恐怖!足の裏クンカクンカゾンビ!!
足の裏クンカクンカゾンビはずっと履いていて蒸れている靴下を投げることにより注意をそちらに向けることが出来るぞ!
とある薬品会社の研究室で発生した薬物実験が全ての始まりである。
薬品会社が行っていた人体実験中に逃げ出した被験者Aの存在が警察により発表された事により薬品会社の株価、信頼、全てが数日のうちに地に落ちなくなったと言っても過言ではない状況となった。
被験者Aがなぜ逃げ出せたのか?それを疑問に思う人間は居るにはいたが、それよりも日頃病人やけが人が使用する薬品、薬を多く製造していた企業なのでそれに対する疑問視、安全性に異議を唱えるという意見が強く被験者に対する疑問は集団の声にかき消されていった。
数か月後日本には症状に襲われる人が多発した。最初はニュースなどにもなったがしばらく経つとテレビの放送自体無くなった。学校、会社、社会のシステムは少しづつ壊れ始めた。
喫煙者の禁断症状に似たものを訴える人間が多発した。最初のうちは少なかったらしいが数人、数百人と禁断症状を訴える人間が多発したことにより社会問題となる。
禁断症状を訴えていた者達の嗅覚がとある臭いに敏感に反応するということが判明してから事件は大量に発生した。禁断症状を押さえるためにその臭いの元を求める人間が他人に暴力を振るったのだ。事件件数は日に日に増えていき学校は休校。外出を行うのが困難な国になっていった。
そして現在、ほとんどの人間は末期症状により人間ではない何かになっていた。言うならばゾンビのようなものである。ゆっくりと歩いている姿は血の気も感じられず視界もままならない様子である。
テレビの映像はあれから流れなくなった。付けてもザーと音を鳴らすだけで何も映らない。
父親は仕事に行くと言い残し帰ってこない。母親は私を庇い奴らにやられた。私だけが残ってしまった。
「クンカー、クンカー。足の裏クンカクンカ。」人ではない奴らの声が外から聞こえる。
「クンカー、クンカー。足の裏クンカクンカ。」奴らは次々に言いだす。
「クンカー、クンカー。足の裏クンカクンカ。」奴らはいつものように人間の足の裏の臭いを求めて彷徨っているのだ。
先ほど説明していなかったが症状を訴える人々が求めていた臭いと言うのが人の足の裏の臭いである。汗の臭いとかではなく足の裏の臭い限定なのだ。
禁断症状が発生していた者は自分の婚約者の足の裏の臭いを嗅ぐことで欲求を満たしていたらしいが、次第に嗅ぐだけでなく足の裏を舐める行為にまで発展したという。
親戚も婚約者もいないものは通行人に暴力を振ってまで足の裏の臭いを嗅いだ。そこら中足の裏を舐める人達が大量発生した。
理性を持っていた人達も足の裏を舐められたことにより感染。次第にこの禁断症状を持つものが増加していき、気が付けば「足の裏ゾンビ」が大量に発生していた。
「足の裏、足の裏。クンカクンカ。」
「あー、クンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカー、クンカー。足の裏クンカクンカ。」
奴らの声は昼夜関係なしに響き渡る。足の裏ゾンビカルテットが日本全国で発生している。
「クンクン、足の裏。あー、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ。クンカ足の裏クンカ。」
「クンカー、クンカー、足の裏クンカー。」
「全く嫌になる。」不規則なリズム、妙に響き渡る音、毎日のように発せられる足の裏ゾンビの声は私達の神経をすり減らしていく。
「本当に嫌になる。」私の近くに居た女性が私の独り言に賛成するように言葉を発してきた。
私の意見に同意した女性はジェニファー。本名は知らないけれどそう呼べと言っているので呼んでいる。
ブロンド色の髪などではないし目の色も日本人のそれである。というか日本人だと思う。
黒髪のショートヘアーをなびかせながら彼女はいつものように煙草を吸う。わけではなくココアシガレットを食べる。ここで煙草なんて吸われたら私の気分が悪くなる。
人々が奴らの一員になり始めていた時、私と母は家に閉じこもり少しでも長く生き延びようとしていたが食糧が尽きたことによりそれも出来なくなった。
そこで私と母は近所のデパートに向かうことにしたのだ。デパートなら食糧も日常品もあり長期期間生活に困らないからだ。
私達は目的の場所に向かった。その途中で私を庇って母親が死んだ。それだけの話。
ジェニファーが持っているココアシガレットを一つもらい齧ると甘味の少ないラムネ菓子の味がする。固さも普通のラムネ菓子より固く、噛み砕こうとしたら口の中でカリコリと音がした。
「どう、最後の晩餐の味は?」
「糞くらえな味。」
「いいね。こんな世界とおさらばする最後の晩餐には最高の味だ。」ジェニファーは再びココアシガレットを食べる。ガリゴリと口の中で音を鳴らしながら食べると私に箱を渡してきた。
「次。」私は箱の中からココアシガレットを再び一つ取り出すとそれを口の中に含む。
「奴らに食べられる人の姿を見たか?」ココアシガレットを噛み砕いているとジェニファーは少し悲しそうな表情をしながら聞いてきた。
私は思い出してみる。ここに向かう途中奴らにやられそうになってた母親の姿。助け出そうともせずに逃げ出した私。デパートについた時の絶望感。
デパートに着いたが中に食糧なんてなかった。当然のことながらここも奴らの住処になっており、食糧は過去に来た者達が荒らした棚だけが残っており無くなっていた。
奴らに見つからないように隠れていた所彼女と出会った。
彼女の本名は解らないが彼女も私と同じ目的でここに来たらしい。
「ない。」私の発言に安心したような表情を浮かべると彼女は再びココアシガレットを食べる。
「そうか。なら見ない方がいい。一生あんなものは見ない方がいい。」
しばらく二人でココアシガレットを食べていたがそれもなくなってしまった。私達はココアシガレットが無くなったら二人でどこかに行こうと決めていたのだ。なぜ二人?一人だと心細いから。
私達はここから出ていく準備をしていると近くで誰かの叫び声が聞こえた。きっと私達と同じ目的でここに着き奴らに見つかったのだろう。奴らの声と共に叫び声は大きくなっていく。
「聞くな。」ジェニファーは私の耳を閉じ叫び声が聞こえないようにしてくれたが、耳を塞がれても声は聞こえていた。
叫び声ではなく快楽に溺れるような妙に色っぽい気持ちの悪い声。彼女が私の耳を塞いだのはきっとこの声を聞かせない為なのだろう。だが聞こえてしまった。
奴らにやられると快楽を得られるという事を私は知ってしまった。
きっと悲鳴を挙げていた人は快楽に溺れた汚い顔で奴らに足の裏の臭いを嗅がれ舐められているのだろう。
私は親の情事を見た子供のような複雑な気持ちを抱きながら快楽に溺れる声を聞いていた。
しばらく経つと先ほどの声は聞こえなくなりいつもの恐ろしい声が聞こえてきた。
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカ、クンカクンカ。足の裏、あー足の裏。」
「クンクン、クンカクンカ。」奴らは欲求を満たされることはないのだろう。誰かの足の裏を舐めたところで欲求は満たされず、獲物を探し続けるのだ。
もし奴らに舐められたら同じ生物になってしまうのか。それだけは嫌だ。きっと助からない。ここから出ても奴らにやられる。
「嫌だ。」私の口から自然と漏れていた。嫌だ、あんな生物になるなんて。嫌だあんな気持ちの悪い声を出しながら自分じゃなくなるなんて。嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「おい、大丈夫か?」今まで耐えてきた心が壊れてしまった。ジェニファーの声は聞こえず口の中からは嫌だという声何度も何度も出てくる。
心が壊れてしまったらもう生き残ることは出来ない。しばらくジェニファーの心配する声も聞こえてきたがやがてそれも無くなり気が付いた時には私の周りは奴らで埋め尽くされていた。
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「クンカクンカ、足の裏クンカクンカ。」
「嫌、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、助けて…。」
奴らの声により私の言葉はかき消され、私は足の裏を舐められる。
やがて全ての人間は奴らとなり他の生物も奴らと同様になる。
全力でアホやろうと思って書いたけどどうしてこうなった