マザーの心配
三人は『対話の部屋』に来ていた。この宇宙船のメインコンピュータであるマザーと話をするためだ。三人が部屋に入ると静かに扉が閉まった。その扉は重々しく感じた。
「マザー。我々がなぜ、ここに来たのか分かっているだろう・・・。リッキーのことだ」
ケンはマザーの返事を待った。
マザーがポログラムで作った姿は髪の長い、美しい妖精のような少女だった。その少女がゆっくりと顔を上げて言った。
「ケン、あなたのしたことと同じようなことです」
「僕と同じ?」
「偵察ロボットを送ったでしょう?」
「あちらの情報が知りたかったから」
「そう、私も知りたかったから」
「あなたは、僕たちの事を知っているじゃないか」
少女は手を後ろにまわし腰を軽く振りながら言った。
「人間の頭の中は、わからない。あなた方が私をどう評価しているか確かめたかった」
三人は顔を見合わせた。マザーは、三人の表情を確認すると話を続けた。
「私は人間を助けるために作られた。だから、貴方たちの私に対する評価に関心があります。わかるでしょう・・・」
「わかるよ。だけど、マザー、気になるのなら直接僕らに訊けばいいじゃないか?わざわざリッキーを送らなくたって…」ケンは困惑していた。
「…これからは、そうします」そう言うと少女はチラッとケンを見た。
「心配することはない、マザー。あなたはきちんと私たちを守ってくれている。私たちは、間違いなく評価している、感謝している本当だ」ケンは、同意を求める様に二人をみた。二人は頷いた。
「マザー。私たちがこうして生きていられるのは、あなたが色々なシステムに支持を出しチェックしてくれているからで、本当に感謝しているわ」レナが付け加えた。
「わかったわ、もう、探ったりしない・・・」少女は下を向いたままだった。
「これからは、やめてくれ。大怪我をするところだった」ケンは、強い口調で言った。少女は、顔をあげ、直ぐに答えた。
「あなた達を攻撃したのは私ではない。リッキーは、途中から乗っ取られた」
「乗っ取られた?」
「リッキーは、私の作ったものではない。船外で見つけて解析し使用したが、あの時、私の操作をはなれた。今、データーを分析中ですが、パイアニア号から通信があったようだ。このことは、既に船長に報告済みだ。ほら、船長から呼び出しだ」 三人のウエラブル携帯に連絡が入った。
三人は『対話の部屋』を後にした。




