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異なる空の下で  作者: ネムノキ
温泉な四週目

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お久しぶりです。なんとか書けました。

「それでは、この村が無事だったことを記念しまして、乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 空が茜色に染まる頃、宴会は始まった。怪我を負った人も無事助かり、私に何度もお礼を言う。それを聞いていると、嬉しい反面、悔しくも感じる。もっと索敵能力が高ければ、彼らが怪我を負うことはなかったかもしれない。ほとんど赤の他人の不幸に対してこんなことを思えるようになったなんて、知りもしなかった。まあ、知ったところで何もないのだけど。

「それでは、堪能してくれ」

 ガルが指差した先には、山ほどの海の幸があった。ざっと見ただけでも鯛に鰈にカサゴ、

他にも沢山の魚が料理されている。あそこで刺身になっているのは、烏賊かな?

「はい。どれから食べようかなー」

 箸と取り皿を持ってうろちょろする。その間も色んな人が私に感謝を伝えてきて、なんだかこそばゆい。とりあえず、まずは刺身だ。どれも身がしまっていて魚の味がしっかりしておいしい。

「んー」

 こんなに沢山おいしいものを食べられるなんて、私は幸せ者だ。少し離れた所では、流木を適当に組んで焼いていて、村人たちは主にその周りで腰を落ち着けている。中には上半身裸になって踊っている人もいて、心地良い笑い声が響いていた。顔が赤いから、酔っ払っているのかな? だとすると、こんなに早く酔うなんて少し酒に弱すぎじゃないだろうか。

 そんな光景を横目に見ながら今度は煮物に箸をつける。これだけの量を一気に煮ているのだとしたら、どうやって煮崩れさせないようにしたのか教えて欲しい。味も醤油ベースの出汁が良く染みこんでいて、とろけるようなおいしさだ。

「おいしいっ!」

 そう言うと、作ってくれたらしいおばちゃんが豪快に笑いながら手をふった。

「いーい村だなあ」

 この村は、良い村だ。命がけで仲間を助けようとするし、感謝の気持ちをストレートに表現するし、みんな笑顔でご飯がおいしい。単純かもしれないけれど、それはとても難しいことだ。それが当たり前のようになされている、本当に良い村だ。

「そう言ってもらえると嬉しい」

 つぶやきが聞かれていたのか、左から声がした。

「あ、ガルさん」

 ガルは、これまた赤い顔で徳利を持っていた。

「さん付けはいらん。ガルで良い」

「じゃあ、ガル」

「おうよ!」

 あ、やっぱり酔ってる。

「……お前さんが未成年なのが残念だ」

 ガルは徳利から直に酒を飲む。何かが違う気がするけれど、無視だ。

「水で良ければ付き合いますよ」

「違う、そうじゃないんだ」

 私の答えが違ったのか、ガルは首を振る。

「この村の酒は香りが独特だから、飲んで欲しかっただけだ」

「ほう」

 それは気になる。けれど、残念なことに酒は飲んだことがないので私に味は分からないだろう。

「また、大人になったらまた来ますから、それで勘弁してください」

 この島のある場所もまだ分からないけれど、流石に一、二年もしたら分かるようになるだろう。成人するのはその先だし、その頃にはこの島にも来れるようになるだろう。まあ、その頃までFLOがやっているのかは分からないけれど。

「おお、それは楽しみだ」

 ガルは笑って酒を飲む。つまみはいらないのだろうか。

「……ところで、報酬ってあんなもので良かったのか?」

 ガルは、声のトーンを落として言った。

「あんなものって、私にとっては重要なものですよ」

「そうか。なら良いんだが……」

 ガルが首をかしげるのも分かる。私が要求したのは、治癒魔術の魔導書の一番簡単なやつと次に難しいやつだ。幸い、この村には何冊かあったので簡単に譲ってもらえた。どういう訳か分からないけれど、黒の塔の書庫には一冊も置かれていなかったのだ。だから、この魔導書は喉から手が出るほど欲しかった。ただ、ガル曰くそんなに高いものではないらしいので、早まったのかもしれない気はしている。

「私は魔術師ですから、ね。未知の魔術には興味があるんですよ」

「そういうもんか?」

「そういうものです」

 そう言うと、ガルは首をひねりながらうなずくというなかなか器用なことをした。それがなんだかつぼに入り思わず噴き出す。

「? どうした?」

「い、いえ何も」

 お腹を抱えながら答えると、ガルは不思議そうな顔をするも、酒をあおって元の表情になる。

「ま、楽しんでもらえているようで何よりだ」

「はい。にしても、本当どれもおいしいですね」

 本当、どの魚もおいしい。

「だろう。だが、旬じゃないのも多いけどな」

 ガルはなかなか興味深いことを言った。

「ということは……」

 つまり、これより上があるということだろう。

「ああ。まあ、それはどうしようもないことなんだがな。残念だ」

「確かに」

 ここにまた来なければいけない理由が出来てしまった。

「私、絶対にまたこの村に来ますね」

「おお、そうか!」

 ガルは嬉しそうに酒を飲んだ。そんなに一気に飲んで大丈夫なのかな?

「結構飲みますね」

「ん? いやいやまだまだだぞ?」

 まだまだって、私の知ってる人は徳利一本も飲んだら真っ赤になるのに。

「すごいですね」

 そう言うと、ガルはガハハと笑って言った。

「褒められるのはあり難いが、この村の連中の半分は一升は飲むからなあ」

「えっ!!」

 私は思わず絶句する。お父さんから聞いた話だと、日本酒なら徳利一本分も飲めば十分酒飲みらしいので、その何倍もある一升分も飲むのはかなりの酒豪なんだろう。飲んでいるのが日本酒ではないのかもしれないけれど、それでも十分な酒豪な気がする。

「お前さんの所では違うのか?」

「ええ、まあ」

 そう答えるも、本当のところは病室に引きこもっていることもあり、どうなのか分からない。でも、色々聞いた話からするとこの回答で合っているだろう。

「なら、驚きもするか」

 そう言ってまた酒をあおるガル。なんだか駄目人間のような気がする。

「ま、とりあえず、楽しんでくれ」

 そう言ってガルは料理の置いてある所に行った。

「さて、と」

 ゲームの使用上満腹感を感じることは無いから、いくらでも食べれる。だけど、なんとなくこれ以上食べるのはきついように感じる。

 そこからは定期的に刺身をつまみながら村のおばちゃん達と他愛もない話をして、宴会が月がだいぶ昇ってきた頃にガルの挨拶で解散したのを見計らって宿に戻る。

「うーん」

 夜だというのに、思いのほか月明かりのお陰で明るい。その明るい夜道を歩いて、宿の前の坂を息を切らしながらもなんとか上り、宿の割り当てられた部屋についたら現実の消灯時間間際だったので即効でログアウトした。

 楽しい時間は、過ぎるのが早いんだと知った。



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