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次の日、週に二回ある風呂の日だったので、入れてもらってからログインした頃には日が高く上がっていた。
「今日も晴れ、かあ」
強い日差しに目を細めながら、大通りを北上する。
「あ……」
すぐに狩猟ギルドには着いた。着いたのだけれど、壊れたドアが壁に立てかけてあった。それに申し訳なく思いながら、カウンターの列に並ぶ。しばらく待ったのち、私の番になる。
「次の方どうぞ」
「はい。ギルド長に呼ばれて来ました」
「あなたは……」
受付の茶髪の女性は何か言いたそうにした後、うなずいてから告げた。
「二階右手の二番会議室でお待ちください」
「分かりました」
その言葉に従って二階に上がり、二番会議室に入る。会議室には大きな丸机があり、その周りに円形に椅子が並べられていた。その入り口から少し左手の椅子に座ってしばらく待つと、ドアが開かれた。
「待ったか?」
「いいえ」
尋ねるギルド長に、立ち上がってそう答えた。
「では、報酬の話をしようか」
そう言ってギルド長はひとつ席を空けて右側の椅子に座った。
「今回の件は、街の存亡に関わる危機、ということで領主様から十万ゴールドの報奨金が出た。受け取ってくれ」
ギルド長は苦い顔をしながら今まで見てきたゴールドと輝きの違う金貨一枚を手渡ししてきた。
「ありがとうございます」
受け取り、目の前に置きながら内心びびる。宿屋の料金などから推測して、この世界ではだいたい一ゴールドで十円分の価値があるように思う。それが十万。だいたい百万円分くらいの価値になるだろうか。FLO開始三日目にして金持ちになってしまった。これなら、ドアの修理費位はなんとか払えるだろう。
「それで、ドアの修理費なのですが……」
言いづらかったが、気分が軽くなったのであっさり言えた。
「ん? ああ、それなんだが……」
ギルド長は言いづらそうに切り出した。
「本当は、街の英雄に請求するのは心苦しいのだが……。規則なので、な。すまない」
そうギルド長は頭を下げる。
「いいえ、自分がしたことの責任を取ることは当然のことですから」
そう言うと、ギルド長は、「そうか」 と言って大きく息をはいた。
「で、修理費なのだがな……、九万八千ゴールドだ」
「そんなものですか」
良かった、十分足りる。それに、散々衛兵たちに脅された金額より安い。
「そんなものって……まあいい。それで、今払うか?」
「はい」
そう言って、目の前の金貨をギルド長に渡す。
「ああ、つりを用意させるよ」
「いえ、結構です」
そう言っておつりを断る。
「どういうつもりだ?」
「まあ、慰謝料みたいなものだと思ってください」
実際、修理費だけ払うのは何か違う気がするのだ。それに、この一種のあぶく銭をもらっても、ただでさえ大金を持っているのに、これ以上もらうとなんだか自分が駄目になってしまう気がする。そんなことを説明すると、ギルド長は、
「今どき珍しいくらい真面目な子だな」
と苦笑した。
「だが、つりは出させてもらうぞ」
「それでも」
「一応、規則なのでな」
規則を持ち出されると何も言えない。私は、ただ黙り込む。
「それに、異邦人だろ? これから狩りや魔術で身を立てていくなら、二千ゴールドや一万ゴールド程度はした金だ。お前、剣の値段知っているか?」
「……いいえ」
「やはりな」
私が首を振ると、ギルド長はこう続けた。
「鋳造の安い剣で一万ゴールドだ」
私は、その言葉に驚愕した。まさかそんなにするとは思っていなかったのだ。
「それに、魔術師として大成したいなら、魔導書が必要になるが、それは中古でも買うなら十万ゴールドから、だ。な? お前が持っているのは大金か?」
「…………」
私は、思わず黙り込んだ。全然、今の所持金じゃ足りない。報奨金が良かったからと言って浮かれすぎだ。
「……分かりました。すみません。それと、ご教授ありがとうございます」
そう言って頭を下げる。このギルド長は、世間知らずな私を心配してくれたのだ。本来なら関係ないはずの他人なのに。
「別に構わん。それが仕事だ。それに、街の英雄に不義理は通せんだろう。まあ、これに懲りてちゃんと勉強することだ」
「ありがとうございます」
その後、お釣りの二千ゴールドを受け取った後、ギルド長のアドバイス通り街を見回って値段を調べた。そして、確かに一万ゴールド程度はした金なことを知った。
「服は百ゴールドから戦闘用のものは最低千ゴールド。食品は一食分五十ゴールド。武器は短剣ですら三千ゴールドから、かあ」
そして、ようやく装備を整えた。服をカーキ色の分厚いが風通しの良いものに変え、靴を茶色で鉄板入りの頑丈なものに変える。これで五千ゴールド。あとは念のため六千ゴールドの刃渡り三十センチほどのナイフとベルトのセットを買った。これですっからかんだ。
「明日から頑張って稼がないとなあ」
つぶやいて、この日はログアウトした。
思いのほか筆が進んでいるので、もうしばらくは連日投稿出来そうです。




