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創世の竜と漆黒のみこと  作者: 木瓜zombie
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prologue 王都ツリーアゲートのある日の朝

ネットで小説を書くのは初めてです

御察しの通り関西人でかなり不束者ですが、温かい目で見守ってください

これから(できる限り)週に一度くらいのペースで進めていこうかと思います


薄暗く長い廊下を、音を立てないように慎重に走る。


何せ朝の四時半なのだ。空間移動魔法を使っても良いが、術式を描くのが面倒くさいのと魔法の波動に敏感な城内外の者たちから安眠妨害だと非難される可能性があるので却下。


とりあえず爪先で小走りするスタイルで螺旋階段を駆け上がり、王子の書斎前までたどり着いた。


使用人であるメイドや執事にも休息は必要だが、宰相である自分にはもっと休みを欲しいくらいだ。無論、王子はもう少し休むべきだ。


宰相(わたし)を呼ぶということは、王子はもうすでに起きている、もしくはまだ寝ていないかのどちらかだ。どちらにせよ、自分の部屋に防御魔法を施して眠る神経質な私を早朝から魔力行使してまで自分を起こすのだから、なにか予期せぬ異常事態が起こったとしか考えられないが。


とにもかくにも書斎の扉を開くには合言葉が必要で、その合言葉は王子が信用している人物にしか教えていない。彼が幼い頃愛読していた、“秘密基地作り隊”というシリーズ物の中の設定をそのまま生活の中に反映させた訳だが、他の方法ではどんなに頑張ってみても開かないというちょっとした彼の憂さ晴らし…もとい楽しみになっているようだ。

扉の前に人が立つと王子の声でアナウンスが流れ、応答形式で扉の解鍵を行う。


ちなみにその合言葉は「開けゴマッ」という、言うのを少しためらわれる“呪文”である。


デンドリックアゲート王国の王都、ツリーアゲートの王城に住む宰相、アメトリン ・イムホテプ・ブログラ、二十五歳(通称メト)は蚊の鳴くような声で「開けゴマ」と言うと、そそくさとその中へ入ろうとした。


「駄目駄目、全然なってない。まず人差し指を前に出して」


突如食らった駄目出し。そして扉の取っ手はビクともしない。なんということだ。

緊急事態ではなかったのですか。

しかし、仮にも一国の王子の意向である。国に仕える者として、無視するなどということは許されない。

指示された通りに人差し指を前に出し腰に手を当てる。


「ひ、開けぇ〜ゴマッ」


「うーん、まあまあってところかな」


そう聞こえたと同時にひとりでに開く扉をよそに、歯をくいしばる漢|おとこ、メトの出血大サービスの瞬間であった。

この早い時間なので、誰かに見られているかもしれないという心配はないのだが、どうにも落ち着かない。開けゴマを堂々と言うにはまだ彼は若すぎるのだ。


「セラ様、いい加減あの合言葉変えてくださいませんか?」


「おはようメト、第一声がそれか?」


「これは大変失礼致しました。おはようございます。セラフィナイト・アーバス・デンドリック王子!本日も大変お麗しく凛々しいお姿でございます。して、今朝はどのようなご用件で?」


「そうなんだよ、聞いてくれメト」


ふぅ、と溜息を吐きながら大変疲れた御様子で髪をかきあげるセラ様。


戴冠式を目前に控える齢十八のうら若き王子セラフィナイトは、四大陸と、それに連なる十八の島からなるこの世界の四大陸の一つであり、統一された国となっている大陸全土を治めている、 デンドリックアゲート王国の王子、その人である。


広大すぎるとも言えるこの大陸をなぜたった一人の中心人物を立てて治めることができているのかというと。


そう、魔法である。


魔法とは、周囲の自然生命体からエネルギーを抽出し融合合成術式を用いることにより完成するものである。その過程は極めて困難で、歴代の魔術師、賢者、博士などがその生涯をかけて追い続け、神から賜った力として黙示録に各々研究成果を記してきたーーーと、一旦結論付けられてはいるものの、実際のところは前人未到の問題ではある。

魔獣ならまだしも、使える者と使えない者とが存在する人間の目に見える形で魔力が表れる事はない。


つまり、一般人には魔法を扱うことはできない。


しかし稀に、魔法を発動させることができる子供がいる。もともと魔力を体に宿しているという特別なタイプだ。

主に喧嘩をした時や怪我をした時など感情が高ぶった瞬間に期せずして魔法が発動されるケースがほとんどである。(感情に左右されるような能力であるという事がまた謎を深める一端でもある。)

その子供は自動的に国の重要機関へ就けるため、国立魔法教育学校(アカデミー)において国家レベルのスパルタ教育が始まる。


デンドリックアゲート王国では、王族の中から魔力の一番強いものが王になる。言うまでもなく王家の血筋の者は特に体内魔力保有量が多く王権神授説に拍車をかけている節がある。勿論、人間性や身体能力の高さも評価に入り、総合得点で序列が決まる。

しかし王を決めるのは、それだけではない。

デンドリックアゲート王国では長い間、創世記より共存しお互い信頼し合ってきたドラゴンの目に止まらなければならず、最終関門はデンドリックアゲートの守護竜(ドラゴン)の、言うなれば殿試をパスしなければ、王にはなれない。


ドラゴンは王にとって一生のパートナーとなる。

ドラゴンと契約を結ばないことには王にはなれないのだ。


四大陸のうち、最もドラゴンが多いのが、デンドリックアゲート王国のある中央の大陸である。それも、巨大な大型ドラゴンが多い。

しかしながらドラゴンは大変賢く、姿を見られることを嫌うので一般人が街中などで見かけることはまずない。

ドラゴン同士で縄張り争いをすることもしばしばあるが、神話の言い伝え通り人間との共存関係を保つため、人の住んでいるところにはこない。

創世時代から存在し、絶大な力を持ち、気高くそれでいて人間(みかた)に対しては穏やかな百魔獣の王とも言えるドラゴンに気に入られるためには、文武両道に秀でていなければならない。

そのため魔力を持たない一般人も、宝くじに当たるくらいの確率であると承知の上で日々己を鍛える者もいるほどである。


ドラゴンと契る事により、身体能力、魔力が共に格段に上がるからである。

その力を与えるに足る人物であるかどうかは完全に彼ら自身のさじ加減だ。


国立魔法教育学校(アカデミー)の生徒のうち特に優秀な者たちは男女関係なくドラゴンと契約を交わす機会が魔獣退治などの“実践の中”設けられることもしばしばあり、かなりシビアな世界ではあるものの志願者は絶えない。


四大陸のうちの三大陸中にある国々や、人間以外の知能の比較的高い種族と戦争をすることもあるので、竜騎士団にこれまた半ば強制的に入団させられ、竜騎士(ドラグナー)として軍事強化するという義務とも言える法律もある。


魔族や魔獣などから身を守るため、唯一人間と同じか、それ以上の知能を持つドラゴンと共存してはや数百年、デンドリックアゲート王国に未だ嘗てない危機が起こっていた。


というのが、国家防衛機関の八人の魔術師による高度な合成術式魔法により大陸全体に貼られた防壁の歪みである。

国内に魔獣などが侵入できないよう細心の注意を払って防壁魔法が施されたほぼ中央の土手っ腹に、なんとハリケーンのような渦ができているというのだ。


「これは俺一人の力ではどうにもならない。とりあえず渦付近を竜騎士団に警備させようと思う。セレストはいち早く行ってくれているようだから何かあったらすぐに連絡が来るはずだがな」


「ですが、一体どうしてそのような渦ができたのでしょう?何者かが国内に侵入しようとして魔法を解くにしても歪めては入ってこられません。それに戻すのも大変です。…もしや王子は心当たりがおありなのですか?」


「それはまだ国家環境捜査機関が調査中だ。それよりメト、俺はこれから休むから、お前がそこの書類を片付けておいてくれ」


見ると山積みになっている書類…ではなく、額縁と手紙がある。

どれもこれも未だ独身の王子へ向けた貴族の娘の肖像画……有力貴族からの婚姻の申し込みだ。

そろそろ本気で身を固めてもらわないと困る。本当に困る。

こんなものを宰相である私にどうしろというのか。

困り果てて抗議の声をあげようと横を見ると既にそこはもぬけの殻。

大方、空間移動魔法を無術式で無詠唱で発動させたのだろう。

“稀代の天才”と呼ばれ崇められる王子に末恐ろしさを感じながら、有力貴族の手紙を五十音順に並べ、まだ明るくなり始めたばかりの窓に目を細めた。


ここまでお読み下さり、本当に有難うございました

都合よく宰相が設定を話してくれたのですが笑

これから物語中に出てくる神話や細かい設定などもどこかで書いていこうと思います


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