ボディの完成
ティトとアウラは、アウラの仕事場に居た。
仕事場は、工具や材料で一杯だった。その部品が材料かスクラップかは、アウラだけが知っていた。と、いうかゴチャゴチャになった部屋の中で必要なモノのありかをアウラだけが知っているということだった。 ティトは、じっとして何も触らないようにしていた。なぜかというとティトは、以前、アウラの作りかけの部品を捨ててしまったことがあり、アウラは1週間、口を利いてくれなかったからだ。
「ティト、出来たわ」
アウラは、ティトに、早くと手招きした。ティトは、やっとの思いでバリケードを抜け、アウラのところに着いた。
アウラの横にはティトの背よりちょっと高いものとアウラの背丈のモノにシーツが掛けられていた。背の高い方のシーツの端をアウラは持っていた。やっとティトはアウラの前にやってきた。アウラは、姿勢を正し、深呼吸すると話はじめた。
「うぉほん。この度、私、アウラはヒューマノイド型アンドロイドを開発しました。身長185センチ。95キロと軽量化しより人間に近づけました。また、自己再生ナノマシンにより、故障しても自己修復できます。さらに、最新型の学習型人口知能を搭載する予定です。この人口知能はドクター・ティトが担当します」
アウラは、手を小さく、くるくると回し、ティトに拍手を要求した。ティトは、わかったよ。と拍手した。
「アウラ、早くみせてよ」
「それでは、ご覧ください」というと、シーツをさっと取り去った。
そこには、すらっとしたハンサムな青年が立っていた。
「なかなか美形だな…どこかで見た顔だけど」ティトは、アンドロイドの色々なところを触っていた。
「映画ライブラリからよ。ピンときたこの人に決めちゃったの」アウラはちょっと恥ずかしそうに言った。
「名前は決めたの?」ティトは、ハンサムな青年の周りをゆっくりと回りながら訊いた。
「えーと」アウラは上目遣いで考えると答えた。
「ブリキマン…そうブリキマン」それは、完全に思いつきだった。
「ブリキマン?…オズの魔法使いの?僕はライオン?それともカカシ?」
「ブリキマンに考える脳みそを入れてやって、ドクター・ティト」
「ああ、わかっているよ。ちょっと今回は懲りたいのだ。僕の考えているのは、自分の生命…」ティトは自分が言った“生命”と言う言葉が的確かどうか首を傾げたが、すぐに会話を続けた。
「自分の存在を維持することを想像または連想させる事象に出くわすと、ある電気信号が出るのだ。人間でいえば、心地よいとか快感を得るみたいな。そう、君は、そのような感覚が、つまり快感を得るためにここまで進歩してきたと思わないかい。だから、こいつも自分から進歩するようにしたいのだ」
「わかりました。ドクター・ティト。私は早く動かしてみたいの」
アウラが話に割り込んだ。ティトの説明はアウラにはどうでもいいことらしく、ドライバー右手に持ち、左の手のひらにトントンを打ち付けていた。それに気づいたティトが肩を竦めて言った。
「すぐ始めるよ。でも、“脳みそ”がほしかったのは、カカシだよ」
二人は笑った。




