すべてをもとに
ケンとレナの二人は考え続けた。あれから、ずっとだ。
永遠に生きる、生き続ける。私はだれだ、私はだれでもない…。
最初に口を開いたのはレナだった。
「…私たちは、同じなの?」
「…同じ?」
「私たちは、コピーなの。この身体はただの入れ物?」
僕は、ティトなのだろうか、ティトのために僕らは生かされているのか、僕がティトだとしたら、ティトが生きていることになる。
「ティトの実験は成功したの?」
「わからないさ、永遠の証明は出来ないんだから…」ケンは右腕でかるく顎を支えて歩き回った。
「私は私。アウラじゃない」レナが言った。
「僕もティトじゃない。全く同じ環境なんてできるはずが無い」
ケンは、ティトのプログラムを一掃するプログラムを作ることにした。しかし、この作業はケンにとっては辛いものだった。ティトのプログラムを追跡する際、ケンの推測がことごとく的中するのだ。まるで、自分で作ったかのように…。
あの夢の様にティトの記憶があるのか、僕はティトなのか。
ケンは、最後の文字を打ち込むとそのプログラムのアイコンをじっと見ていた。
「出来たの?」レナが横に座った。
「なんか、一生分考えたって感じ。疲れたわ」
「ああ、でもこのプログラムで開放されるよ」
ケンは、エンターキーに指を置いき、レナを見つめ同意を求めた。レナは頷いた。ケンはキーを押した。
スクリーンに削除中のメッセージが表示された。ものすごいスピードでカウントダウンが始まり、あっと言う間に終了メッセージが表示された。
その時、ルークが部屋に入ってきた。
「通信電波捕獲網の準備は、できていますか?」ルークの言葉で、二人は現実に戻った。
「ルーク・・・。できているわ」レナが大きな声で言った。
「ルーク、もう、『旅立ちの儀式』は、なしだ」ケンがルークに言った。
「どういうことです?」
「もう、私たちの世話はしなくていいよ。管理しなくていい」ルークが一呼吸開けて言った。
「…パイオニア号の件が終了したら、私たちは、この宇宙船から出たいです」ケンとレナは、顔を見合わせた。
「私たち?」
「僕とマザーです」
「マザー…、そう」
レナは、驚いたような目をルークの顔をみて直ぐにルークの右手の汚れた絆創膏を新しい絆創膏に取り換えた。ルークは、新しい物を買って貰った子供のように、新品の絆創膏を見つめた板。
「わかったわ。あなたもマザーも十分に私たちに尽くしてくれたわ、開放してあげる」と言って、レナは、ルークを抱きしめ、軽く頬にキスした。ルークは、目の奥が妙な感じがしていた。それは、今まで経験したことのない感覚だった。




