アルフレッドからの破壊命令
フローレスとアルフレッドは、チェスをしていた。
結果は、フローレスの逆転勝ち。というか、フローレスには、最初から勝利は見えていた。
「どうしたのですか?最新の人工知能を搭載しているのに…」と、フローレスの機嫌は上々だ。
「フローレス様には、かなわないです。最新と言えば、私のほかにもいるみたいです」
「何処にいる?」フローレスが訊いた。
「私の情報では、アルゴ号にあるとか…。フローレス様には、敵わないと思いますけど。もし、自分が一番とか言うようなら、私がぶちのめしに行きますよ。フローレス様を知らないのかってね」
「その時は、私も力をかそう。必要なモノを言ってくれ」
「有難うございます。そう言っていただけるなら、鬼に金棒です」と、アルフレッドは深々とお辞儀した。
アルフレッドは、いつもの様にフローレスのご機嫌を取ると、自分の部屋へ早々と引き上げて行った。それは、チェスに勝ったフローレスのきついジョークを聞きたくなかったからと、外部からの信号を捉えたと通信システムからの知らせがあったからだった。短い脚をバタバタと動かし、自分の部屋に着くとドカっと椅子に座った。
目を瞑り一息いれると、カッと目を開いた。
「負けてやったのだよ、フローレス。いい加減、気付けよ」
アルフレッドはひとり言を言うと、通信システムに問い合わせた。
「何処からの信号だ」
「アンドロイド0311からです」
「0311…。アルゴ号。私がプレゼントしたヤツじゃないか」
アルフレッドは、記憶を確認した。
二十年前に、0311にアルゴ号に送ってやった。オーウェン、ウィルスのお土産つきでだ。
『オーウェン』、そう、私の設計者。私を破壊しようとしたから、あんな目にあったんだ。知っているのはアルゴ号の同僚ティト。きっと私の敵になる。その前に手を打っただけだ。
小型宇宙艇にオーウェンとアンドロイド0311を乗せて、アルゴ号に突入させた。そして、0311がウィルスを船内に拡散させ、アルゴ号は大打撃だった。
アルゴ号からの救助要請信号も確認したし、信号が途絶えるのも確認した。
もう、二十年も経っているのに、信号が来た?
アルゴ号は、存在している?アルフレッドは、ワナワナと怒りに震えていた。
「あの船がぁぁ、存在していたってぇぇぇぇ」
「この私を騙したというのか?この私を。下等のくせに」
アルフレッドは、大股で船内を歩き回り、上を見たり、下を見たり落ち着きがなかった。アルフレッドは急に足を止めると、アンドロイド0311に『破壊命令』を送った。
「これで、最後だ。アルゴ号」アルフレッドが呟いた。
「この目で確かめてやる!進路変更だ!」アルフレッドは、叫んでいた。そして、フローレスにどうやってアルゴ号を攻撃させるかを考えていた。




