーンなんて一年五ヶ月振りだよ。

ゴリは大体ヤバい時は真面目だ。

そこが面白いところでもある。

普段とのギャップがね。これがギャップ萌えってやつか。


「やべぇな。首なしとかどんなホラーだよ。そんな猟奇的な奴がいるとか都会ヤベェな」


『誰がやったかはわかんねぇけどよ、もしそいつが俺らとヒョロガリが一緒にいたとこ見てたとしたら、俺らも狙われんじゃねぇ?』


「……かもな」


『俺は頭悪いからよ、ハシュに何か考え出して貰おうと思ったわけよ』


「おう、じゃあまずは合流するか」


『おう。“ジョナサン”で待ってるわ』


「オーケー」


エレベーターの扉が開く。

俺は乗り込み、すぐに扉を閉めて地下一階の駐車場へ急いだ。


愛用のバイクに乗り込む。

愛用っつってもパクったやつだけどな。

鍵さしっぱの馬鹿がいたからな。


エンジンをかける。


ゴリが言ってた“ジョナサン”っつーのは喫茶店の名前だ。めちゃくちゃファミレスの名前と被ってるのが最高に上等な感じだ。

しかも喫茶店なのにほとんどファミレスみたいなことばっかしてるしな。

確実に寄せてるのが丸わかりだ。


「さて、行きますか」


エンジン全開、行き先は喫茶店ジョナサン。


アホみたいに切りすぎたマフラーから吐き出される轟音をBGMにして、俺は走り出した。




□□□




ちりーんとなる呼び鈴の音に顔を顰めながら、俺は扉を開けた。

ジョナサンは小さな喫茶店なので、中に入って見渡せば全ての席が一望できる。


客の中にこちらに背を向けている金髪ドレッドヘアを発見。まずゴリだろう。


「よぉ」


そいつに声を掛ける。

振り向いたそいつは、やはりゴリだった。


「ハシュ!待ってたぜ」


「おう、待たせたな」


ゴリの対面の席に座る。

俺は早速話を切り出すことにした。


「それで、ヒョロガリの話だがよ」


「おう!それなんだよ!俺さ、昨日から誰かに尾けられてんだよ」


「はぁ?」


ゴリはいつから自意識過剰になったんだ。

生まれてこのかたずっとお前はゴリラだろうが。

ストーカー被害に遭うのは一万年早えよ。


俺の胡乱気な視線に気づいたのか、ゴリは慌てて言った。


「いや、マジなんだよ!すんげぇ視線を感じるんだけどよ、振り向くと誰もいねぇんだよ。でも気配はするからよぉ、家まで尾けられたらたまらねぇと思って昨日は徹夜してんだよ」


「マジかよ…」


ゴリの野生的感覚は侮れない。

なぜならゴリラだからだ。

まあ、冗談抜きでこいつの感覚は鋭い。


「今は?今は視線感じんのか?」


「いや、それがよ…今は感じねぇんだよ」


「はぁ?……っ!?」


背中にぞくり、と嫌なものを感じて俺は辺りを見回す。

だが相変わらず寂れた店内、俺ら以外に客はいないしあとはずっと奥に引きこもってるマスターくらいしかいないはずだ。


「オイオイ、ハシュ、もしかしてお前もかよ?」


「……かもな」


さっきから粘っこい視線が途切れない。

こんな視線は久しぶりだ。

殺気がこもりまくった気持ち悪い視線。


「ゴリ、店出るぞ。お前バイクか?」


「おう、どこいくんだよ?」


「知るかよ、まずは視線の元を探すんだよ」


「オッケー」


ゴリがダブルパイセップスをする。

だから乳首見せんなって。

くそ面白いから。


取り敢えず水だけ飲んで店を出る。

ゴリも水しか飲んでなかったみたいで、勘定はしなかった。


ジョナサンの横の駐車場にはバイクが停めてある。

そこに俺らは急いで向かった。


「オイオイ、マジかよ…」


隣でゴリが呟いた。

俺も、呆然とした頭でそう思った。


目の前にはジョナサンの横の駐車場に駐車していた俺とゴリの二台のバイク。

それが滅茶苦茶に破壊されていた。


ガソリンがポタポタとたれ、独特の刺激臭がする。

配線が切られているのか、時々火花が散る。


「俺の新車が…」


フラフラとバイクの残骸に近寄るゴリ。


「馬鹿!離れろ!」


さっきから視線の殺意が強くなってんだよ!


チカ、とまた火花が飛んだ。

それが、ガソリンの池にぽちゃんと落ちる。


「ちぃ、バカゴリラが!」


俺はダッシュでゴリの元へ向かい、その首根っこを掴んで後ろに飛ぶ。


それとほぼ同時。

間髪を入れずにバイクが爆発した。


「俺のバイクがああああああ!!」


「俺のバイクも炎上してんだよ!」


パクリもんだけどな!

立ち上がり、体の土や埃を払う。

目立った外傷は俺にもゴリにもない。


周囲を見渡すが誰の気配もない。


「オイオイ、おかしくねぇか?」


バイクを失ったショックから何とか立ち直ったゴリr…ゴリが立ち上がる。


「あぁ……こんな爆音が鳴ってんのに誰も見にこねぇ」


「ハシュ、今視線は感じてるか?」


「いや……けどよ、殺気がどんどん強くなってるぜ」


爆発を回避した辺りから視線は途切れた。

けど、さっきからものすげぇ殺気がガンガン飛んで来やがる。

暗く澱んだ、ヘドロみたいにまとわりつくような殺気が、夏の蒸し暑い空気と相まって気持ち悪い。


ゴリが冷や汗を垂らす。

感覚の鋭いゴリのことだ、この殺気が近づいて来てることを察知したんだろう。


「さぁて、殺人鬼のお出ましか」


ゴリの背中越しに、駐車場の入り口から人が来た。

俺が今まで体験した殺気の中でもトップクラスの陰湿なソレを放つそいつは、手に長めの鉈を持っていた。


血と錆で暗褐色に染まったその鉈は、まだ血が乾いていないのだろう、ぬらぬらと不気味な光沢を放っている。


「あんなんに切られたら病気もらいそうだな。尖圭コンジローマとか」


「バカ、破傷風だろ」


「そうだっけ」


だからダブルパイセップスやめろって。

くそ面白すぎて緊張が途切れるじゃねぇか。


「……ぁに……ゆう…とし…ょうか………」


「あ?何言ってんのかわかんねぇよ!」


殺人鬼がブツブツと言っていることにイラついたゴリが吠える。

鉈を持っている人間は男で、外見は至って普通そうなサラリーマンだったが、その目はどこまでも暗く、不快なものだった。


殺人鬼を見たときからゴリはプルプルと震えている。

こういうことする時は大体ゴリがマジギレする時だ。


「絶対テメェはブチ殺す!」


お、ゴリが殲滅アサルトモードに入った。

三ヶ月振りだな。

殲滅モードっていうのは普段をバナナ10本分とするとバナナ100本分くらいの力を発揮する状態のことだ。

なぜバナナで例えるかっていうとこのモードに入ったゴリはゴリりょくがハンパないから。


「おい、ゴリ。ブチ殺すのは俺も賛成だけどよ、まずは俺らの有利な場所に誘導すんぞ。二対一とはいえ、あの鉈はヤバそうだ」


「……ちっ、わかってるよ」


こういう冷静な判断ができるからゴリは面白いんだよ。


「おっしゃ、いくぞ!」


ゴリに合図して、殺人鬼とは逆方向へダッシュ。

駐車場のフェンスを勢いに任せて飛び越える。


「……ゃの……らを………する……!!」


殺人鬼も走り出す。

だがその速さはあくまで普通の男性のもの。

貞子みたいに速くなくてよかったぜ。


「おら、着いて来やがれ……ブチ殺してやるからよ」


俺はニヤリと笑って、目的地へと走り出した。


異世界ものなのにややホラーになってる…だと…!?

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