表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
次に来る者  作者: リュウ
29/34

 ケンとレナは、百個の通信電波捕獲網装置を整備し、第一弾を発射した。

 通信電波捕獲網装置は、パイオニア号の周りにぐるりと配置され、稼働時には、パイオニア号のあらゆる通信ができなくなる。通信による脱出も出来なくなるだろう。

 通信電波捕獲網装置は、岩のように、カモフラージュされていた。

「これが最後ね」レナが額の汗を拭いていた。

「ああ、また、明日、百個だ。じゃぁ、また、明日」と、ケン。

「おやすみ」レナが、手を振る。

 ケンは、『旅立ちの部屋』や『旅立ちの儀式』のことが、頭から離れなかった。ずーと考えていた。

 ケンは、自分の部屋に戻ると、転がるようにベッドに横になり、あっと言う間に眠りに落ちた。

 部屋の奥は、あの重々しいカプセルがあった。その横には生命維持カプセルが二台置かれていた。

 少し視野がぼけている。右手に握っていたモノをルークに投げた。ルークはそれを受け取ると耳の横にあるコネクタに差し込んだ。

「…これをつくるのですか?」

「ああ、九○パーセント出来ている」

「あとは、組み立てと動作確認だけさ」

ビービービー。

アラームが鳴った。アラームは1台の生命維持カプセルからだった。生命維持カプセルの計器を確認し窓を覗いた。そこには品の良い女性の顔があった。

「アウラをこいつに移す。手伝ってくれ」ルークに目で合図した。

ルークは、生命維持カプセルからアウラをそっと抱き上げ、あの重々しいカプセルに移した。

 アウラの顔を撫ぜた。額、眉毛、目、鼻、唇を指でなぞった。

私は限りない愛しさで胸が一杯になった。私は泣いていた。

「アウラ、聞こえる?」私は、アウラの耳元で囁くような優しい声で言った。

「…きこえる」小さな力のない声だった。

「とても、疲れたわ。眠ってもいい。いつか、また会いましょう。ティト…」

「ああ、わかった…」私は手で顔を覆った。

 私はスイッチを押した。ブーンというモーター音をたて、カプセルの蓋が閉まった。

そして、モニターに映る脳波計や心電図を確認していた。

アウラの意識はすでに無くなっていた。

 私はキーをポンと叩くと、ソファーに深々と腰かけた。

『実行します』アナンスが聞こえる。

『カプセルを解放します』カプセルのねじ式蓋がゆっくりと回転した。

『生体ナンバー○三七五○。生体記録を開始します。カプセルを密閉します』

蓋がゆっくりと回転し、蓋が閉まった。モニターには心電図と脳波が刻々と表示されていた。

ピーピーピー。

『心臓停止』

『脳波が止まりました。生体ナンバー0387、生体記録を終了します』

『受精卵を解凍します。生体ナンバー0388、生体記録を開始します』

「ルーク、アウラの生体記録のコピーを取ってくれないか?それと、アウラの教育プログラムと検索参照履歴も追加してくれ」

 視界がぼやけていく、目の前が白くなる…。身体が沈んでいく、下へ、下へ、限りなく下へ…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ