それは、悲劇
アルゴ号の損傷部にアウラとルークが来ていた。ウィルス対策の為、エアロックされ分断されていた。
空気はないので、当然、アウラは宇宙服を着ているがルークはそのままなので、変な絵柄になっていた。配管が入り混じっているところの丁度裏側に穴が開いている。小さな穴だった。
「見付けた?見える?」ティトが画面越しにアウラに訊いた。
「あったわ…」アウラはコーキングガンを取りだし、穴を塞ごうとした時、事故が起こった。配管に傷がついていた。配管は、この傷により内圧に耐え切らずに吹っ飛んだのだ。
ビシッ。
アウラとルークが吹き飛ばされ、反対側の壁に叩きつけられた。
アウラは胸に熱いものを感じていた。アウラの目の前に赤いブツブツが漂っている。
(何?…血?)
「ティト、私、怪我をしたわ。血が出ているみたい」ティトはスクリーンに被りつき、アウラを見た。
「ルーク、アウラ、戻るんだ!」ティトは、慌てた。大好きなアウラが怪我をした。
ルークはアウラを素早く抱き上げ、緊急治療室に運んだ。
ティトは素早くアウラの服を脱がした。アウラの白い肌に真っ赤な血が滴り落ちる。
なぜか、ティトは涙が止まらなかった。
「アウラ、大丈夫だ」ティトはアウラの傷口から目を離さずに言った。
「ティト、こちらに。データーを取ります」ルークは手招きして慌てるティトを誘導した。大きなドーナツ型がアウラの頭からつま先までゆっくりと移動した。汚れを取り除きながら、スキャナーがアウラの怪我の情報を集めた。ルークが目でティトに終了の合図を送った。ティトはスクリーンを見た。アウラの体が映っている。まず骨折個所がブリンクし、次に出血位置が表示された。
「ここです」ルークが指差した。ティトはそこを見つめた。
「ティト…」その先は声にならなかった。
『このままではだめだ。アウラが死んでしまう。なんとかしなくては、大切なアウラが死んでしまう』ティトは考えていた。頭からアドレナリンが噴出しそうだ。アウラを助ける方法を検索し続けた。
今の状態で延命処置を行えば、アウラを生かしておける。ずーとこのままだ。アウラの健康的は笑顔をみることは二度と出来ないだろう。
『待て!落ち着けティト!何かあるはずだ!考えろ!考えろ!考えろぉ!!!』
ティトは頭を抱えひざまずいた。
その姿をみたルークは、何か頭の中心で膨大なエネルギーが発生しているように感じていた。
「マザー、アウラとティトを頼む」というと、ルークは戦闘機の格納庫に向かい走った。
「どこへ行く、ルーク!」ルークを呼び止めたのは、マザーだった。
「ここを開けてくれ!」ルークは格納庫の前まで来ていた。
「私の質問に答えなさい」マザーの強い口調で言った。
「パイアニア号だ、あの宇宙艇のせいで、アウラが死にそうなんだ」
「だから、どうするつもりだ」
「僕が、やっつけてやる。早くここを開けてくれ!」
その時、船長から連絡が入った。扉の横のスクリーンに表示された。
「ルーク、やめろ。時間を空けるんだ。今、動いてはいけない。我々は、やられたことにする。既に救難信号を発信した。時間を稼ぐんだ」
「ルーク、作戦を考えよう」と、落ち着いた声でマザーが言った。
ルークは、扉を右手で叩くと、崩れるようにその場に座った。
「わかったよ。どうすればいい?マザー」
「相手はいかれているんだ。ルーク、あなたは優しすぎる。そのままでは、簡単にやられる。もっと時間をかけよう」とマザー。
その時、スクリーンの中の船長が言った。
「ルーク、『対話の部屋』に集合だ。これは、命令だ」ルークは、ゆっくりと立ち上がると『対話の部屋』へ向かった。




